【食エッセイ】私を狂わす悪魔のポテトフライ
意を決して何かに取り組み始めたのに邪魔が入る。こんな経験をした人は少なくないだろう。私もよくある。その大半はダイエットにおいてだ。
休日は彼と浮かれて食い道楽をする。外食したり、家だとしても飲んで食べてぐうたらしたりが我々のお決まり。そんなんだから大抵月曜日は増量している。月曜の朝はいつも誓う。「平日で戻してやる!」と。これが私の1週間のはじまりだ。
今週もそうだ。月曜日から早速気を引き締めて食事をコントロールし、火曜の朝には400g減った。まぁ悪くはないスタートに気を良くし、さらにこの日は打ち合わせで都心へ行くのでいつもより動く。打ち合わせは頭を使うからなかなかのエネルギー消費が期待できる。今週こそは順調にいくと確信していた。
ところが、不測の事態が起こる。
「ただいま〜」と陽気な声で帰宅した彼。仕事が忙しい時の彼はだいたい疲れた反動でナチュラルハイだ。しかし、昨日はいつもとやや様子が違う。なんだかいつもより機嫌が良い。
その理由はすぐにわかった。日高屋の餃子だ。テイクアウトしてきた。
うぉぉぉこのタイミングでかぁ……と心の中でつぶやく。せっかく良い感じのダイエットのスタートを切れたのになぜ、なぜこのタイミング!
こういう時の彼は、私と一緒に食べることを想定して買ってきてくれる。その優しさと思いやりには大感謝。断るわけにはいかない。何よりも、目の前でおいしそうに食べられるのは辛い。
あぁ、食べるしかないかと渋々現実を受け止める。って私が我慢すりゃいい話だが、この状況になったら断りにくい。いや、我慢しろというほうが酷だ。誘惑に打ち勝つことはできないと悟り、3個ほど食べて我慢しようと決めた。
そんな私の決意は次の瞬間、見事に破れ散る。
餃子で済むならまだ良かった。もっと恐ろしいものを彼は買ってきた。
それはポテトだ。
皆様はご存じだろうか。なんと、日高屋にはポテトもあるのだ。マックの長細いタイプではない。三日月型の肉厚のタイプ。ケンタとかモスのポテトみたいなやつ。食べ応え十分のあれだ。
そしてさらに、恐ろしいことが起こる。
「ジャンキーポテトフライ食べたくなったから、今から作るよ!」と彼。
ジャンキーポテトフライトとは、我々が愛する行きつけ店のメニューで、悪魔的にうまいポテトである。ポテトの上に半熟の目玉焼きがのっていて、さらにケチャップとマヨネーズがかかっている。ジャンキーポテトフライと名付けられるのも納得だ。いたって簡単だが、これがさいっくぅぅぅにうまいっ。
卵を割ると黄身がとろり出てきて、ケチャップとマヨネーズを混ぜたのをポテトにつけて食らう。想像するだけで絶対的にうまいことはお分かりだろう。彼はこれをうちで作るというのだ。
あぁ、もう終わった。
幸先の良いダイエットは振り出しに戻ることが決定。今週も苦戦するのかダイエット。と友蔵こころの俳句ふうに心の中で詠みあげる。
そんな私の思いをつゆ知らず、彼はご機嫌に手早く目玉焼きを作ってポテトの上にのせ、ケチャップとマヨネーズをかける。
ニヤつきながら運ばれてきたジャンキーポテトフライは見た目こそイマイチだが、味は本家と変わらない。うまい、うまい、うまい!!ハイボールと最高に合う。合わないわけがない。いや、これと合わないお酒なんてないのですよ。
その横には日高屋の餃子。ポテトと餃子を交互に食べる。そしてハイボールをグビグビ。抑えたはずの食欲は収まらない。ブレーキのない車みたいに暴走する私。餃子は結局4個食べ、ジャンキーポテトフライもパクパク食べた。
こんな具合で、私のダイエットは見事に振り出しに戻ってしまった。次の日曜日に中高の友達と数年ぶりに会うから少しでも痩せて迎えたいのに。
彼は私がダイエットを始めるといつも最高にうまいものを持ってくる。良かれと思ってのことだから責めはしないが、少しは彼もダイエットしようという気持ちになってほしい。そうすれば、こんな不測の事態は起こらないのに。
明日こそは彼からの思わぬ誘惑があっても絶対に食べないと心に誓い、ベッドに入った。
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