怪談10夜#⑧「ビワの実」

 大学で日本各地の言い伝えについて研究している。そこで見つけた話。

 今でいう、大阪市のはじっこにあった村に、隣り合う形で、二軒の長者の家があった。戦友だった武士二人が、村を興したそうだ。名前を仮に、「東」と「南」としておく。

 東家と南家は、争うこともなく互いに助け合い、時に競い合って、よく村を治めてきた。しかしある時、東家の長男が、ちょっとした喧嘩が原因で、南家の子供に右目を潰され、その傷がもとで亡くなるという事件が起った。

  長男ということもあったのだろう。東家は怒り、その矛先はまず、両家の真ん中に植わっていたビワの木に向けられた。これまでは仲良く分け合っていたビワの実の所有権が争われ、やがて、両家は交流をやめ、断絶した。そして、跡取りのできなかった東家は離散して、その土地を離れた。後には南家だけが村を治めることになった。

 東家が去って一年過ぎたある日。ビワの実を収穫した南家の面々は、恐怖におののいた。

 ビワの実の中に、目玉そっくりのタネが入っていたのである。

 何年経っても、ビワの木は、目玉そっくりのタネを宿した実をつけた。気味悪がった南家の人間が、木そのものを切り倒そうとしたが、事故や病気で次々に亡くなっていってしまう。やがて、南家も東家と同じように没落し、離散してしまった。

 今でもそこに、そのビワの木があるという。 

 
…今年中に怪談、終わるかしら。どうかしら。

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