ピーチボーイズを終えて。
Peachboys最終公演 =PeachBOOWYs LAST GIGS= 『ピーチボーイズ 〜エヴァンと下痢男〜』が終演して約1ヶ月経過した。
ユニット史上最大級の盛り上がりを見せて公演は幕を閉じ、最高の形で12年間の活動を終えることが出来た。間違いなくそう言い切れる。
では、最初からこんな公演になることを想定していたのか、と言われると全くそうではなかった。
『ピーチボーイズ』はどういう公演だったのか。
Peachboysは年に1回本公演を打つというやり方で12年間やってきた。昨年も同時期に『立ちバック・トゥ・ザ・ティーチャー 〜僕たちの失敗〜』をやった。
『ピーチボーイズ』の話が出たのはその公演が終わってからのメンバー会議でのことである。いや最初に飛び出たのは次の公演の話ではない。Peachboysはもう終わり、という話だった。
今回の劇中でも言及されていた通り、大きな要因はお金であった。立ちBTTTは『ちろうに検診』で始めた大規模なレビューショーもやりつつ、今までやってきた中で最大収容数を誇る中野ザ・ポケットで公演を打った。その時も史上最高傑作との呼び声は高く、集客数も今までの団体の実績からすれば決して悪いものではなかった。しかしそれでも、全体の予算に見合う集客ではなかった。
当初聞いていた目標動員数と本番中のチケットの売れ行きから、赤字であることはメンバーなので当然分かっていた。だから、立ちBTTT後の動きとしては今後赤字をどのように取り戻していくか、という話になるものだと思っていた。
しかし、告げられたのはPeachboysはもうこれでおしまい、という話だった。個人的には寝耳に水であったが、他のメンバーはやり切った感もあるし潮時だろうというのが総意だった。その後、色々あって赤字の精算も済み、これで終了という流れでどんどん進んでいった。しかし、メンバーだけでなく今まで出演してくれた方々にピーチの動向について報告していく中で、結局は最終公演をやろうということになった。
その中で自分が感じていたのはずっと不安だった。お金が原因で解散が決まった団体なのに、最後にもう一度最終公演を打つ。それも簡単なイベントで済ませずにコケたら膨大な赤字が出るちゃんとした劇場での公演を。赤字になったらどうするのか。
今までPeachboysに携わってくれた人たち、楽しんでくれたお客様たちにしっかりとした最後をお届けしたい、その気持ちも分かる。しかし気持ちだけではどうにもならないのが数字という現実だ。大丈夫なのか。
どんどん流れていくピーチの動向に自分の気持ちの置き所は正直よく分からなくなった。整理のつかない自分の気持ちは置いておいて、ピーチを楽しんでくれる人たちのために全力を尽くそう。そう心に決めて最終公演に臨むことにした。
不安はお金の部分もあったが、お客様を満足させる内容になるのかという不安も強かった。予算の問題があるので(そもそも劇場の広さ的に無理だけど)レビューショーは無しというのは最初から決まっていて、ボリュームとしてパワーダウンすることは必至なのではないかということ。とにかくお金をかけられないので新しいことはやらず、過去に出てきたネタを総出演させるベストアルバムのような内容、というのが基本方針だった。今までのネタで新しいことはやらない。Peachboysは“童貞3人組が好きな娘が出来て、その娘と結ばれるために奮闘努力するも結局結ばれない”という内容をずっとやって来たユニット。内容だけでなく、台本の展開・構成も毎回一緒でネタの内容をその時の旬なものにしているだけ。ただでさえ毎回やってることが同じと言われてもおかしくないユニットなのに、新しいことをやらずに楽しませることが出来るのか。ただ何となく終わるだけでは寂しいから最終公演やりました、というおじさんユニットの自己満にならないかずっと不安だった。 その不安から大丈夫かもと思えたのは最初に台本を読んだ時だった。