音の匂い
去年。
夕方、町を走っていたら音がしてきたのだ。
音を頼りに行ってみたら、津島神社にたどり着いたのだった。
太鼓から離れて、ずっと祭りからも離れていた。
でも、やっぱり血が騒ぐのだ。血が忘れていない。
この耳に入ってくる音は、ほとんど記憶の断片から出来ていて。
不思議なくらい、聞き逃さない。
'音の匂い'というものがあるのなら、そういう意味でわたしは相当鼻が効く。
時代も場所も飛び越えて、そんな匂いに引き寄せれているとき、原初のじぶんと会っているような気持ちになる。
それを至福と呼ぶのかもしれない。
いよいよ、祭りが始まった。