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受託会社の承諾書(投信法施行規則6条2項2号)

前稿の末尾で、投資信託約款の内容の届出書には2つの添付書類があり、その1つとして投資信託約款の案があることに触れました(投信法施行規則6条2項1号)。

本稿では、もう1つの添付書類である受託会社の承諾書(同項2号)にまつわる話を書いていきたいと思います。

マニアックな話になってきていますが、私、大丈夫でしょうか?


まず、受託会社の承諾書が添付書類となっている趣旨について説明します。

<投信法>
(投資信託契約の締結)
第4条     金融商品取引業者は、投資信託契約を締結しようとするときは、あらかじめ、当該投資信託契約に係る・・・投資信託約款の内容を・・・届け出なければならない。

投信法4条1項で、投資信託約款の内容を「あらかじめ」届け出なければならないとされています。

ここでいう「あらかじめ」とは、投資信託契約の締結前という意味です。

投資信託契約の締結前ということは、その時点では、まだ受託会社は当該投資信託の受託者になっていません。

しかし、届出書を提出した後で受託会社が投資信託契約の締結を拒否すると当該投資信託が成立しなくなってしまいますので、かかる事態を防止するため、受託会社の承諾書を添付するよう求められているものと考えられます。

法令上、この承諾書に様式の定めはなく、また「何に対する承諾か」の明示もありません。
もっとも、上記の趣旨に照らし、実務上は「当該投資信託の受託者となることに対する承諾」として承諾書が作成されています。


次に、受託会社の承諾の相手方について説明します。

上記のとおり、この承諾は「当該投資信託の受託者となることに対する承諾」です。

よって、この承諾の相手方は、投資信託契約の相手方である投資信託委託会社となります。

受託会社の承諾は投資信託委託会社に対する意思表示としてなされ、承諾書は投資信託委託会社を宛先として作成されます。


最後に、このような承諾書を添付書類として提出することの不都合について説明します。

上記のとおり、この承諾書は投資信託委託会社を宛先として作成されます。
受託会社の実印が押捺され、また印紙税法上の課税文書に該当するため200円の印紙が貼付されます。

これを添付書類として提出してしまうと、投資信託委託会社の手元には原本が残りません。

自己を名宛人とする文書について提出を強制され、手元に残らないというのは、文書管理上も問題があり、違和感のあるところです。

添付書類として「受託会社の承諾書の写し」と規定されていればコピーを提出できるので問題ありませんが、「受託会社の承諾書」と規定されているものですから、原本の提出が必要です(投信法施行規則6条2項2号)。
実際、金融庁は、この承諾書は原本の提出が必要であり、コピーの提出は認められないとの見解を示しています。

そのため、多くの投資信託委託会社は、あらかじめコピーをとり、原本は添付書類として提出して、コピーを手元に残しています。
しかし、これだとコピーしか手元に残りませんので、原本を2通作成して1通を提出し、もう1通を手元に残す投資信託委託会社もあるそうです。この場合、2通分の印紙が必要になり、苦肉の策の感が否めません。

届出書の添付書類について定めた投信法施行規則6条2項2号は、「受託会社の承諾書」ではなく「受託会社の承諾書の写し」であるべきと考えています。

次回の規則改正のタイミングで当該箇所も改正していただければ、と思っています。




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