“自分たちが毎回同じようなことをしていることに気づき、好きになった娘と結ばれるためだけではなく無限ループを終わらせるためにも奔走する童貞たち”。いつもの展開だけど、新しい展開。最後だから出来る、12年間の積み重ねがあるからこそ出来るピーチ。Peachboysの大元の元ネタであるビーチボーイズをもじったタイトル、『ピーチボーイズ』。何回コスり倒してきたか分からないエヴァも副題に添えて色んな角度からピーチとエヴァをリンクさせる。(ヤマダに突き刺さるロングバイブの槍、無限生産されるキシダ、エヴァのOP完全再現、ヤマダに乗れとせっつかれるハヤオ、“逃げちゃダメだ”からの下手にはける宣言そして“おめでとう”包囲、人類補完計画、エヴァを彷彿とさせる不条理な終わり方)。何年も焦らしてやらずにおいてきた最終決戦も、コスり倒してきたドラゴンボールでの長尺バトル(サイヤ人襲来編のベジータ戦〜コミックス完全版1冊分)。最終公演に相応しい内容だと思えた。
だが、面白さの不安は軽減される一方で、本当にこれやり切れるのか?という不安が台頭してくる。なるべく新しいことはやらない方向で、衣装なども過去のものを使い回す方向で、という話だったが、過去のキャラクターをめちゃくちゃ出した結果、過去最大物量の衣装・小道具が必要となり、また過去に出ていたとは言え紛失したものなどもあって結局新たに作る必要も出たりして、とにかくずーっとその用意に追われることとなった。
特にエヴァのアニメオープニングを完全再現する今回のOPシーンは出す小道具とその手数・スピードが異常で稽古では一回も完全に成功することなく、ゲネですら上手くいかず、果たして本番で成功するのだろうか…とずっと不安だった。
ピーチは公演前に花園神社の札を置いて全員で成功祈願し、舞台上で気合い入れをして臨むのが通例なのだが、ゲネを経て本番初回を迎える時、直前まで準備に追われていていつもの儀式をやる余裕はなかった。そんなこと初めてだった。それぐらいバタバタして本番を迎えた。
そんな風に終始バタバタしていたので、幕が上がった時は怖かった。ノリさんの前説から、お客さんの期待値が物凄く高いことが分かる。新しい構造の物語になっているとはいえ、ネタは過去の使い回しも多い。期待を裏切ることにならないか。エヴァのOPは上手くいくのか。グガガ歌舞伎はどう受け止められるのか。拍手が起こるどころか何の反応もなかったらグガガどころではないぞ…。
そう、僕が演じるハヤオは毎回、クスリを投与されたり、身体を機械に改造されたりした挙句、発狂してグガガガガ!と叫ぶシーンがあるのだが、今回はその集大成として見納めの狂い咲き、グガガと叫びながら歌舞伎のポーズを決めてハケていくというシーンがあったのである。毎回観ている人にはお馴染みだが、初見の人には全く意味不明のシーンである。童貞関係ないし。だけども、10年間ずっとやってきたので、今回が最後だからやらせて下さいとお客さんにお願いして、拍手がきたらそれを受けて、自らクスリを飲み自ら狂いにいく、というのが台本にも書かれているグガガ歌舞伎の流れだった。
稽古の時からお客さんから拍手を貰えない可能性もありうると言われていて、どう転ぶのか全然予想がつかないシーンだった。今まで芝居をやってきて、圧倒的に、一番恐怖を感じた。他のみんなはウケても、自分だけスベるんじゃないか。自分のユニットで、10年間やってきて、最後の最後に意味不明なことやってスベッた奴になるんじゃないか、と不安でしょうがなかった。でもお客さんの前でやるまで、どういう反応がくるのかは分からないし、反応を受けてやらないと成立しないシーンだった。
