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「いいからもっと」な"押し売り×時間軸経営 "から「できれば広く」な"諦め×空間軸経営"へ

昨今、ニュースやビジネス誌では、株主への利益還元を過度に重視する「株主資本主義」から、社員・取引先・社会など関係者各方にバランスよく貢献する「ステークホルダー資本主義」へ、という経営イデオロギーの転換がよく謳われます。

一方で、山口周さんの『ビジネスの未来』、斎藤幸平さんの『「人新生」の資本論』など「資本主義は今後も持続するのか?持続させるべきなのか?」をテーマにした論評も尽きません。

これらの動きに対する僕なりの見解は、
「結局はシステムではなく、一人ひとりの考え方の問題なのではないか?」というものです(結局資本主義は良いの悪いの?という問いへの直接的な意見はこの場では控えます)。

つまり、経営スタンス如何の話も資本主義の次のパラダイムが如何という話も、一人一人が

「過去よりもっともっと」と考えるのか、

「できるだけ大勢の他人に価値を届けられたらいいよね」と考えるのか、

の違いに収束すると考えます。

そして、僕はまだ社会人2年目のペーペーの立場からではありますが、

「なんとなく一旦後者の考えで行く人が増えた方が良さそうにみえるな〜」

と思っております。

(ちなみにこうした僕のスタンスは、自認する限り、文化人類学者の大河内直子さん『アイデア資本主義』で紹介された”資本主義は(中略)個々人の「将来のより多い富のために現在の消費を抑制し投資しようとする心的傾向」から生じる経済行為の総合的な表出”と捉える見方にほぼ直接影響されています。)

今回のエントリーは、

「もし自分が起業するなら、どんなスタンスで経営するべきか?」

と自問し、一応の自答をまとめたものになります。
なんでこんな問いをしたのかというと、

「就活をしていた時期に、就職せずに起業する道を選ばなかったのは何故か?」

という論点が日頃から気になっているからです。

僕の世代が就活をする頃には、すでに「大手でヌクヌクするよりベンチャーに入ったり起業したりして、リスクとって自分のやりたいことに向かうのがホンモノだ」みたいな価値観が(支配的ではないながら一部の界隈とメディア経由で)存在していました。

「なるほど、言ってることはわかるんだけどいまいちピンとこない。」
「いや待てよ、ピンとこないとか言ってるだけで、結局自分もリスクが怖いだけなんじゃないか?」

みたいな疑問の往復が頭を渦巻いていたのです。だから自然と、経営スタイルについて考えるようになったのです。

前置きが長くてすみません。以下からが本論です。

資本主義が悪いのではない。利益追及が悪いのではない。

売り上げや利益を「過去よりもっと」と求め、「昨対比」「前年比」などのキーワードに囚われ、成長し続けることを第一に置くのが問題である。これは、不正や汚職だけでなく、合法でありながらbull sitである、「求められていないのに過剰に需要を刺激する行為(過剰なマーケティング)」「営業スキルを使って押し売りする行為(過剰なセールス)」といった弊害を招く可能性がある。全ての根元は、「現状で留めればベストなのに、無理やり成長しようとする」という心の働きにある。

資本主義が悪いのではない。利益追及が悪いのではない。需要に正直にならず、自分の「もっともっと」という欲で無思考に突き動かされていることが問題なのである。

だから、

「需要に嘘をつくのはやめて、求められてるものを求められてる分だけ届ける諦めを持とう。」

そのうえで、

「僕たちをここまで豊かにしてくれた資本主義と利益追及のメカニズムを、時間軸から空間軸へと引越しさせてあげよう。」そう思っています。

1. 需要に嘘をつくのはやめて、求められているものを求められてる分だけ届ける「諦め」を持とう

需要、すなわちお客さん(潜在顧客も含む)を「攻略対象」として見るのはやめよう。

友達に「この服サイズ合わなかったんだけど、要る?本当に欲しかったらでいいよ無理しないで!」と伝えるように(これも押し売り臭いかもしれませんが)、ただ情報をお客さんの前に置き、欲しかったら買ってもらうというスタンスでいよう。

①情報を置く < ②世界観で包むor解釈を伝える < ③相手の判断軸を設計してあげる

右に行けば行くほど、情報の純度は失われ、売る側の主観や都合が入り混じる。

②くらいまでは必要なコミュニケーションとしても、③やその奥にはできるだけ行かないように。でも結局は、「正直でいる」「押し売りはしない」「相手のためにならないことはしない」という当たり前の正義感こそが大事。

