題詠『ガム』
トンネルの向こうの村はみなガムを飲む 村長は三男が継ぐ
ガムを買えとしか言わない歯科に行くここより遠い歯科はもうない
こうしよう。粒ガムは生の象徴で板ガムは死の象徴、いいね
粒ガムを植えて出た芽が伸びるのを毎日観察してきた小二
粒ガムを潰して板にするわけよもうやった人がいようがいまいが
板ガムを丸めて粒にしたんだよこうだよきみがいないと僕は
板ガムをそうじゃなくさせる過程を私はずっと見ることがない
この海に吐き出していけいつまでもない暇を噛み潰してないで
砕け散るガムだったものそして気づく常軌を逸した咬合力に
おまえとは経済力が違うからおれに気安くガムをねだるな
サッカーをなさるんですかと距離感を間違った店員に聞かれる
激口臭人と思われるなぜならガムが大好物の奴はいないから
クチャクチャとさせたあと吐き捨てたのが固結びの安全ピンだとは
歯につかないガムが売っててそうか歯につくのだガムは これは詩にしよう
ガムを詰めた容器に腕を突っ込んで欲張って抜けない人、いない
『ガムライズ』相手をガムにする誰もしたくなくって使わなかった
ゲーミングガムがあったとして口を閉じて噛むからなくてよかった
「ガム食べる?」以外でガムを食べたことなくて世帯収入は八桁
ガムを飲む人っているじゃないあれは本当にどうしてかわからない
「今朝言ってた『ガム魔人にころされる』ってなんのこと?」もう答えられない
動画広告を見ている時間にガムを噛む何にも影響してないと思う
きみにもらったガムすらとってある僕が死んだあとのことなんて知らない
「うどんガム。在るか賭けるか」賭けるともある方に通帳と印鑑
きみからもらったガムすらとってある僕が死んだら世界中に撒かれる
群像短歌部に投稿した短歌です。
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