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日本のリンゴの歴史を支えた「幻のりんご品種」がたまたま開墾中の畑に植わっていた

こんばんは。久しぶりの投稿です。
3,4,5,月は駆け抜けるような忙しさで一刻の時間も惜しいほどだったので、徐々に更新再開。

シードルも造るので、リンゴも栽培管理しています。

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ブドウの畑も徐々に拡大中で、まとめて暫定で3ヘクタールほどは初年度にして確保できました。ひとまず徐々に全てアルバリーニョを植える予定でいます。
10年後の目標が20ヘクタール確保することなので、いいペースではあります。

ただ、しっかりとしたブドウが作れるようにご紹介いただく土地でも恐縮ながら選り好みはしていますが、耕作放棄地であるところもあるので、また開墾の日々が始まります。
時間あるときにコツコツと進めていく手筈です(繁忙期はなかなか難しいので一段楽した秋頃からでしょうか)。

"開墾"とは言えど、ひとりでバックホーで山を削って地形を変えるところからやっています。
(現在のブドウ畑も地形をガッツリ変えました)。

そんな中、とある畑にひっそりと1本だけリンゴの樹が植わっていました。
その畑の持ち主のおじいちゃんに言われるまで気にも留めていなかったのですが、畑を案内されていて、「これァリンゴの樹ダァ」と。

桃や柿や栗の樹などもちらほら植わっている畑ではあり、開墾するにあたって最近はもう管理していないのでそれらを切っていいよ、とは言われたのですが、リンゴの樹だけフと1本。

なんの品種かお伺いしたところ、「”魁”って品種だァ」と。
”魁”と書いて”さきがけ”と読むそうです。厨二病をくすぐるような難読。

全く知らず、調べてみると”南部魁”と”紅魁”という品種があるらしく。
「なんの”魁”ですか?」と尋ねると「”紅魁”だ」と。

そしてその後よく調べてみました。
ただ、情報がほとんど出てこない。笑

この”べにさきがけ”について挙げられる特色を3つ。

①まずとにかく古い品種でレア中のレア。青森明治7大品種のうちの一つとされ、日本リンゴ黎明期を支えた、現在は全く流通していない品種。7大品種の中でも最も流通量が少なかった品種。青森に標本木として植わってはいるものの、現に栽培している人はいないとのこと(苗木の入手がそもそももう無いのでできない)。ロシア原産のリンゴで、親はわからず(普通わかるがそれほど古いということ)、英名は”レッド アストラカン”。

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食味がとても酸っぱい(表左上)。だからこそ甘いものが大正義とされてきた時代で流通しづらく自然淘汰されたとも考えられる。よく加工に用いられる”紅玉”よりも酸っぱい。また”さきがけ”の名の通り、極早稲品種。お盆前には収穫できてお盆に仏壇に飾るリンゴだったと、畑のおじいちゃんも言っていた。
そもそも表ではよく似た食味に"ブラムレイズ"があるが、これはよくシードルで使われる"ブラムリー"のこと。

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③そして古代品種ということもあり病気に強い(掛け合わせされると病気に弱くなりがち)。酸が高く、極早稲で台風の影響も受けづらいと考えると、農薬の使用は最小限で可能になる。オーガニックでの栽培も可能なのかもしれない。事実、海外のシードルメーカーではこの”紅魁”はよくブレンドされているよう。とある情報によっては”自家受粉”と書かれている記述も見られ、「そんなことある?!」と思いながら(リンゴは雌雄があり自家受粉できないので同じ畑に何品種も混植させるのが普通)。

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こんな、歴史を纏うシードル向けの品種が地元陸前高田に植わっていることに驚き
さすが、120年の歴史のあるリンゴ産地というか(日本のりんご歴史の中でもとても古い)。それを象徴するような。
可能性しか感じない、という所感です。

いま、リンゴは生食用として作ると薬代もかなりかかり、品質が満たないものは叩き売りに近い値段で販売されるため、専業農家ではないリンゴ農家さんにお話を聞くとよく「農協のために働いてるもんだ」と口々におっしゃることも多く。
また、先代がやってきているから慣習でやっているものの、農業に関係ない職に就いた息子娘さんたちは樹を切りたくもあり親が丹精込めてやってきたものを守りたくもあり、複雑な気持ちの人も多く。
リンゴを生食としていまビジネスにするのはかなり工夫も必要。

確かに、健康機能食品を果物単体で謳えるのはリンゴくらいだったり、樹を活かそうと思えば辞めたい人も多いので割とすぐ畑を引き継げたりと良い面もあるのですが、
お金にならなければ生活していけないのでどうしようもなく、リンゴは基本的に冷涼産地の産物で気候変動で薬剤散布も欠かせなくなってくるため、別のやり方も模索していく必要はあると思います。

日本のリンゴの生産量は東北6県と長野県とで上位7県を占めており、リンゴの産業が廃れることは東北の衰退にも繋がってしまうため、その一つの手段として「シードル」も考えられます。

また、リンゴは果樹なので、勝手はやはり少し違いますが、地域としてノウハウもある同じ”果樹”のブドウで、しかも陸前高田もしくは三陸海岸で生産もしやすく、テロワールやブランドとして相性のぴったりな品種のアルバリーニョを使っていくことで代替もしくはより付加価値になっていくはず。


この”紅魁”はシードル用として、お菓子用として、需要は高いと見込んでいます。
そもそもやはり加工用リンゴというのは日本では馴染みがなく、専用品種はかなり少ない。

「お菓子用としては紅玉しか無いし高いので…」とおっしゃるパティシエもいらっしゃるので、ぜひ普及させたい。

陸前高田から見つかった歴史を纏うたった1本の樹からのストーリー。

紅魁は今年まさに栽培管理中ですが、接いで、継いでいけたらと考えています。

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