何より、諦め(もちろん、give upの意味ではない)を持たないのは「いき」じゃなくてかっこ悪い。(cf. 九鬼修造『いきの構造』)

2. 僕たちをここまで豊かにしてくれた資本主義と利益追及のメカニズムを、時間軸から空間軸へと引越しさせてあげよう

先述のように、利益を時間軸の中で成長させようとすると、いろいろな弊害がある。だから、まずは「過去よりもっと」ではなく「広く深く」のスタンスに立とう。

広く、というのは、より多くの人に、という意味だ。つまり、空間軸で利益を追及するということは、「より多くの人に価値を届ける」ということ。

深く、というのは、一人に届ける価値は多い方がいいよね、という意味だ。

2つをまとめて式にすれば、「顧客数×顧客単価」これのみに注力しようということなのだが、顧客単価というと、同じ提供価値でも価格を吊り上げることにも目が行きそうだから、あえて深くという表現で貫きたい。

そして、もちろん「広く深く」の前には「求められる限りにおいて」という前提がある。これは、1. の復習である。

広さの広げ方(なんか変な言葉)については、以下の様な優先順位を持つのはどうだろうか。

原則:空間軸では内側から外側へと面積を広げる。以下のような順番で。
①社内メンバー(経営者も社員も含める)
②社内メンバーの大事な人
③まずは小さく身近な届け先
④求められる限り、より多くの届け先へ
④’出来る限り、一人の届け先が受け取る価値を大きくする

※上記に賛同してくれる人に支援者(ここではあえて株主とは言わない)になってもらう。
※届け先:いわゆるお客さんのこと。「本当に欲しいと思ってくれるなら喜んで提供します」というスタンスなので、「お客さん」と下から目線で呼ぶことはふさわしくない。むしろ、友達とプレゼント交換している感覚が近く、できるだけニュートラルな存在であることを示すために、今のところ一番しっくりきている言葉が「届け先」

この優先順位で価値を届けることを意識すれば、空虚な数追いではなくなると思う。

深さの深め方は、以下のような考え方はどうだろうか。

原則:追うのは「適正価格〜お願い以上」

1. 2. を可能にする条件

さて、1. 2. を通してあまりにも綺麗すぎる理想論を展開してきたが、これを可能にする条件はなんだろうか。

①放っておいても求められる「圧倒的なプロダクト」
②「広く」を無理なく実現する「資金と広告力」

①放っておいても求められる「圧倒的なプロダクト」

「こんなの作れたら苦労しねえよ!」という人がいるかもしれないが、だったら作らないでいいと思う。過剰マーケティングや過剰セールスをしなくては売れない、Pushしないと求められないようなプロダクトは、この物とサービスで飽和しきった(少なくとも)先進国市場では一切必要ないので、自分の食いぶちや意志のために周りを巻き込むことはやめたほうがいいのかもしれない。

②「広く」を無理なく実現する「資金or広告力」

「そんなのあったら苦労しねえよ!」という人がいるかもしれないが、だったら資金と広告力がある人にその役割を明け渡してほしいと思う。
個人個人の意志をいったん脇に置き、需要とマクロ経済を優先に考えれば、資金と広告力のある人が優れたアイデア・プロダクトの届け手を担った方がよい。
資金と広告力によって、「顧客の前に情報を”置く”」まではスムーズに行った方がいいに決まっている。

しかし実際には、資金と広告力がある人はそんなに多く無いから、明け渡したくても明け渡せないと思う。そう、だから、むしろ問題なのは資金と広告力があっても新しい価値提供の担い手にならずせっかくのリソースを割かない人、具体的には大手企業だと思う。

僕の、いわゆる
「#起業しろ」
への違和感はここにあって、より良いのは

「#大手で社内企業しろ」
ではないだろうか。もしくは
「#大手は必ずCVCでベンチャーに投資しろ!」
「#大手は必ず新規事業からスピンアウトの流れを作れ!」
(cf.ガイアックスさんがめちゃくちゃ参考になる)

なのではないか。(いずれもまだ暴論だけど…)

起業してベンチャーが0からプロダクトを作り、がんばってWEBマーケをしてがんばって営業し、資金を集めそれを広告費に突っ込み、、ということを重ねていくそのプロセスにかかる時間は必要なのだろうか?

~~~~~
ここまで書いたのがおそらく1年以上前。
今考えてみると、「株式会社」である限り上記のような絵空事は実現しなそう…

今後の勉強のためのメモ:
-Bコープ
-パブリック・ベネフィット・コーポレーション
-NPO
-(社会的)インパクト投資

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