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「シーっ」おばさん(リコドットコモさん)
5,6歳の頃、毎日家の前の路地で遊んでいた。
車通りが少ない路地だったから、近所の子供がみんな集まって毎日お祭り騒ぎ。
泣き叫ぶ子もいれば、大声で歌っている子もいるし、
ボールを投げたり、走ったり、もうやりたい放題。
近所の家の人は、それでも優しく見守っていてくれた。
でも、一人だけ毎日怒ってくるおばさんがいた。
「しーっ!!!しずかに!!!」
右手の人差し指を一本立てて、口の前に立てながら現れるそのおばさんを、
私達はいつしか「しーっおばさん」と呼ぶようになっていた。
「しーっ!!!しずかに!!!おばちゃんの家はね、赤ちゃんが寝てるの!そんなに騒いでいたら起きちゃうでしょ!」
いつもそんな風に締めくくられるお説教は、私達の声を一時的に小さくさせたけど、結局次の日にはまた大声で遊ぶの繰り返しだった。
当時はよくわかっていなかったけど、赤ちゃんが寝ているなら静かにして欲しいよね。悪い事をしたかもしれない。
少し大きくなって、母に聞いてみた。
「どこどこの家におばさん住んでるでしょ?あのおばさんのところの赤ちゃんって今いくつくらいなの?」
母は「何言ってるの、あのおうちにはお子さんはいないわよ。たしか〇〇さんはずっとおひとりで暮らしてるわよ。」
言われてみれば、あれだけたくさんいた遊び友達の中にも
しーおばさんのあかちゃんを見たという人は一人もいなかった。
じゃああの日、しーおばさんの家からかすかに聞こえた、
あかちゃんの泣き声は何だったのだろうか。
※この内容はインタビューを元に加筆修正を加えたものになります。