その感情は、向かい合わせか、背中合わせか。
止まらない 感情の諦め合い
indigo la End『忘れて花束』
サビの歌詞の一節です。
感情が「ぶつかり合う」はよく耳にします。
そうではなくて、互いに離れる方向に向かう、「諦め合う」という言い回し。
この曲を初めて聞いたとき、サビの歌詞に衝撃を受けた、というよりもハッとさせられました。
相容れない感情の複雑さを表現する方法として、こうした言葉の使い方があるのかと。
では、諦め合う感情とは何なのか?
『忘れて花束』の歌詞は、同歌手の曲『雫に恋して』の登場人物のその後を描いています。
これを聴くことで、諦め合う感情の正体が分かります。
「一緒に居たい。でも、離れるべき。」
......切ないですね。
『雫に恋して』と『忘れて花束』。
二つで一つの作品、ということがよく分かります。
川谷絵音が作詞している曲、殊にindigo la Endの曲の歌詞には、逆説的な言い回しや大和言葉が随所に現れます。
それが音楽と相まって、曲全体の切なさや美しさを一層引き立てます。
そこに、楽曲の深みと魅力を感じます。
例えば大和言葉が使われている歌詞が、こちら。
灯る場所には グッバイ
たおやかな火 君のことだよ
---indigo la End『夜漁り』より---
この「たおやか」という言葉。
姿や動作がしなやかでやさしく、上品なさまを表す大和言葉です。
大和言葉は、語感にやわらかさがあります。
それをロック系の曲、さらりと馴染むように乗せている。
楽曲の作り方が、曲先行か歌詞先行かは分かりません(同時かもしれません)が、
こうした言葉の使い方、憎いです、川谷絵音さん。
どんな言葉で歌詞が構成されているか。
心をすくうような優しい歌詞も好きですが、
心がざわめくような歌詞を見つけるのも、音楽の楽しみ方のひとつですね。
ではまた。