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WINTERCUP2024 鳥取城北は高校バスケの何を変えたのか?

ただのダークホースじゃなかった。鳥取城北のバスケは面白すぎて…華があって…何より高校バスケ界に新しい「解」を提示してしまった。
男子準決勝で福岡第一を下す瞬間を東京体育館で見て、そう思った。

実況コメント風に感じたことをつらつら

まず1Q冒頭、鳥取城北のオフェンスを見て「なんかぬるっとしてる」と感じた。あの第一相手に、やたらスマートに点が入り、コンタクトもなく合わせが決まる…素性を知らないチームだということも相まり奇妙な感覚に襲われた。

分解していくと、そもそもなんかおかしい…(シーンごとに見ていく)

なんで留学生ここいるの?!留学生から始まるセットオフェンスってあり?!まーね、相手のセンターをつり出したいのかしらね。。でも別に3pt打つわけじゃないでしょ。。

めちゃくちゃ打つやん。。まあでも布石として序盤に一本打っておくことはあるよね。。

少しも躊躇ないじゃん。。30秒で2本打ったよ。。しかも#7内山君とか#11豊村君がポストプレイして、君が外で合わせるの?それって変だよ!!

いや、パスうまっ…もしかして股抜いてる?なんかやたら中で合わせが成立するんだよな…第一のDFが緩いようにも見えないのに…

アズカくんに注目していると、速攻から迷わず3ptを狙う#8新谷くん、アーリーでもセットでもガンガン切り裂く#9田中くん…なんかタレント揃いじゃない?!

それにとにかくオフボールの流動が激しい。ウィングとコーナーの4人が上下に位置を交換しあってボールも上下によく動く。
正直、#4瀬川くんと#11佐藤凪くんという圧倒的ツーガードゆえにトップからのオフェンスで硬直ぎみだった東山のOFと対照的な印象(それもスタイルなので善し悪しではなくて)。

あっという間に4点リードで1Qを終えてしまっていた。

2Q冒頭、第一さすがのランでひっくり返すが、妙なのはやはり城北のハーフコートOF。

#28アズカくん→#14新見くんの合わせが綺麗すぎるくらいに決まる。そしてついに…

アズカくんの3ptが決まってしまう…入るんかい!

そしてDFにも変化が…

2-3ゾーン!そういう器用さもあるのね…なんて言っていると…

3.5分には1-3-1!しかもこのゾーンが効いている…
なんなんだこのチームは!!!

紐解き

全体的に上手いのも分かる。でも近年の高校バスケではあまり感じたことのない違和感…「ぬるっとしている」いや、「すっきりしすぎている」??

この感覚の正体を紐解くにあたり、ポイントはやはり2年生センター・ハロルド・アズカくんのプレー位置。

留学生が完全にスリーの位置まで出てくる。ただのスクリーン役ではなく、1アタッカーとしてここから仕掛けてくる。離せばすぐに3ptを打つし、打てば高確率で決まる。前半の3ptメイクは最高の布石になった。

他4人も両ウィング&両コーナーでの構えでほぼ5outの形。留学生がいるチームは4out1inが基本で、5outとても珍しい。
しかし、このポジションが鳥取城北の最適解だとすぐに理解できた。

ロジックはこういうことかなと。
⓪城北は全員、3ptありドライブありの万能型アタッカー
①アズカ含めた5outなら、相手留学生がつり出されペイント付近が空く
②ペネトレイトすれば分かりやすくパスアウトor寄せが甘いなら中で合わせが成立
③基本スタンスとして「空いたら果敢に外から打つ」(実際、3ptアテンプトが試合平均30本以上らしい…)
④これが高確率で決まるし、外れても”飛び込み”でORが取りやすい
→②へ

この循環がうまく作用すると「ゴミゴミせずクリアにシュートができる」ため、第一が誇る全国屈指のプレッシャーDFの中で「ぬるっとすっきり点が決まっている」という見え方になる…冒頭の感想はこういったメカニズムで生まれていた。

鳥取城北のスタイルが高校バスケに与える意義

もちろんアズカくんのマルチな能力あってのスタイルで、他プレイヤーも高水準な技術があることも間違いない。
ただ、全国では留学生が当たり前の時代にこのスタイルは盲点を突かれたような衝撃があった。

鳥取城北のオフェンススタイルは
「もはや”留学生=中の選手”じゃくてよくない?」
という高校バスケへの一つの問いかけに見える。

留学生、あるいは対抗する日本人センターが3ptシュートまで打つこと。
それ自体はこれまでの高校バスケにもあった。
延岡のバンバ、桜丘のモッチ・ラミン、福大大濠の井上、そして今年の同じく福大大濠・渡邉伶音。

ただその3ptの意味はあくまで「ビッグマンにスリーも打たせる」であってあくまでオプションに過ぎなかった。

一方の鳥取城北・アズカくんは
「元々バスケが上手な選手を留学生として迎えた」
「3ptにこだわるというより、どこでもプレーできる」
「離せば打つ・寄れば抜く・もちろんリバウンドはがっつり絡む」
という選手で、
それを踏まえたOFもチーム全体として5outが基本形。

これ、留学生がいなければ極めて普通なチームのつくり方の1つだが、留学生が当たり前になった全国レベルの高校バスケではかなり珍しい。
留学生のマッチアップで「高さ勝負」「強さ勝負」以外の新たな尺度で優位が取れるし、他4つのマッチアップへの好影響も計り知れない。

という形を鳥取城北が1つ示してしまった時に、これから各高校の
「スカウトしたい留学生の基準が変わる」
具体的には
「センターとしてではなく1アタッカーとしてマルチな留学生を求める」
という変化があり得て、
90年代(?)以来、留学生の増加とともに歩んできた高校バスケが次のレベルに向かい始めることを意味するんじゃないだろうか。

もちろん、アズカくんのようなマルチなプレーヤーが留学生として日本に来てくれる確率は現実的には低いかもしれないし、留学生がマルチであることを前提として5outのようなチーム作りをするかは日本人プレーヤーたちにもよる。

ただ今回感じたのは、鳥取城北の快進撃には確かな理由があったし、
そのスタイルは示唆に富んでいるだろうこと。

小難しく考察してみたけど、鳥取城北のバスケがおもしろくてたのしくてファンになった!!

今年のWINTERCUPも最高だったなぁ。お疲れ様でした。

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