乱菊襦袢

強烈に日本人であることを表現する

始まりはステージ衣装

今からもう10年以上前のことです。

着物関係の仕事に携わる前、私は音楽活動をしていました。

京都を中心に、関西や九州、関東のライブハウスを回ったりしながら、アングラで活動するバンドです。

童謡系プログレッシブロックとかなんとか言われていましたが、女子三人で重たい荷物を担ぎながらライブハウスで演奏していました。

当時女性三人組のバンドというと、かわいらしいものと思われがちでしたが、時には幼い子供が泣いてしまうようなちょっとおろどおどろしいようなテイストもあり、主流からは離れたところでマイペースに活動していたのです。

バンドのテイストを探る中、衣装が微妙にいつも定まらないのでライブのたびに毎回困っていました。

そこでメンバーが、「着物を着たらどうやろ?」と提案してきたのです。

「着物なんか持ってないよ~」
「なんかフリマみたいので安く買えるらしいで」

ということで、私は初めて骨董市に行ってみたのでした。

正直まったく着物のことは分からないなか、なんとなく気に入った柄のものを2~3着購入してみました。

朱に白の乱菊で暴れる女

いくつか試してみて、結局落ち着いたのは朱の地色に白の乱菊が染め残された襦袢です。

普通に着物を着る方からしたら、「襦袢で人前に!?」と思わるかもしれませんが、衣装だしいいやろ~という軽い気持ちで襦袢を羽織って出ていました。

着物というと繊細な柄も魅力ですが、なんせステージ衣装。細かい部分は遠くて見えないのです。

その点暗いライブハウスでも見えやすい朱はうってつけでした。薄手の襦袢はステージで暴れても苦しくなく、ちょうどよかったのです。

着物は最強のツールだ

朱の襦袢にはだしというスタイルでしばらく活動していましたが、各地でライブをする中、ひょんなことからアメリカでライブをする機会を得ます。

関西で活動する仲のいいバンドと一緒に、日本でツアーに来ていたアメリカのバンドがコーディネートしてくれ、計3バンドでアメリカ東海岸ツアーです。

しかし私のやっていたバンドはほぼ日本語の歌詞、ごりごりに日本的なメロディラインです。アメリカ人のお客さんにうけるのか・・・。

どきどきしながらツアーにでましたが・・・結果は大盛況!

日本的なメロディーと衣装がよかったんだと思います。

着物というのは「kimono」として世界に認知されています。

以前、新婚旅行で知り合った南アフリカの女の子が京都に遊びに来た時、私の着物を着せてあげたことがあります。

彼女はとても感動してくれ、「私は前世は日本人だったに違いない!」とまで言うほど、着物を気に入っていました。

外国人も魅了する着物には、1000年以上日本人が積み上げてきた技術、感性、文化の粋が詰まっています。

そして国際交流やグローバリズムが叫ばれる時代にあって、本当に必要なのは「日本人らしさ」なのです。

海外に行って、その国の文化で対抗しようとしても太刀打ちなどできません。

日本人が日本人らしいものをひっさげていってこそ、外国の方は驚嘆し尊重してくれるのだと、身をもって体感したのでした。

当たり前に着物を着てみよう

こんなに海外でも威力を発揮する着物ですが、意外と自分で着れる日本人は少ないですね。

これって実は外国の方からするとびっくりすることです。
私たちも、インド人女性が「私、自分でサリー着れないんだよね~」って言ったらびっくりすると思いませんか?

着物を着れるようになると楽しいし、海外で何かをしたいと思ったとき、ちょっとした武器になります。

そして着付けは思っているより簡単です。
いや、最初はちょっと大変です。
でも回数を重ねると自然と手が覚えてくれます。だいたい普段着の自分の着物は10~15分で着れるようになります。

そりゃカンタンですよ。つい数十年前まではみ~んな毎日着ていたものなんですから。難しいわけないんです。

最近ではYou Tubeなんかでも着付けのやり方をみれますよね。

ぜひ足踏みしてる最初の垣根を越えて、最強日本文化ツールを手に入れていただきたいと思います。

あ、京都市でしたら私も教えに行きます。


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小松英恵


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