そもそも新しい形のピーチではあるが、それは今までピーチを観たことがないお客さんに伝わるものなのか?という不安もあった。何度も繰り返しているのに童貞が気づく、という設定は12年間やり続けてきたからこそである。今まで観続けてくれたお客さんに対してはピッタリな内容だと思うが、ご新規のお客さんに伝わるのか。今回の公演は今までピーチに関わってくれた人たちに向けてのものとはいえ、結局はご新規さんにも来て貰わないと赤字は免れない。お金の不安、内容への不安、上手くやり切れるかの不安、伝わるかどうかの不安、それぞれが出たり引っ込んだり、ソワソワした気持ちが本番前のドタバタで散っていくような混ぜこぜになっているような、そんな状態で幕は開いた。
反町隆史のフォーエバーが終わり、熊野さんのキシダのシーンから始まる。いきなりウケてる。熊野さん凄い。やっぱあのクオリティだと一発で伝わるんだ。その後のシーンもウケる。イクラちゃん、あいみょん、ソリマチ、タケノウチ、リョウコ、アシダマナ、ミナミ、タケダ先生、みんなウケる。BOOWY、異様な盛り上がり。そして問題のエヴァのOP、奇跡的に早替えに成功する。シンジ出てきたな、ゲンドウとか出てきたな、初号機出てきたな、このフリップ…まさか!?、観客に伝わってるのが分かる。神話になれ!で観客が沸くに沸く。
その後のシーンも全部ウケる。うねるように笑いが起こる。ウケてるにも関わらず異常な客席の熱に怖くなる。そしてグガガ歌舞伎のシーン。お客さんと対峙する。グガ!と叫ぶ芝居だけを追求してきた10年間、最後に狂っても良いでしょうか?想定よりも早く拍手が起こる。一旦なだめてから、台詞を喋り、改めてお願いする。また拍手が起こる。グガガガガ!三段階で狂う。歌舞伎のポーズを決める。グガガガガと叫びながらはけていく。拍手が起こっている。僕がはけるために暗幕を捌いていた園田さんが抱きしめてくれる。ウケてるのかもわからないけど、成立していたらしい。反芻する間もなく、次の着替えに向かう。廊下をぐるりと周り、中腰でエスタークになり、蹲踞の姿勢のまま横移動でさらにぐるりと周り、また舞台に戻っていく。ドラクエが終わったらドラゴンボール、マリオカート、そしてラストのドリフへと雪崩れ込んでいく。
そのようにして一気に終わって行った。初日は大盛り上がりだった。途中でお客さんも疲れるだろうと思っていたら、ダレることはなく最後まで凄い熱狂だった。とはいえ初日は特にピーチを楽しみにして観に来るファンの方々が多いから、2日目以降はそうはいかないだろう、と思っていたが盛り上がりは落ちないのである。
ずーっと盛り上がっている。新規の人も昔からのファンかのように、全てのネタに興奮している。もっと早くピーチのことを知りたかったという声もたくさん貰う。予約が埋まっていく。特典付きの祭前席(さいぜんせき)も売れていく。半ば冗談のように、最後だから在庫が余っても困るからと、安めの値段に設定したグッズはガンガン売れ、売るのも難しいと判断して持ち帰り自由にしたグッズも補充が足りなくなるほど、祭前席のアフターイベントで小道具と衣装をプレゼントする企画は断る人は誰もおらずみんな持って帰ってくれて、渡すものがみるみる減っていく。気づけばチケットは完売。キャンセル待ちも入れるかどうか。BOOWYもエヴァOPもグガガ歌舞伎もアバンストラッシュもドラゴンボールもSMAPもドリフもずっと大盛り上がり。笑わせるつもりが泣いている人も多く見かけた。数々の不安もどこ吹く風、大入りという他ない興行で最終公演は幕を閉じた。
これ以上素敵な終わり方があるかってんだ!という理想的な幕引きだった。
Peachboysはまだやれるのか?
今回の動員数は885人。過去に1100人以上動員したこともあるので、最高動員数という訳ではないが、その時は20ステージで今回は12ステージである。アベレージで言えば過去最高と言えるし、体感的な客席の盛り上がりは間違いなく一番だった。またやって下さいという声も多いし、出演者もスタッフも、もちろんメンバーだって全員Peachboysのことを愛している。ならば、ユニットとして続けていくことは出来るのではないか?お金の部分をクリアすれば可能なのではないか?
