”てんし”のくれた贈り物(ふらっとさん)
たまごっちブームが終わり、「てんしっち」が流行っていた頃の話。
6歳くらいの頃、祖父と一緒にお店に行った。
それがデパートのおもちゃコーナーだったのか、
高速道路のサービスエリアだったのかは定かじゃないけど、
6歳の私は祖父に手を引かれて歩いていた。
おもちゃ売り場に差し掛かった時、
私の目はある商品にくぎ付けになった。
それは、「てんしっち」をモチーフにした腕時計。
「てんしっち」っていうのは、
空前のたまごっちブームが終わりに差し掛かった頃
二番煎じの商品が大量に市場投入された時期があったのだけど、
その中の1つだ。
当時の私にはそんなおとなの事情は分からず、
なんだか楽しいものがある、というくらいの認識だったと思う。
そんな時期に私の目の前に現れた「てんしっち」の時計。
この腕時計のデザインがすごくかわいくて、
欲しいとか、そういう気持ちじゃなくて、ずっと見ていた。
この可愛いやつをずっと見ていたい。見ているだけで幸せ。
だけど私のその行動が、予想に反した方向に現実を進めてしまった。
一緒にいた祖父が、私が見ていた「てんしっち」の腕時計を棚から取ると、
躊躇いもせずにレジへと進んだ。
私が欲しいと言えずにいるのだと思い、プレゼントしてくれたのだ。
「え!!!買ってくれるの!!嬉しい!!!」
こうなりそうなものだが、予想に反して私の感情は一気に沈んだ。
その時計は1500円くらいだったのだけど、
6歳の私からしたら、めちゃくちゃ高価なものだった。
おねだりするとか、買ってもらうとか、考えも至らない程高価なもの。
それを買ってもらってしまった事で、 嬉しさや喜びよりも、
罪悪感に押しつぶされてしまった。
すごく欲しいわけでもないのに、
欲しそうに見ていたから買わせてしまった。
6歳にして、物欲しそうにおもちゃを凝視してはいけない。
そう強く心に刻まれた出来事でした。