中学受験と僕

あまり読み手に負荷をかける書き方はしたくないのだが、僕は世間の基準でいえば、間違いなくエリートである。中学受験で都内のトップ進学校に合格し、1浪の末、三島由紀夫の後輩となった。

大学では、かねてよりの退廃主義を発揮し、退学寸前であったが、なんとか休学を駆使して卒業にありつけたので、終わってしまえば、秋になると教室にまで匂ってきたあの銀杏並木が懐かしく感じられる。

学歴自慢のようなことはしたくなかったのだが、学生時代に何人もの生徒を家庭教師として指導してきたので、もう今後の人生で職業として家庭教師をする機会もないだろうから、記念碑的な文章を残しておこうと思う。

ちなみに私が担当したのは、ほとんどが中学受験生であり、JKと恋仲になるといった妄想小説のようなことはなかったので悪しからず。

まず、中学受験は親の意向である。というのはあながち間違いではない。塾にかかる費用はもちろんだが、受験生が家にいるという親の精神的負担は計り知れない。試験のたびに一喜一憂させられ、子供を置いて遊びに行くわけにもいかないので、必然親の関心は子の成績に注がれることになる。しかし、上手くはいかないもので、優秀な子というのは、親の手をかけずとも勝手に勉強するのである。それに対し、大多数の普通の子は、勉強以外のこともしたいに決まっているので、親は自分の邪魔をする存在にしか見えないだろう。ただ、小学生だとまだ親に気に入られたい気持ちが残っているため、かろうじて勉強しているに過ぎないのである。

個人的な感想を述べておくと、塾に通っていて、それなりの勉強量をこなしているにも関わらず、偏差値50、つまり平均を超えない子は、中学受験をすべきではないと思う。勉強はすべきだが、受験のストレスに晒され続けるのはマイナスが大きいと思う。彼らはみな、名の知れた進学校を記念受験し、実力不足ゆえ無惨に散っていくのだ。無駄に悲しい思いをする必要なんてないのに。少し頭の良い子なら、中学受験の偏差値50ぐらいは、そんなに必死こいて勉強しなくとも、塾の復習を軽くこなすだけでも到達するラインだ。ゲームやスマホの禁止なんて全く意味がない。逆に言えば、そこまで追い詰めなければ勉強をしないのであれば、残念ながら運良く中学受験は乗り切ったとしても、中学高校で遊びまくるのがオチだろう。

次に偏差値60以上の子について。

ちゃんと勉強させて上の学校を目指した方がいい。例えば、東大法と慶応法の難易度自体は実はそんなに変わらないと思っている。しかし、世間的な目で見れば、東大の方が圧倒的に上のような扱いを受けている。それは、最高難度の学校には、飛び抜けた天才が存在するからで、彼らが平均を引き上げているのだ。事実、現在外務省で働く大学の同期は、紛うことなき努力の天才であった。私などが同門と言うのもおこがましいレベルである。

中学受験の話に戻ると、中学受験で上位1割の学校に行くような子は、間違いなく大学受験もする羽目になり、しかも大体がmarch以上を目指すことになる。だとしたら、中学受験の内容は大学受験に繋がっているのだから、しっかりと基礎固めをしておくに越したことはない。仮に中学受験で第一志望に落ちたとしても、大学受験で挽回することは可能である。私は、1浪して東大に入ったので、現役時には成績的には抜かれていることになるだろう。ほぼ6年間遊び続けていたので、当然といえば当然であるが。

家庭教師として過去10人ほどを担当し、塾の講師もしていたので、具体的な勉強法なども教えられるが、ここに書いても仕方がないので、割愛させていただく。

ひとつだけ言えるのは、結果が全てだ。もちろん名の知れた進学校や大学に合格することは価値が大きいが、犠牲にしてきたものを差し引いて、本人やその両親にプラスとなるようなものが残っているのなら、受験成功であると言えるし、反対に、受験なんてしなくてもよかった、と思ってしまったなら、誰がなんと言おうと失敗である。

僕個人で言えば、中高を過ごした開成はすごく楽しかったし、今でもたくさんの友人がいる。それに比較すると、東大は期待外れだった。対人関係が希薄で、深みに欠ける人間が多かった気がする。ただ就活の強さは圧倒的だったので、日本人の東大ブランドは根強いものがあると実感させられた。その点については、先人たちに感謝するしかないので、後塵を拝することのないよう、自分の出来る範囲で努力は続けたいと思っている。

余談だが、時給は5000円ほどで引き受けることが多かった。中学受験経験者は付加価値が高いし、親が子供に対し、まだ期待を持っていることの現れであろう。その金がギャンブルや飲みに費消されていたことなど誰も知らなくてよい事実である。

note初心者なのでよく分からないが、受験関係で困っていることがあれば、相談に乗る。経験と知識でいえば、一応プロを名乗ってもよいぐらいの自負はある。

それではまた。

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