今回の公演は大成功だったが、最終公演だから起きたギフトのようなものだった。
今回は12年間もの間、同じようなことをやっていることに童貞たちが気づき、繰り返しのタイムリープを終わらせにいく、という内容である。最後だからこそ出来る一回こっきりの反則のようなものだ。同じ内容でいいから毎年再演してやってくれ、という声もあるが、そう何度も繰り返してやれることではない。
また、今回はベストアルバム的に過去のネタを使い回したとは言え、細かい骨格を担っているネタは旬なモノである。キシダは来年には代わっているかも知れないし、キプチョゲはマジで誰?となる可能性が高い。イクラちゃんやゆうちゃみ・みちょぱだって分からない。
そこだけ入れ替えれば済む話でもない。キシダが実はキシダクニオだった、というネタもできなくなるから全取っ替えになる。偶然ではあるが、ソリマチやタケノウチが最近やたらとCMに出ているから何となくタイムリーだったというのもある。
ピーチのネタは下ネタ・時事ネタ・パロディネタが複雑に絡まって成立している。構成するDJ Bokkyの手腕あってこその内容だ。一つのネタが潰れたら構成から練り直さなければならない。単純な再演は出来ないのである。
では毎年さらに新作を、という話になるがそれはやはりもう無理なのだと考える。
#365PB という企画をかつて僕はやった。年に一回しか公演をやらないピーチをお客さんに忘れられないために、1日1回ピーチについて毎日つぶやくということを1年間続けた企画である。今回、最終公演を終えて、Peachboysの活動の記録としても丁度いいだろうということで、#365PB の内容をまとめて小冊子にすることにした。データを完全に仕上げて入稿したのだが、先方からは印刷不可の連絡がきた。過度な性表現に抵触しているからダメだというのだ。それはどのラインなのかと尋ねたら、公演タイトルでもうダメだった。もっと微妙なラインでアウトなのかと思ったら初歩の段階でダメだった。更に言えば版権的な部分でも引っかかるようだった。基本的に身内に配るもので外部に出すものではないから、いけるのではないかと思っていたがダメだった。コンプライアンスの壁を明確に感じた。
ピーチを観た人なら分かると思うが、別にPeachboysは下ネタをやりたいユニットではない。究極、童貞の気持ちもどうでも良い。何でもないことで興奮してしまう童貞を通じて、馬鹿馬鹿しいことに全力を注いで表現したいだけだ。その分かりやすいアイコンとして童貞・下ネタをメインに据えてるだけで、過度な性表現で過激なことをやりたい訳ではない。だがピーチのくだらなさを表現するには下ネタが最適なのである。特別下ネタをやりたい訳でもないが、下ネタを外す訳にはいかないジレンマがピーチには付き纏う。
また、PeachboysはDJ Bokkyが脚本・演出を担当し、もし何か問題が起きたらその責任の所在はPeachboysのメンバー3人にある、というスタンスでやって来た。これは、小劇場の版権に関するグレーな部分をギャグっぽく処理していたスタンスとも言えるが、昨今の状況だとギャグでは済まされない可能性が高くなってきてしまったということである。Peachboysでは昔から、誰かに怒られたら謝って爆散しよう、という風に言い合っていた。しかし、今は怒られるだけでは済まずに訴えられるかも知れないのだ。
では許可を取れば良いのか。大量のネタをブチ込んでいるピーチはそれだけで莫大な金がかかってしまう。JASRACに払うだけで相当な額だ。というか、本人にバレてないからこそ出来るネタばかりだ。許しを請いに行って許可が出るとは思えない。
何よりそれは面白いのか?という話である。
ドラゴンボール芸人のアイデンティティ田島さんやR藤本さんが公式からのお墨付きを貰いにいったらお終いだ、的なことを言っていたのを聞いたことがある。パロディはネタ元の絶大な影響力のおこぼれをもらっているに過ぎないのだ。仮にウケていても、怒られれば悪いのは全面的にコチラという前提がなければそもそも成立しないのである。イジり方に愛があれば許される、という話でもない。
むしろ、パロディに必要なのは、怒られた時に責任を引き受ける覚悟なのだと思う。今のPeachboysのスタンスでは、その覚悟の所在が曖昧だ。メンバーでないDJ Bokkyに引き受けて貰うのはおかしいし、内容を考えてないメンバーには引き受けようがない。責任の所在を曖昧にしてきたからここまで続いてきたとも言えるし、今回で限界を迎えたのだとも言える。
そもそも内容云々ではなく、お金の問題が大きくてピーチは存続を断念したのであった。今回だって大赤字で終える可能性だって十分にあった。
お金の心配だけでも大きいのに、そこに更に訴えられる可能性を抱えつつ、前回の面白さを超えていく内容を考えないといけない、となると負担は増えていくのに選択肢はどんどん狭まっていくこととなる。時勢的にここらが潮時というのもむべなるかな、である。
これから
Peachboysは何となく始まった。はらぺこペンギン!の短編公演から派生して一回限りのスペシャルユニットとして公演を行ったのがそのまま続いただけである(始まりがそんな感じなので、責任の所在に関するスタンスも上記のようになったと言える)。僕も何となく演劇を始めて、気付いたらピーチのメンバーになっていた。
ピーチはめちゃくちゃ面白い、というのはメンバー共通の気持ちだったが、ピーチで売れていこう!という気持ちにはバラつきがあった。何となくで始めたユニットなので、しばらくは何となくで進んでいた。
