読書の秋に偶然出会った一冊
「読書の秋」
今年の秋は、ひょんなことから、深い思いにつながる本と出会ったことを実感。
「香港と日本」銭 俊華
図書館で何気なく見つけたこの本を手にしてから、「ほう~」と「なるほど・・・」を何回言ったことか。
まずは、著者の銭 俊華(ちん ちゅんわ)さん。彼は1992年生まれ。東大大学院に在籍する、新進気鋭の社会学者だ。(専門は地域文化研究)
私自身、若き著者が卓越した日本語で、ちょっと違った視点から「香港」を考察していることに驚いた。
今、私が教えている留学生たちは、ちょうど銭さんと同年代。つい、学生達と日本語力を比べてしまうのは、著者にも失礼だと思うけれど、比べずにはいられない。日本語学校にも通われていたらしいが、やはり、より良いものを執筆するためには、大変な努力をされたんだろうなあと思う。
次に、自分が本の中に入り込んでしまって、行ったことのない(将来、絶対行きたい!)香港に行って、香港の空気を吸っていることに気がついた。
先日も香港の社会事情を描いた映画について、書いている。
映画で見たことがこの本でも書かれていて、知的好奇心が満タンになり、とっても嬉しくなった。
若き20代の著者の視点から、香港の現在・過去・未来に目を向けて書かれた文体に、勇気と英知を感じる。
一方で、
日本の友人にたまに、「これ食べたことある?」と聞かれるが申し訳ないことに私は、小さい頃から、カルビーのポテトチップス、かっぱえびせん、きのこの山、アポロ、ベビースターラーメン、ポッキー、ハイチュウ、コアラのマーチ・・・などを食べている。香港でこれらのお菓子はあまりに当たり前の存在なので、日本のお菓子だと知らずに、香港の商品だと思い込んでいる香港人もいるだろう。(本書P38~P39 より抜粋)
「え?本当?」
コンビニではこんなに、日本のお菓子が普通に売られているのか・・・じゃ、今教えている学生達も、日本のお菓子を食べて育ったんだな・・・と新たな観点から、香港について考えるきっかけがもらえた。
加えて、歴史・政治・ポップカルチャーなどから、香港という「準都市国家」を鋭く考察していて、興味深い。日本人が香港について知るのには、もってこいの本だと思う。
こうして心の琴線に触れる本に出会えたのも、縁あってこそ。
「読書の秋」が、個人的により深まった気がしている。
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