京子先生の教室3「今のおならは俺」
クラスに40人の子ども達が集まるといろんな「個性」に出会います。今回は忘れられない「個性」の持ち主の登場です。
5年生の秀人君は、しなやかな人です。クラスみんなのクッション役というか、足元をポッと照らしてくれるというか、あったかい対応力を持つ人です。人柄を感じさせるいろんな場面がありましたが、こんな出来事を紹介します。
昼休みにクラス全員でフルーツバスケットをしていた時のことです。
「えっと~、次は・・・、りんご!」「きゃ~。」バタバタ、・・・・。「はい、公一くんおに~。」「じゃあ、俺ね。ん~、フルーツバスケット!」「うわお~~、」ドタドタ!ドタドタ!!「はい、一郎君がおに~。」
「あ~。ぼく?」一郎君が鬼になりました。そしてみんなが、次に一郎君は何と言うのか、黙ってその言葉に集中した時のことです。
「ぷ~~」
おならの音が小さく、でもはっきりとみんなの耳に聞こえてきたのです。『えっ?!』みんなの目が止まってしましました。すぐに誰の仕業かわかってしまったのです。おとなしい女の子でした。みんなはどうしたらいいのかわからず黙ってしまいました。・・・・・・・・。すると突然!
「いやあ~ごめんごめん。申し訳ない。つい、やっちまった。今のおならは俺。ハ・ハ・ハ」
と頭をかきながら、すっと椅子から立った子がいました。
秀人君です。・・・・・みんなは『あっ!・・・』という顔をしました。そしてすぐ察したかのように、
「秀人、やめてくれよ~」「秀人~」「こんな時、おまえなあ~」
と続けました。ちょっとの間、秀人君を中心に盛り上がりました。そしてこのことは、みんなで秀人君を笑い飛ばすことで終わってしまい、フルーツバスケットの続きが始まったのです。
それを黙って見ていた先生は ゾクッと鳥肌が立ちました。機転の利いた秀人君の対応と即座にそれに応えた子たち。秀人君がいてくれたおかげでどれほどみんながほんわかとした空気に包まれたことか。自分たちの周りに起こる状況にしなやかに対応し、するりとかわしていく力を持つ人です。
その後先生は、新しく担任したクラスの子ども達にこの出来事を話してあげることがあります。すると「ほんとにそんな人いるんですか?」と疑う人もいますが、「何か、かっこいいよね。そう思わない?」と言うとみんなは、「うん、うん」とうなづくのでした。
教室はいろんな「個性」であふれています。今回は秀人君でしたが、子ども達であふれる教室は、もっともっと強烈な個性、おもしろい個性、やさしくてあったかい個性など、「個性」と言う宝石がたっくさんちりばめられている、キラキラ輝くの場所なのです。
おしまい
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