【現地観戦】怪我人続出も、見えた希望の光 4発快勝 第13節 レアル・マドリードvsオサスナ
ホームでオサスナを迎え撃つレアル・マドリードはFCバルセロナ、ACミランに敗北し、公式戦2連敗。アンチェロッティ解任論も囁かれる中、なんとしてでも3連敗は避けるべく、怪我から復帰したロドリゴを先発に起用し、背水の陣にみました。
先発はGKにルニン、DFにゲームキャプテンを務めるルーカス・バスケス、リュディガー、ミリトン、フラン・ガルシア。中盤はバルベルデ、カマヴィンガ、ベリンガム。最前線にロドリゴ、エンバペ、ヴィニシウスというメンバー。
左サイドバックは前試合のメンディに代わりフラン・ガルシアが先発。練習でメンディが中盤をやっていたという噂が流れたことによって、この試合メンディの中盤起用があるかと思われたが実現せず。ベンチスタートとなります。また、 チュアメニが怪我のため中盤の底にはカマヴィンガ、そして怪我から復帰したロドリゴが前線に入る形でゲームに入りました。
前半
フォーメーションは予想通り1-4-3-3。中盤左にベリンガム、右にバルベルデという配置で攻撃を展開し、守備時にはロドリゴが一列下がって1-4-4-2のような形をとります。対するオサスナも同じフォーメーションで迎え撃ちます。
開始早々ミリトンのボール処理のミスからピンチを迎えかけますがことなきを得ます。まだ少々ディフェンスに対しての意識や集中力に問題があるように思えます。
前半の攻撃はカマヴィンガが最終ラインに落ちてきてビルドアップに参加し、フラン・ガルシアとルーカス・バスケスが高い位置を取るという形が多く見られました。両サイドバックがどんどん上がり、攻撃参加をし、ヴィニシウス、ロドリゴとコンビを組む形で相手サイドバックを攻略していきます。とくにフラン・ガルシアの攻撃参加はかなり効果的でした。
前まではヴィニシウスが単独で攻撃を仕掛けることが多かったため、ゴールライン付近からえぐっていく形が多く見受けられていました。しかし、フランがそのヴィニシウスを越えていく動きを見せます。外から越えていく場面が多かったため、必然的にヴィニシウスが中にドリブルする形が増えました。そうすることでそこにベリンガムやバルベルデが上がってきてペナルティエリア付近で人数をかけた攻撃が展開できるようになりました。
そうなると怖いのはカウンターですが、守備時にはロドリゴが一列落ちて1-4-4-2のブロックをいち早く形成します。また、フランの攻守の切り替えが凄まじく早く、それに加えベリンガムがしっかりとサポートに入るため、危なげなく試合をコントロールできていました。
うまく試合を運びながらも点が取れないまま、まさかのロドリゴとミリトンが立て続けに負傷、予想外の交代カードを切らざるを得ない状況になりました。ロドリゴに代わりブライム、まではよかったものの、ミリトンの怪我でディフェンス陣の台所事情がかなりシビアになります。メンディを入れてそのままCBで起用するかと思いきや、カスティージャから帯同していた21歳のラウール・アセンシオがまさかのデビューを飾ります。この交代で、ベンチ入りしていたバジェホの実質戦力外が確定したと言っても良いでしょう。
試合前の選手紹介でラウール・ゴンザレスの名前が呼ばれるとこれ誰だ?といった反応をしていたスタジアムですが、彼が初めてボールに触ると大きな拍手が。その後も彼がボールに関与するたびスタジアムからは温かい拍手が送られていました。その応援を一身に受け、名前に負けない、物怖じしないプレーを見せつけます。CBながら空いているコースを見つけ最前線までボールを運びます。チャンスとはいきませんでしたが、このプレーで明らかにスタジアムの空気感が変わり、周りの先輩たちも刺激を受けている様子が見て取れました。
その後、ヴィニシウスが同胞ロドリゴとミリトンに捧げるゴラッソ、このシュートはまた別の記事で詳しく解説します。
そんな中、またもやアクシデント、ルーカス・バスケスが座り込んでしまいます。そのままベンチに治療に向かいますが、その間ピッチは1人少ない状況。ベンチがかなり焦りはじめます。フランセスコ・マウリアシスタントコーチが「クアトロ、クアトロ、ウノ」と言っているのがスタジアムのスクリーンに抜かれ、バルベルデ、ヴィニシウスがそれぞれ1列落ち、4-4-1の陣形を取ります。それに伴い、ベリンガムが中央に入ります。その後、バスケスはなんとかピッチに戻るもスプリントができず、なんとかピッチ内でハーフタイムまで過ごしてもらうことに。
ここでラウール・アセンシオの超絶アシストからベリンガムの今季初ゴールが生まれます。アセンシオは相手の死角からラインブレイクしたベリンガムを見逃さず、ロングフィードを送ります。それをベリンガムがワンタッチでキーパーの頭上を越すループシュート。待望のあのパフォーマンスのお披露目です。