しかし、ある時、お客さんの熱気がどうやら物凄いぞ、ということに気づいてから、ピーチのスタンスをメンバー間で確認したことがあった。年に一回のお楽しみ会のような公演を打つ団体として続けていくか、爆散する可能性は大いにあるが一か八か動員を増やしていくことを目指すか、どちらにするのか。前者で楽しく続けていく道もあったが、メンバーの意見は後者で一致した。
それでやった公演が『H&ERO 〜ハメると動く城〜』だった。ただでさえ疲れるピーチの公演を20ステージ、約3週間かけてやる。1000人以上の動員を目指して行った、当時既に出演者の高齢化も問題としてあった中で敢行したなかなか無茶な公演だった。だが、結果は1100人以上を動員。目標を達成した。案の定、出演者はみんなボロボロであったが何とかやり通した。次は1500人だ!ということで続く『20性器少年 〜あなるの番です〜』では25ステージ。既にみんなボロボロだったが、これをやったらピーチの先が見える。成功するにせよ爆散するにせよ、これでPeachboysの辿るべき道が見えるはずだ、と思っていた。
しかし、『20性器少年』の公演が行われることはなかった。
コロナで中止になったのだ。
挑戦して爆散したならまだしも、挑戦することなく道が途絶えてしまった。その後のピーチもレビューショーを行ったり、新たな発明をした訳だが、コロナを経て新しい道を模索した結果である。
仮にコンプラが今よりもギリ緩かったあの頃、『20性器少年』の公演をやって爆発的に成功していたらどうなっていたか。『20性器少年』の会場は下北沢シアター711。今回の『ピーチボーイズ』も下北沢シアター711。今回の動員数は12ステージで885人。単純計算で24ステージやれば、倍の1770人。25ステージやらずとも、レビューショーなし、シアター711の単独公演で『20性器少年』の時の目標はクリアしている。
あの時『20性器少年』がやれていたら。
それはもうたらればに過ぎない。
それよりも、メンバー3人で決めた勝負に行くスタンスを最後まで貫けたことを誇りに思いたい。
最終公演は大成功だったが、その前の公演では大ゴケしている。今回グッズは全部売れたけど原価割れの投げ売り価格だから利益出てる雰囲気出てるだけ。前回までの公演の負債をリセットしてからの今回の公演の興行がたまたま上手くいっただけ。最終回のボーナスが出ただけ。結果としてPeachboysは爆散である。勝負に出て、爆散した。そのことに誇りを持つべきである。
Peachboysを中心に据えて演劇活動をしてきた僕としては、ピーチでなくなってどうなっていくのかという不安は残る。僕のお客さんでも他の芝居は来なくてもピーチは絶対に行く!という人は多かった。Peachboysで売れるつもりだったし、これまではそれで良かった。
今回、個人で呼んだお客さんは100人を超えた。個人で100人以上呼べたのは初めてのことだ。最終公演だし、と密かに目標にしていたことなので達成して嬉しいが、半分ぐらいは宣伝しまくってくれた母と姉と伊藤さん(僕の歌の先生)のお陰なので、僕だけの力とは言い難い。
↓めっちゃ宣伝してくれた伊藤先生、新規レッスン生募集してるってよ。オススメ!
ずっと周りに助けて貰いながら生きている。純粋に自分だけの力はどんなものなのだろうか。そもそも、そんなもの存在するのか?
不安でいっぱいの最終公演だったが、その不安のお陰か、これで最後なんだなという感慨に耽る瞬間はほとんど無かった。しかし、ふと、これで最後なんだなと感じる瞬間があった。
本番直前の一週間、スタジオを借りての集中稽古期間に、丸一日、稽古をせずに小道具制作に当てた日があった。膨大な小道具を稽古の隙間を見て作るのだけでは間に合わないと判断された為だ。基本的にはメンバーのみで客演の人たちの参加は自由意志だった。でも実際には用事があって来れない人以外は全員来てくれて小道具作りを手伝ってくれた。その中でもエヴァOP再現の最後を飾る巨大パネルは来てくれた人全員で取り組んでくれて、絶対に終わらないと思っていたのが1日で完成したのだった。間に合うのか気を揉んでたのでホッとするのと同時に、この光景なんか見たことあるなと感じた。
自分は美術大学出身なのだが、みんなで集まってワイワイやりながら一つの巨大なものを作っている様子を見て美大の卒業制作みたいだな、と感じた。何の金にもならないのに良いモノを作るんだという気持ちだけで皆が動いている。
完成した巨大パネルがバッと開いた時にああ今回でピーチは最後なんだな、と初めて感じた。
また、30過ぎから基本的にずっとなのだが、日常のストレスのせいか頻尿気味になってしまい本番中でも何度もトイレに行くほど困っていたのだが、何故か今回の公演中はそれが無かった。それどころか、身体に疲労は感じているのだが、ずっと元気だった。あんなにも不安を感じていたのに、本番に入ったらエネルギーに満ちているのが自分でも分かった。お客さんからもスタッフさんからも共演者からも、良いエネルギーの循環を得られていたのだと思う。自分だけの力では辿り着けなかったところに行かせてもらった。
良い人たちに囲まれているというのは自分の強みだ。それを自覚しながらやっていけたらと思う。
永遠に終わらない夢オチから抜け出して、次のステージに進む!と童貞たちが宣言して終演…というのがヤマダの夢だった!
