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ヨリトちんの読書感想文にっき!~第11回(全13回)【望郷特集】-帰りたい場所がある。-~

2024年、12月限定連載第11回目。

さてこれを見てくれている皆様は都会人だろうか、田舎モノだろうか。
生まれ育った場所の近くだろうか、または離れているだろうか。


僕は都会に住んでいるが基本的に自分の事を田舎モノだと思っている。


今回はそんな人へ特に刺さるのではないかという本特集。
例によって作者は敬称略、軽いネタバレがあるので注意されたし。


望郷

日本推理作家協会賞受賞! 都会から離れた島に生まれ、育った人々。 島を憎み、愛し、島を離れ、でも心は島にひきずられたまま―― 閉ざされた“世界"を舞台に、複雑な心模様を鮮やかに描く湊さんの連作短編(全六編)。 収録作「海の星」が日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞、選考委員の北村薫氏は、 「鮮やかな逆転がありながら、小説の効果のための意外性のため無理に組み立てられた物語ではない。筋の運びを支える魚料理などの扱いもいい。(中略)――ほとんど名人の技である」と絶賛。 自身も“島"で生きてきた湊さんが「自分にしか書けない物語を書いた」と言い切る会心作。島に生まれ育った私たちが抱える故郷への愛と憎しみ…屈折した心が生む六つの事件。


作者は瀬戸内海、廣島は因島(有名どころで言うとポルノグラフィティ)の出身らしく、名前こそ違うなれどその島を舞台にした物語である。
田舎から出た人、田舎に残る人…
田舎の話ではあるが、ほっこりする部分もあればまさかの展開で「えっそうなの!?」となるようなミステリが発生する非常に技ありの読み物。
しかし基本的に読んだ後にすがすがしい気持ちになる、田舎の人たちの優しい物語。その心や言葉には目頭が熱くなる。

僕自身もう亡くなってしまったが因島には親戚が住んでいて、何度も訪れた事があるので場面の状況がイメージしやすく、また僕自身が田舎から出た、出てしまった人間なので共感もしやすかった。


海の見える理髪店

直木賞受賞作 待望の文庫化!
人生に訪れる喪失と、ささやかな希望の光── 心に染みる儚く愛おしい家族の小説集。

店主の腕に惚れて、有名俳優や政財界の大物が通いつめたという伝説の理髪店。僕はある想いを胸に、予約をいれて海辺の店を訪れるが……「海の見える理髪店」。独自の美意識を押し付ける画家の母から逃れて十六年。弟に促され実家に戻った私が見た母は……「いつか来た道」。人生に訪れる喪失と向き合い、希望を見出す人々を描く全6編。父と息子、母と娘など、儚く愛おしい家族小説集。直木賞受賞作。


タイトルだけ見ても絶対これは当たりだろうと思いながら読んだ一作。
これも「望郷」と一緒で短編なのだが、本や活字が苦手という方でもぜひ頭のエピソード、海の見える理髪店だけでも読んでみてほしい。50ページくらいで終わる。
胸が暖かくなる親子の話が多い。
人は田舎や地方から出てしまう。今の日本を見ても地域は過疎化の一途をたどるばかりだ。でも帰れる場所がきちんとある事、どうか忘れないでと思わせられる。


母の待つ里

40年ぶりにふるさとに帰ると――。感動の傑作長編!
「きたが、きたが、けえってきたが」

40年ぶりに帰ってきたふるさとには、年老いた母が待っていた――。
大手食品会社社長として孤独を感じている松永徹。退職と同時に妻から離婚された室田精一。親を看取ったばかりのベテラン女医・古賀夏生。還暦前後の悩みを抱えた3人が、懐かしい山里の家で不思議な一夜を過ごすと……。
家族とは、そしてふるさととは? 
すべての人に贈る、感涙必至の傑作長編。

ふるさとを想う人、ふるさとに帰れぬ人、ふるさとのない人。ふるさとをあなたに――。


最後に紹介するのはこちら。
あの鉄道員(ぽっぽや)でも有名な浅田次郎の作品。
鉄道員も浅田次郎の名前も知っていたが、浅田次郎の本はこれが初めて。
というよりも今年読んだ本はほぼ全てが初めての著者ばかりであるが、これもタイトルからして当たりだろうと最初から思っていた。
どんな本かはもう上に書いてある通りだ。


