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本と荒野

ここ数日、思う存分に本を読んでいる。
読んでいるのは、ファンタジーに、エッセイに、民芸の教科書に、詩集など、様々だ。
最近は、数冊の本を並行して読めるようになってきた。とても嬉しい。
読み疲れて眠り、また起きては読み続けて、また眠る。
まるで子供の頃の夏休みが帰って来たみたいだ。

いつからか、本ばかり読んでると罪悪感を感じるようになっていたなと、
最近気づいた。
学生時代、試験勉強の合間にわざわざ長編小説なんか読んで、現実逃避していたのを思い出す。
社会人になってからも、働いていない時間は、すべてゼロと同じ。
お金にならないことには意味がない。
好きなことを優先したり、やらなくちゃならないことを後回しにするのは
子供のすること。そんな風に思っていた。

でも、歳を重ねて来て思うのだ。
今やらなくちゃならないことの向こう側には、いつも、恐ろしいまでの自由が広がっているということを。
なんでもやっていいんだよと、言われることの恐ろしさを。
そこには、先生も上司も友達も親もいない。
自分しか、存在しない。

お金のせいにしたり、家族のせいにしたり、学校や会社の忙しさのせいに出来ているうちは、まだまだ言い訳がきく。逃げ道もある。

でも、それを超えてまでやり通したいことを見つけたら、
本当に、ほんとうに、ひとりぽっちだ。

本を読んでいると、よく、そのひとりぽっちという感覚が沁みてくる。
でも、淋しくないし、すごく満たされている。
荒野に投げ出されて、どこか清々している自分がいる。
無限の自由をもっている自分を、受け入れられる。

一冊の本を読み終わって閉じる時、現実を歩き続けているこの自分の足が、またちょっと強くなった感じがする。
そういえば子供の頃もそうだったなぁと、ふと思った。

そして、いつしか自分も書きたいと思って、私はいよいよ、ひとりぽっちになった。

ひとりぽっちは悪くない。
むしろ、ふと通り過ぎる人々のぬくもりを感じることが多くなった。
歳をとったもんだと思うけれど、それも悪くない。

今日も、本に助けられて、人の言葉に助けられて、荒野を生きている。

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