という、ある意味ホラーでギャグで実にピーチらしい最後を迎えた今回。
最終公演にして最高の公演だった。何が夢で何を現実と思えば良いのかわからなくなるぐらい。不安がいっぱいだったスタートから増幅していった不安はいつの間にか雲散霧消して最高の盛り上がりを見せて終幕。夢のような動員数を叩き出したものの実態は赤字を誤魔化しただけ。新しいことはやらないと言いながら史上最大物量で舞台裏はてんやわんや。コンプラの規制は強まっていくばかりだがピーチのネタもカオスになっていくばかり。
何を現実的な価値として捉えればいいのかも難しいが、それでも『ピーチボーイズ』でPeachboysは最高だったという確かな手応えが残ったのが何よりの救いだ。
『ピーチボーイズ』は夢と現実を反転させるような内容だったけど、それは演劇それ自体が持つ力でもある。ピーチで笑って日常を生きる活力になるように、現実を笑い飛ばしたり現実の見方が変わったり現実の大切さを噛み締めたり、劇場から日常へ拡がっていく力を持つのが演劇だと思う。
ピーチボーイズを超える演劇を作る、というのが今後の目標になるんだろうか。
Peachboysに関わってくれた人たちがみんな幸せになりますように。
Peachboysメンバー KYOKYO
諸々の告知
展示やります。
『ババババパンクシー 役者のユル展 vol.4』 with NONworks
2024.5/24(金) 〜5/26(日) 13:00-19:00
会場 Bar BASE 東京都渋谷区松濤2-14-12シャンボール松濤106
☆1ドリンクオーダー制。
☆19:00以降はBASEは平常のbar営業となりますがパンクシーグッズの購入は可能です。
【ババババパンクシーとは?】
役者やりつつモノづくりしてる人って結構いるから集まって何かやったら楽しそうじゃね?という企画。 うちの母が提案してきて僕がそれに乗っかり始まったので今のところ僕の知り合いに声掛けてやってます。 今回は今までプロデューサーとして影で立ち回っていた母も参戦!
メンバー___
・黒森こけ。
(虚仮工房(コケコウボウ)の店主クロモリが集めた素材の
ハンドメイドアクセサリー)
https://twitter.com/coke_workshop
https://twitter.com/coke_kuromori
https://www.instagram.com/coke_workshop
・杉村こずえ
(スケッチ、その他)
・MOONCALF 久間健裕
(ネジマキトカゲ/マチルダアパルトマン/
コラージュアート)
https://twitter.com/mr_surrealiste
https://www.instagram.com/mr_mooncalf?igsh=MXN0OHNuZ3RzamwwaQ%3D%3D&utm_source=qr
・山川恭平 KYOKYO
(オリジナルキャラ『ゴリもっち』 役者似顔絵)
https://twitter.com/higekaaaaan?s=20&t=HWjL2rECER8GT7hZCYi6VA
https://twitter.com/gorimotch?s=20&t=HWjL2rECER8GT7hZCYi6VA
https://www.instagram.com/yamakawakyohei/?hl=ja
・吉田多希
(鬼の居ぬ間に 劇団員/
2種類のカメラで撮った好きなモノの写真)
https://twitter.com/taki_yoshida_y
https://www.instagram.com/taki_yoshida
・NONworks
(イラストグッズ、sewing小物など)
https://www.facebook.com/NONworks
そして次回出演情報!
Peachboysではなくなって初めて出演する舞台です。
僕は市東作品に出演します。
ひのでのあくび第一回公演
『あいあむ、あいわず! I am,I was...?』
脚本•演出 市東さやか/伊藤優
これ、心なんですか?