一番ゴールに近いところを真っ先に見ていたアセンシオ、そしてそのキックの精度。ベリンガムの相手の死角から完全に相手の背後を取る技術、自らの身体に近い浮き玉でもいち早くボールに触れることができる股関節のしなやかさ。これぞ世界トップクラスのプレーと言わんばかりのゴラッソでした。
後半
ハーフタイムでルーカス・バスケスに代わりモドリッチが入り、中盤に。そしてバルベルデが急造右サイドバックとなります。
後半、大きな変化があったため、どうなるかと思いましたが攻撃はより活発化し、攻撃は最大の防御を体現したかのような試合展開になります。
そんな中、ラウール・アセンシオに感化されたのかリュディガーがドリブルでボールを運び、そのまま攻撃参加します。今季は持ち場を離れて思い切った攻撃を仕掛けるとプレーがあまり見られず、受け身のプレーが多かったため、見ていてワクワクするような攻撃はありませんでした。まあ、前線が守備をしないので出て行ったら怖いといったこともあったのでしょう。
リュディガーだけでなく前半同様にフランは果敢に攻撃に参加し、守備でも素早い切り替えを見せます。これに続きブライムもどんどん積極的に仕掛けるようになります。
これに加えて、前試合までと大きく異なった点はこの後、ミスが発生した後にその足で守備に向かうという点です。シンプルなことですがこれが非常に重要でこれだけで試合展開は大きく代わります。失ってもすぐ奪い返すことができれば、各々の選手が持ち場に帰る必要がなくなるので後ろからどんどん人が出ていき、攻撃に人数をかけることができます。そうすると必然的に攻撃の成功確率は上がってきます。
そして、選手らがどんどん上がっていき、空いた場所、浮いた選手がいるとカマヴィンガとバルベルデがさりげなくカバー。抜け目がありません。
そんな中迎えたコーナーキックのピンチ。GKルニンがキャッチしてそのまま前線のヴィニシウスにロングフィード。抜け出したヴィニシウスはファーストタッチで相手DFの前にグッと入りキーパーと1対1に。冷静にキーパーをかわしてノールック?シュートでドブレーテ。チームメイトがみんな真っ先にルニンに抱きつきにいき、雰囲気が最高でした。
さらにその8分後、前にどんどん出ていく守備が功を奏し、ブライムがオサスナDFからボールを奪い、ヴィニシウスにプレゼントパス。これを相手には当てながらもしっかりと決めヴィニシウスがハットトリック。
普段のゴールの際はスタジアムDJが「Gol de Vinicius」とアナウンスするのですがハットトリックの際は「Hattrick de Vinicius」と特別バージョンになります。
決まった形のないマドリーが帰ってきたスタジアムはもうイケイケムードでした。
その後交代でギュレルとエンドリッキの2人の若武者が入ります。やっと出番が来たと言わんばかりにどんどん攻撃を仕掛けます。もちろんミスも起こるのですがすぐに切り替えてボールを取り返します。イケイケムードのスタジアムはこのノリで何故かアラバコールまで。最高の雰囲気で試合は終了。
完璧な試合でしたと言いたいところですが大きな2つの課題が残りました。
ひとつ目はエンバペです。ヴィニシウスがハットトリックしたこともあって、自分も続かなければと思ったのでしょう。相手がたくさんいるところにわざわざ仕掛けに行って、強引に突破しようとしてボールを失い、失った後も守備をしないというシーンが多々ありました。言わずもがな明らかにチームの足を引っ張る形になってしまっています。ゴールに近い味方がいれば使うという選択肢も持つ、そして守備をしっかりとする。意識とチーム全体の問題なのでいつ改善するのか分かりませんが素晴らしい選手なだけにもったいなく感じます。
ふたつ目は中盤から最終ラインへのバックパスの雑さです。中盤から全身できなかった時に、最終ラインを経由して相手の守備の出方を変えようとして下げたバックパスがズレるといったシーンがいくつかありました。そのせいで一気に相手にラインを押し上げられ、しかし味方の戻りは追いついておらず、間延びするという状況に陥っていました。幸いこの試合では大きなミスにはなりませんでしたがこれが平行に近いパスで起こってしまうと、一気に押し込まれ失点となりかねないようなプレーでした。この2つの点を改善するとさらに強いマドリーになることでしょう。
代表ウィークを挟むので次の試合は現地時間11月24日の18:30キックオフでアウェーのレガネス戦。レガネスのスタジアムはベルナベウから車で20分ほどの距離にあるので移動の疲れも最小限で済むでしょう。CBに誰を起用するのか、ラウール・アセンシオのトップチーム定着はあるのか。両サイドバックの人選はどうなるのか。不透明な部分が多い試合になりそうです。