背を伸ばす方法
人間ドックに行った。大変なことが起きた。
身長が2センチ伸びていたのである。
本当は「おすすめのオープンイヤーヘッドホン」というテーマで記事を書くつもりだったけど、それどころではない。これは緊急事態だ。
ちなみに私はいい大人で、成長期などとうに終わっている。むしろ、これからは縮む一方だと諦めていた。
身長155センチの女である。小学校高学年の頃にこの身長に到達して以来、ごくたまに156センチになることはあっても、ほとんど誤差の範囲内だった。
中学校時代はそのことを気にして、カルシウムのサプリを摂取したり、「背を伸ばす本」に従って「背伸び体操」なるものを試したりした。保健の先生が「牛乳を飲んでたくさん寝ればいい」と教えてくれたので、高1の夏休みは牛乳を飲み、昼寝をしまくった。その結果、成績が落ちただけで、背は一向に伸びなかった。もちろん、運動嫌いだった私にとって、成長を促す要素はさらに遠ざかるばかりだった。
なぜこの身長がコンプレックスだったのか。それは、両親よりも背が低いまま成人してしまったからだ。どちらからも10センチ以上小さい。他の兄弟は世間的にも背が高い部類に入るが、私だけが小柄だ。ひとりだけ、何歳になっても子どものままのように見えてしまう。
なぜ自分だけが外れ値なのか、その理由は分からない。ただ、思い当たるのは成長期の小学4〜5年生頃、辞書に夢中になり、毎日国語辞典と漢字辞典を背負っていたことだ。小学生向けの辞書1冊が約850グラムなので、2冊で1.7キロになる。もっとも、今の小学生もiPad(カバー込みで約600グラム?)や水筒(約900グラム)を持ち歩いているから、似たような負荷がかかっているはずだ。
いずれにせよ、「遺伝子的に伸びしろがあったはずなのに、その可能性を微塵も活用できなかった」という無念が、長年私の心に引っかかっていた。
ところが、ここにきて突然背が2センチ伸びた。
背が伸びた理由
思い当たるのは2つ。
1. 毎日ラジオ体操を1年間続けた
私は日に4回実施するという狂気じみたラジオ体操信者だ。この効果だとしたら非常に嬉しい。腕を上に伸ばす動作などが効いたのかもしれない。
2. 寝る前にストレートネック対策のストレッチを3ヶ月続けた
ギックリ首防止のために始めたものだが、肩こりが多少良くなり、頭痛も改善した。この効果だとすれば、小学校高学年の頃にはすでにストレートネックだった可能性が高い。当時から酷い頭痛持ち、だいぶ不健康な子どもだったのだろう。
これくらいしか思い当たることがない。当然ではあるけれど、これをやったら背が伸びる、というものではない。もしかしたら、地球の何かが変化したとか、思いも寄らないところに原因があるのかもしれない。
2センチ伸びて変わったこと
純粋に嬉しい。ずっと「背が伸びてほしい」と願ってきたからだ。そして、不思議なことに、身長へのこだわりが突然なくなった。2センチ伸びた今、現実的にそれ以上は望めないと分かった。どうやったって今から10センチは伸びないし、ストレッチをやめればまた縮むだろう。30年後には5センチ以上小さくなっているかもしれない。
これまでは嫌なことがあるたびに「私は身長が低いから舐められるんだ」「バキみたいな体格になって見返したい」と思っていた。でも、それはただの幻だったのかもしれない。もちろん「電車の上の棚に物を載せられない」とか、日常的な悩みはあれど、それは誰にでもあることだ。
この身長が、私のサイズ。それだけだ。
フワフワと身体から抜け出してさまよっていた「私」が、すっと自分の身体に戻ってきた。そんな気がしている。