◆公演日程
2024年7月12日(金)19:00~
7月13日(土)14:00~/19:00~
7月14日(日)14:00~/19:00~
7月15日(月・祝)14:00~
※受付・開場は開演時間の30分前より
上演時間は1時間15分を予定(2演目上演/転換含む)
◆チケット料金
当日 4,500 円
前売 4,000 円
U-25(前売・当日ともに) 3,500円※枚数限定
高校生以下(前売・当日ともに) 2,000 円
※全席自由席・日時指定・税込み・当日清算(現金のみ)
◆チケット取り扱い
CoRichチケット!
https://ticket.corich.jp/apply/310968/003/
◆会場
下北沢 小劇場 楽園
〒155-0031 東京都世田谷区北沢2丁目10-18 藤和下北沢ハイタウンB棟 地下1階
京王井の頭線 下北沢駅 中央口改札より徒歩約3分
小田急線 下北沢駅 東口改札より徒歩約3分
◆上演作品
〈1本目〉
「ずっと家族でいられますように」
脚本•演出 市東さやか
出演
山崎ルキノ
山川恭平
宮福歩
伊藤優(音声出演)
【「ずっと家族でいられますように」あらすじ】
あいとケイタは仲睦まじい夫婦。
息子のユータと3人で、幸せに暮らしていた。
とりたてて大きな幸せはいらない。
大好きな家族と毎日一緒にいられたら、それがいちばんの幸せだ。
しかし、そんな家族の日々は、高齢ドライバーの暴走運転によって一瞬で崩壊してしまう。
夫を、そして父を失い悲しみに暮れるあいとユータ。
そんな2人の元に、何故かケイタが戻ってきてー
〈2本目〉
「救い主が死ぬときには」
脚本•演出 伊藤優
出演
アイマル•ハコ
髙橋紗綾
映像出演
前田彩水(少年cycle)
小倉愴(劇団すていちゅーん)
杉田一起(mandala、劇団しようよ)
【「救い主が死ぬときには」あらすじ】
地球温暖化が進み、天と地がひっくり返るくらいの自然現象が起き続けるこの地球のどこかで人類を別の星に送り込むために作られたロボットがいた。その名も”メイウン“。
メイウンは今日も生き残りたい人類たちのため働く。
ー地球防衛庁ジャポン救い隊。それは、世界の危機のなかこの国に住まわれている人類を救うために生まれた救い主たちであります。私たち地球防衛庁ジャポン救い隊は、皆様の盾となってー
※地震や津波を想起させる描写がございます。
◆スタッフ
脚本・演出 市東さやか 伊藤優
舞台監督 島居たかのり
照明 松竹理奈
音響 田中悠也
小道具 市東さやか 伊藤優
衣装 市東さやか 伊藤優
宣伝美術 尋
制作 市東さやか、伊藤優
◆脚本家プロフィール
市東さやか
SHITO SAYAKA
1992年兵庫県生まれ、鹿児島育ち。
元看護師。2020年より脚本家を目指して執筆を始め、2022年にフジテレビヤングシナリオ大賞の大賞を受賞。受賞作の「瑠璃も玻璃も照らせば光る」で脚本家デビュー。その後、テレビドラマ「真夏のシンデレラ」の脚本を手がける。
伊藤優
ITO YU
1995年大阪府生まれ、大阪育ち。
2022年にフジテレビヤングシナリオ大賞にて自作の「父を還す」で佳作を受賞し、同年4月にテレビドラマ「クライムファミリー」で脚本家デビュー。その後、NHK FMシアター「ハッピーバースデートゥミー!」にてラジオドラマの脚本を担当する。
◆ひのでのあくびについて
ひのでのあくびは、脚本家の市東さやかと伊藤優からなる演劇団体である。あくびをしながら夜中に脚本を書いている私たちが、いつか“ひので”という名の日の目を見られるように自らの描きたいものを大切にし、発表していく場である。
◆お問合せ・SNS
メール akubihinodeno@gmail.com
WEB https://akubihinodeno.wixsite.com/hinodenoakubi
X(旧Twitter)@hinodenoakubi
★未就学児童入場不可
★劇場は地下にございます(エレベーターはございません)
※車椅子でのご観劇をお考えの方は、<akubihinodeno@gmail.com>までご連絡くださいませ。
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