これを読むまでは、死ねない。
子どもの頃から抱いている夢がある。
小説家になりたい。
ただ、実はその理由についてどうもしっくりきていなかった。
「私が小説にたくさん感情を動かされてきた。泣いたり、笑ったり、怒ったり。だから、私も誰かの感情を動かす物語が描きたい」
この言葉も決して嘘ではない。
ただ、どこか。
まわりくどくて、ありきたりな言葉であり、誰かの借り物の言葉だった。
本当の答えはとてもシンプルだった。
今朝、来年の手帳を前にして、20年先の自分について考えていた時だった。
「これを読むまでは死ねない」
そんな言葉がふと、頭の中に浮かんできた。
「あ、これだな」
思いついた瞬間、とてもとてもストンと腑に落ちた。
これを読むまでは、死ねない。
この続きを読むまでは、死ねない。
辛い時。
悲しい時。
苦しい時。
何度もそう思ってきたんだった。
そうだった。
そうだった。
そうだった。
部活仲間から空気のように扱われた中学の時も。
やりたいことがわからずに漫然と過ごした大学の時も。
終電帰りが続いて、生きている意味がわからなくなった会社員の時も。
常に私を死ではなく生に、現実に引き留めてくれたのは、
「これを読むまでは、死ねない」
「この続きを読むまでは、死ねない」
と強烈に思わせてくれる物語たちだった。
どんなに辛くても、
この小説の続きが発売されるまでは、
このキャラの行く末を見届けるまでは、
この漫画がどんな結末を迎えるか知るまでは、死ねない。
と切実に思っていた。
だから、
私も誰かを救う物語を生み出したいと思ったのだ。
毎日が辛くても。苦しくても。つまらなくても。
私の書いた物語が誰かひとりの
「これを読むまでは死ねない本」
になったら、これほどの幸せはない。
今、お腹の底が熱くなってきて、温かい涙もあふれてきているから、きっとこれが正解なんだろう。
唐突に思い出してびっくりした。
本当にびっくりした。
あーびっくりした。
私は常々、”面白いものが書きたいけど書けない”と思いながら、面白いの定義が曖昧だった。
「面白い=もっと続きが見たくなるもの」
と定義された今、とても清々しい気持ちになっている。
この気持ちを思い出した今では、なんで今まで思い出せなかったのかが、さっぱりわからない。
私の原点なんだと思う。
私は生まれて初めて書いた小説でデビューする天才ではないし、10代で文学賞を受賞する鬼才でもないし、その辺にいる十把一絡の才能しか持ち合わせていない。
だからコツコツとやるしかない。
そして、いつになるかはわからないけれど。
誰かが
「これを読むまでは、死ねない」
と思う小説が書いてみたい。
今までより鮮明に。切実に。狂おしく。
そんな風に思った。
報告でした。
#昨日兄からおまえ直木賞とるんやろと言われた
#私が受賞したら直木賞の兄って名刺にいれたいらしい
#おまえそんな名刺どこで使うんだよw
〜〜〜〜
これは、2022年に私がFacebookに投稿した記事です。
私の記事の中では、今までにないくらいコメントがたくさんつきました。
「いつもよりもはっきり力強い声で脳内再生されたよ」
「読んでて、胸にグッときた。すでに、人の心を動かす文章書いてるやん」
「心と繋がった言葉はほんと力強くて優しいね」
など、嬉しいお言葉をたくさんいただきました。
おそらく、多くのリアクションをいただけた理由は、この投稿が
「なぜ、私が今の文章を書くという仕事を選んだのか?」
自分の原点となる理由だったからだと思います。
ボールを蹴ることでも、ケーキを作ることでも、英語を教えることでもなく。
その他、星の数ほどもある仕事の中から「物書き」の仕事を選んだ理由。
私の心の底に眠っていた、純粋な思いだったからこそ、人の感情を動かすことができた。
だからもし、あなたが今の仕事を続けていくのか?このままでいいのか?と迷っているのだとしたら。
「なぜ、私は今の仕事や活動を選んだのだろう?」
「なぜ、星の数ほど仕事がある中でこの仕事をやっているのだろう?」
「なぜ、他の誰でもない私がこの活動をしているのだろう?」
こんな質問を自分に投げかけてみてはいかがでしょうか。
あなたの原点である理由は、なかなかすぐには出てこないかもしれません。
実際に私もライターとしての活動をはじめて3年目に、この理由を思い出しましたから。
特に、自分の感情や想いを抑えることに慣れている人は、なかなか自分の本当の想いに気づけないかもしれません。
ただ、諦めることなく自分と向き合い、やりたいと思った活動を続けていけば。
いつかフッと。海の底から泡がぽっかりと浮かび上がるように。
あなたの原点となる想いが、湧き出てくるのかもしれません。
それは、きっと、あなたがあなたらしく生きるための道標になるはずですよ。
吉澤 香子
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