人類の社会性の進化
山極寿一・本郷峻『人類の社会性の進化(上)(下)』
前京都大学総長で,著名な霊長類学者として知られる著者とその弟子?による著作で,人間の社会性がどのように獲得されてきたのかが霊長類学や人類学の知見に基づいて記述されている.
一般読者向けのものなのでとてもわかりやすいが,iCardbookという独特な形式がとられた出版物である.すなわち,非序に多くの項目から構成されているが,それぞれの項目はごく簡単な記述からなっている.京大式カードというものがあるが,カードをまとめて一冊の本として作られたようなものである.
人類が生き延びるために,社会というものがいかに必要であったのかがよくわかるが,人類はここに至って社会をなくす方向に進んでいるように思えてならない.人類はまた別のものになりつつあるのかもしれないが,社会を取り戻すことは不可能なのだろうか,というようなことを考えた.
(上)「社会」の学としての霊長類学
第1章 霊長類学の歩んできた道
第2章 ニホンザルの社会とは
第3章 霊長類進化の舞台
第4章 食と性が社会をつくる
(下) 共感社会と家族の過去,現在,未来
第5章 暴力と社会
第6章 生活史戦略の進化
第7章 心の理論とコミュニケーション革命
第8章 家族の変容とヒト社会の未来