僕は読みながらばっちゃの家を思い出して大号泣した。
そしていつまでもばっちゃが元気でいてほしいと思った。
あと煮物がすごい食べたくなった。
お正月はいつもいつも親戚みんなで集まっていて大騒ぎだったのに、いつしか一人二人と集まらなくなった。僕も東京という都会に出て集まらなくなった。
あの頃は優しく楽しく怖いものもあまりなく、全てが希望と光に満ちていた。そんな日々を思って泣いた。


上にも書いているようにこれは主に3人の主人公でもある登場人物が最後に一堂に会する話でもあるのだが、その主人公の中の一人女医の母親が亡くなるシーンはじっちゃが亡くなった瞬間を思い出させてまた泣いた。


そして最後のシーンで意外な人物が3人と会話する時その言葉にまた泣いた。その人物は4人目の主人公でもあった。
文章だけでこんなに泣けるものかと思うくらい泣いてしまった。
今年は僕の事でも精一杯で、しかも収入も半年なかったので今は不可能であるけれど、来年はまたあの時のようにばっちゃの家でお正月にみんなで集まれたらと思った。

ばっちゃのお米で作ったお雑煮、ばっちゃの年越しそば(そばも自分でうつ)、ばっちゃのおせち、ばっちゃのおはぎ、ばっちゃの煮物が食べたくなった。
特に田舎から都会に出た人には読んでほしい。共感が出来ると思う。
その田舎が田舎であればあるほど。


これらを読んで18の時の自分を思い出した。
僕は高校を卒業したら絶対こんな田舎は出てやると思っていた。
という野心というよりも、もうそれが自然だった。
田舎に残る選択肢は絶対になく、とにかく出て行くだけを考えて進路もいつの間にか決めていた。
しかし親は大反対だった。
ウチの本家は農家もやっていて後継ぎなどの問題も一応ある。
僕はすぐにでも東京に出たかったのだがそれは許されず、またじゃあ僕は高校時代から自分でお金を稼いで勝手に出て行ってやるよ、なんてほどの気概もなくダラダラと親の金で携帯電話の電波も入らないような山間部(今はちょっと入るようになった)から廣島の市内の方に出た甘ちゃんだ。
東京に出るはもちろん自分で努力したがその時も大反対された。
でも親が厳しかったわけではない、じっちゃもばっちゃにも僕は特に可愛がられたというような話も聞く。


しかし昔から僕は都会の騒がしい空気が好きだった。
母親が5人姉妹なのだが、田舎に嫁いだのは母親だけで他の人たちはみんな市内の方で、お正月に集まる時はそれだけでわくわくしていた。
柚木家は12/31~1/2が父方の本家、1/2の夜~1/4辺りが母方の本家で過ごすのが毎年のルーティンだったのである。
併せると50人以上の親戚がいつも集っていた。
だからお年玉で買い物するのもお年玉が全部揃った1/3、都会の方だった。


今でもあの田舎に帰る(住む)つもりは全くない。
田舎が良いなとは思う。帰れる場所があるのはありがたいなと思う。学生の時の友達や親友もいる。
だけどあの田舎でのんびりと朽ち果てていくような生き方は出来ないなと思っている。
もし僕が過去に帰れるとしたら、今度は絶対に高校には行かず中学を卒業した時点で働いてお金を貯めてすぐに東京に出て音楽をするだろう。
それくらい僕は都会が好きだ。


でもそれは田舎あっての僕であり、田舎という帰れる場所があるからこそそう思うのかもしれないと思った。
今回の記事に上げた本達を読んで。


そんな僕には親にも10年以上もカミングアウト出来ていないが、地元と母親にちなんだものを刺青に入れている。
田舎で育った僕はいつまでも都会が好きで都会に憧れる田舎モノであり、田舎が生んでくれて今の自分がいるのである。
その事は決して忘れないために。
そして田舎に帰るたびにじっちゃやばっちゃ、親が与えてくれた愛情を忘れないために。




今回もお読みくださりありがとうございました。


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柚木 依和(ユウキ ヨリト) / 極東アイセキ計画。
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