基準価額の計算(その2)
欧米では、ファンドから業務を委託されたアドミニストレーターが単独で基準価額の計算を行っています。
日本のように、運用会社が基準価額を計算することも、二社が並行して計算することもありません。
運用会社には自らの運用成果を良く見せたいというインセンティブがありますので、その運用会社が基準価額の計算を行うというのは、一種の利益相反構造をはらんでいます。
そのため受託銀行も並行して基準価額の計算を行い正確性を担保してきたというのが一般的な説明ですが、これらは単なる実務慣行にすぎず、不明瞭さを否めません。
法令には、基準価額の計算義務者に関する明示の規定がありません。
平成30年9月18日に公表された報告書では、
「運用会社は、投信法に基づき基準価額の算定に係る全体的な責任を負う・・・受託銀行は、基準価額を自ら確定する義務を一義的に負うわけではないが、信託法に基づく計算を通じ一種の牽制機能を果たしてきた・・・」
などと、なんとももったいぶった言い回しでまとめられています。
これは、法令上明示の規定がないことに加え、運用会社と受託銀行の双方の立場に配慮し、慎重に言葉を選んだからであると推察されます。
運用会社も受託銀行も、自らに基準価額の計算義務があると認めたくないのです。
それは、計算業務にかかるコスト負担に加えて、基準価額に誤りがあった場合の責任問題につながるからです。
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