タキシードの紳士(うつこさん)謎の男シリーズ③
バス停の男、交差点の殿様に続き、 同じ週に3回目の出来事があった
その日はおじいちゃんに連れられ、自転車の後ろに設置された子供用の椅子に座っていた。
おじいちゃんは商店街を私を乗せて走る 流れる景色をぼーっと眺めていると、 道路脇にある洋服屋さんの2階におじさんがいた。 私をじっと見つめている。 まただ。
そのお店は、自宅の一階を店舗にしていて、 一階は洋服屋さん、二階は自宅、そしてお店の上はベランダになっている。 そのベランダに立つ紳士。
そのお店に似つかわしい、茶色のタキシードを着た、50歳くらいで眼鏡をかけた紳士。 その紳士が、自転車の後ろに乗る5歳の私を凝視する。
怖い、目をそらしたい、そう思いながらも視線を逸らす事がどうしてもできませんでした。 自転車がそのお店を通り過ぎる数十秒が1時間にも感じ、 その光景が大人になった今でも脳裏に焼き付き忘れる事はいまだに出来ない。
それと同時に、私が見たこの3人の男は人だったのか、それとも・・・
※このエピソードは、インタビューを元に加筆修正を加えたものになります。