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第2回 染織祭調査1 国立国会図書館(デジタルコレクション)調査1



1.はじめに

 これまで行われた染織祭調査では、当時染織祭に携わっていた和装関連商社、関係者を中心に、染織講社より衣装と共に移管された書類や当時の新聞記事などを元に調査が行われました。
染織祭についてさらに深く調査を進め、当時の詳細な背景を知るため、今回調査対象を次のように広げて調査を行うことにしました。

 染織祭の「京都市で」「昭和初期、20年間のみ行われていた」という特徴から、まずは足掛かりとして国立国会図書館デジタルコレクションの全文検索を利用して調査を行いました。流れとしてこのようになっています。


2.調査方法について

 国立国会図書館デジタルコレクション(以下「デジタルコレクション」とする)とは、国立国会図書館が収集、保存しているデジタル資料を検索・閲覧できるサービスです。一部国会図書館内でのみ閲覧可能な資料もありますが、その他の資料はログインを行えば国会図書館外でも閲覧が可能となる使いやすく便利なサービスです。
 初回調査ではまず、下記の通り事前調査としてデジタルコレクション内にて「染織祭」をキーワードに全文検索を行い、ヒットしたものの中から関連性の高い文献資料を選定して一覧表にし、その後実際に国立国会図書館に出向いて国会図書館内でのみ閲覧可能な資料等も含めた確認・調査を行いました。


3.事前調査

 事前調査として、デジタルコレクション内全文検索にて「染織祭」をキーワードに検索を行ったところ、403件該当する資料が見つかりました。うち図書は240件、雑誌は156件、博士論文が1件、官報(機関紙)が1件でした。ヒットしたものをひとつひとつ確認していくと、当時の旅行雑誌や俳句雑誌、また子供向けの書籍といった様々な文献に染織祭の名前が挙がっていました。それら文献資料から明らかに京都の染織祭との関連がないものを省いていき、検索結果の精査を行いました。

引用:国立国会図書館デジタルコレクション


4.国立国会図書館現地調査

 去る2023年7月11日、協会職員3名で京都府相楽郡精華町にある国立国会図書館関西館に出向き、文献資料の確認・調査を行いました。確認ができた未収集の情報に関しては、さらに調査を行うため、国立国会図書館の複写サービスを利用し、該当ページ等を複写しています。
 館内のパソコンを用いてデジタルコレクションを閲覧して確認、約400件を3人で仕分けして調査を行いました。数が膨大であることもあり、すべてを時間内に確認することはかないませんでしたが未収集の情報として、62件分の文献資料を複写、収集することができました。

5.調査結果

 62件分の文献資料を調査し、当時の染織祭の盛り上がりの様子や協会でも把握できていなかった展示への衣装貸出などが一部判明しました。行列には女性時代風俗行列だけでなく、派手な演出の企業広告や映画会社の俳優などを起用した映画宣伝などがパレードに加わっていましたが、新たに判明した文献資料では、祭りを見物した人々の興奮冷めやらぬ様子が伝わるものや、行列が行われるにあたって発生する交通渋滞を懸念するものなど当時の京都に住む人々が染織祭に感じていたことを表す資料の他、染織祭の様子を写した未収集の写真や絵画も見つけることができ、当時の様子を窺い知ることができました。また、当時の著名人たちも染織祭を見学していたことが分かりました。
 気になった点としては、旅行雑誌や情報雑誌などに記載されている年間行事欄に染織祭が多く掲載されていましたが、その記載が、染織祭が終了した昭和26年以降も続いていたことです。染織祭が行われていなかったことは明らかであることから誤りではないかと推測されますが、それが長く残っていたことについて疑問に感じています。また、俳句の春の季語として「染織祭」が用いられていたこともわかり衝撃的でした。

6.まとめ

 今回の調査では、染織祭当時の人々の様子、また当時染織祭を取り上げたメディアの染織祭の取り扱い等について一部確認することができました。染織祭の資料も少なく当時の状況についてさらに理解を深めるには、情報の精査とさらなる調査が必要であると考えています。今後もデジタルコレクションでの調査を継続しつつ、次回は、今回の調査から得た情報を元にさらに調査を進めていく予定です。

7.今回調査に利用したサービス

 ・国立国会図書館デジタルコレクション