京都大学学術出版会 月間ニュース No.1 (2023年10月)
いつもご愛読ありがとうございます。
今月より、新刊やイベント情報をまとめて月に1度お届けして参ります。どうぞよろしくお願いいたします。
・概要
この間の新刊は3冊、近刊2冊、受賞5作、動画は4本更新しました。
・新刊案内
『評伝・西山夘三』
『流砂環境再生・ダムと環境の科学IV』
『ダムと環境の科学』シリーズ既刊リスト
『ペレグリノスの最期』
全集(ルキアノス)の既刊情報及び刊行予定はこちらへ。
・近刊予告
『新・方法序説』
『商民運動の研究 1924-1930』
・2023年9~10月受賞速報
◉ 日本倫理学会 令和5年度和辻賞
髙木裕貴著『カントの道徳的人間学:性格と社交の倫理学』
◉ ICAS書籍賞2023日本語部門
下條尚志著『国家の「余白」:メコンデルタ 生き残りの社会史』
◉ 第18回樫山純三賞
金悠進著『ポピュラー音楽と現代政治:インドネシア 自立と依存の文化実践』
◉ 第9回日本南アジア学会賞
中村友香著『病いの会話:ネパールで糖尿病を共に生きる』
◉ 日本認知科学会第11回野島久雄賞
北雄介著『街歩きと都市の様相:空間体験の全体性を読み解く』
・今月の一冊
国家の「余白」
本書はこれまでも,アジアの社会経済史,開発研究などの分野の4つの大きな賞を受賞されましたが,今度はなんと国際賞! 国家に捕捉されない人びとの歴史といえば,ジェームズ・スコットの「ゾミア」が世界的に有名ですが,まさに「ソミア」論に並ぶ,あるいはそれをも越える,世界的な業績と言うことが出来るでしょう。
20世紀の動乱の重要な舞台となったメコンデルタ。ベトナムを巡る,フランス植民地主義,そして冷戦下のアメリカの戦略の失敗は,様々に分析されてきました。しかしこれまでの研究はいずれも,人びとの日常実践には目を向けない,いわばマクロな社会科学的分析に終始し,結局のところ,歴史の真の原動力は明らかに出来ませんでした。それに対して本書は,メコンデルタに生きる人々の生き残りをかけた実践――仏教寺院や闇市,闇の交易・越境ルートという植民地主義や国家の支配の手が届かない空間,すなわち,国家の「余白」を作り出していたこと――が,その要因であったことを,鮮やかに描き出します。
この「余白」は,一見,国家に捕捉されない農民の存在を明らかにした,スコットの「ゾミア」と同じもののように見えますが,「ゾミア」が大陸の奥深い山塊の中に現れたのとは違って,メコンデルタの「国家の余白」は,都市のごく近傍,大農業生産地の中に現れたのです。つまり,これからも国家の「余白」は現れ続け,それが歴史を揺るがす原動力になり得る。本書は,新自由主義と「グローバリゼーション」が,世界を「精神のモノカルチャー」化してきた現代を乗り越える,次の時代の歴史を開く,という予感も与えてくれます。いまや世界的なおおきな歴史理論に発展した本書の研究,ぜひ,学問領域を越えて,多くの方々に読んでいただきたいと思います。
・SNS/イベント情報
◉YouTube動画更新
下記、それぞれのリンクよりご視聴ください。
[地]第3回①『哲学のなぐさめ』(おこしやす! 西洋古典叢書)
[地]第3回②『哲学のなぐさめ』(おこしやす! 西洋古典叢書)
[地]第3回③『哲学のなぐさめ』(おこしやす! 西洋古典叢書)
[地]第3回④『哲学のなぐさめ』(おこしやす! 西洋古典叢書)
◉Instagram、始めました!
最新出版情報をインスタでチェックできます!フォローをお待ちしております⇨@kyotoup_book
◉書店フェア 開催中
大学出版部協会創立60周年フェアを各地で開催中です。詳細な開催情報はこちら。
◉出展予定
日本動物行動学会第42回大会
2023年11月3日(金)〜11月5日(日) 於 京都大学理学部6号館
最後までお読みいただきましてありがとうございます。
ご紹介しました書籍は、小会webサイトのほか、全国の書店・大学生協・ネット書店を通じておもとめいただけます。
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※同一内容を毎月メールでもお届けいたします。受信をご希望の方は、sales@kyoto-up.or.jpまでご連絡ください。
京都大学学術出版会 月間ニュース No.1
2023年10月18日 配信
(毎月 第3水曜日 配信予定)
発行:一般社団法人京都大学学術出版会
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