ちむどんどんする?沖縄文学を紹介するアンソロジー
Islands of Protest: Japanese Literature from Okinawa
「抗議の島:沖縄文学」
Edited by Davinder L. Bhowmik & Steve Rabson
January 2016 (University of Hawaii Press)
今月15日は、沖縄の本土復帰50周年の記念すべき日だった。
とはいえ、このことについて私は語る言葉を持たない。
沖縄の歴史について、あまりに無知だったし、今もそうだからだ。
このあいだ新聞を見ていたら、映画『パイナップル・ツアーズ』がデジタルリマスターされて、再上映されるという記事を読んだ。
『パイナップル・ツアーズ』こそ、私が沖縄とはじめて「出会った」映画だ。そのちょっと前から、映画『ウンタマギルー』が公開されたり、りんけんバンドが活動を始めたり、『イカ天』からBEGINが出てきたりと、ちょっとした沖縄ブームがおこっていて、『パイナップル・ツアーズ』もその流れで上映されたんだと思う。
友達の友達というあまり親しくない友人Sと、なぜその映画を見に行くことになったのかは、よく覚えていない。でも友人Sの希望で、今はなき横浜のミニシアター「関内アカデミー」に公開初日に見に行った。
なにが衝撃的って、字幕がついていたのだ。私にとって沖縄は、47都道府県のうちのひとつにすぎなかったのに、異国感がありすぎる。
でも、じっさい、おばあたちのしゃべっている言葉は、一語も聴きとれない。字幕がないと話の筋がおえない。
そして、青い海と空と、極彩色の花々と、豊かな緑、強い日差し。元気に沖縄弁をしゃべる登場人物たちが繰り広げる、米軍の落としていった不発弾をめぐるドタバタしたコメディー。
すべてが「濃い」。
強烈なパンチを食らったようにフラフラしながら席を立ったのは、最後だった。ロビーというには小さすぎるスペースでパンフレットを売っていたので買う。
「監督たちにサインしてもらう?」
あまり覚えていないのだが、公開初日に合わせて3人の監督があいさつに来ていたのだろう。それなら上映前になにか話したはずだが、そこは記憶からすっぽり抜け落ちている。それとも、当時は公開初日に舞台あいさつをするなんていう習慣はなかったのかな?たんにプライベートで来ていたのだろうか?
3人の監督は、見るからに若い。それもそのはずだ。当時、中江裕司さんが31歳、真喜屋力さんと當間早志さんはなんと25歳だ。
私がうなづくと、若い3人の監督たちは、照れながらもパンフレットにサインをしてくれた。
私はなにか言っただろうか。言ったとしても、きっと「おもしろかったです」みたいなつまらない感想しか言ってないと思う。こういうとき、人見知りの口下手はイヤだ。自分にウンザリしてしまう。
『パイナップル・ツアーズ』は、ひたすら明るくて楽しい映画だったが、それでも、「米軍の落としていった不発弾」という戦争にまつわる不穏な要素がさりげなく盛りこまれていた。
その後、何年もたってからじっさいに沖縄に行き、平和祈念公園の沖縄戦戦没者の名前が刻まれた「平和の礎」に圧倒され、国道沿いに広がる米軍基地を車窓に眺めたり、那覇の旧海軍司令部壕を見学したりした。旧海軍司令部壕の資料館に展示されている写真は、見ることすらつらかったが、見なければ、との思いで心に刻んできた。
今日マチ子の漫画『COCOON』に震えた。
東畑開人の『野の医者は笑う―心の治療とは何か』で、沖縄の貧困を知った。
上間陽子の『海をあげる』で、ようやく今の沖縄が抱える問題を、沖縄にじっさいに住む人から教えてもらった気がする。
私にとっての沖縄は、まだまだそんなところ。
だからこの本に掲載されている作家や詩人の作品も、恥ずかしながら読んだことはない。
今回紹介する本は、沖縄の小説・詩・戯曲があつめられたアンソロジーだ。
目取真俊のHope (1999)というのは、どの作品のことだろう?
『魂込め(まぶいぐみ)』に収録されている短編のどれかだろうか。
目取真俊は、ほかにもTaiwan Woman (1983)とTree of Butterflies (2000)が掲載されている。
『九年母』(1911年)の著者、山城正忠は、石川啄木と親交があったらしい。
Ota Ryohakuは太田良博だろうか。
崎山多美はIsland Confinement (1990)とSwaying, Swinging (2003).
新しいところでは、トーマ・ヒロコのBackboneという詩も掲載されている。
沖縄というと、楽しいビーチリゾートとしか見ていない本土の人間に、沖縄の人たちは長いあいだ複雑な思いを抱いてきただろうし、今もそうなんだと思う。
楽しいだけじゃない沖縄を、もっと知りたい。
ありきたりな感想だけど、でも、知ること=知識は力だから。
若いころは恥ずかしかった陳腐なこと、ベタなことを、抵抗なくやれるようになるのが大人のいいところである。今さらでもなんでも、沖縄について知っていこう。
そんなことをNHKの朝ドラ『ちむどんどん』を見ながら思った。