2年前、ゼロから教え始めた子たちが、随分形になってきた。
教科書が一応基礎になっているものの、それだけでは足りないので、自家製のプリントを配り、それを基に練習する。
が、これも単なる資料であるには違いなく、生徒たちの練習は、専らアウトプットとなっている。
例えば、一人の生徒が、「今日は忙しかったです。」と言ったとしよう。
そしたら、周りにいる他の生徒は、3秒以内に、「それは大変ですねぇ。」「大丈夫ですか?」「私もです。」などと、リアクションを返さなければならない。
もし相手の言うことがわからなければ、「もう一度お願いします」とか、「xxは、英語で何ですか?」と周りに質問するのもあり。
コメントを受けた人は、すぐまた別の人に振る。「あなたは?」
振られた人は即座に言う。「今日、タコスを食べました。おいしかったです。」
と、再び周りの生徒は、リアクションする。「羨ましいです!」「良かったですねぇ。」「どこでたべましたか?」等々。
こうして会話は永遠に続く・・はずなのだが、もちろん、途中で詰まってシーンとなる。そうしたら、会話を詰まらせた人が罰ゲーム!
こうして、ワイワイ言いながらも、緊迫感の中、彼らは頭を猛回転させて言葉を探す。要は、言葉のキャッチボールを繰り返すことで、コミュニケーションを続ける訓練なのだ。
別にたくさん話せなくても、リアクションの仕方さえわかれば、人とコミュニケーションするのは可能であり、単語力に自信がなかったり、話すのが苦手なら、聞き役に徹すれば良いのだ。それに、大抵人は、自分のことを話したがるもの。
だから、良い聞き手になれるのは、とても大切なことなのだ。コツは簡単。
まずは相手の言うことに「そうですか」と相槌を打つ。あ、心からね。そして、相手が何か嬉しそうに盛り上がってきたら、「すごいですね!」とか、「良かったですね!」と合いの手を入れ、悲しそうであれば、少しトーンを落として「そうですか・・」と言葉を返す。この繰り返し。
自分のレベルが高くないことは、すぐに見破られる。けれど、心から、言葉を返していれば、相手は話を聞いてくれることに気を良くし、”こいつの日本語はまだまだだが、仕方ない。面倒見てやるか!”と、子分にしてもらえる可能性だって出てくるというものだ。
そして仲良くなったら、少しずつ色んなことを、教えて貰えば良い。
うまく話すことも大切だけど、相手の話をよく聞き、人に可愛がってもらえるような自分になるように、と、生徒には常々話している。
さて、そんな”追い詰め教育”が功をなした(?)のか、子供達の上達ぶりが著しく、教師冥利に尽きる今日この頃。
教科書的な質問も良いが、どうせ話すなら、日常生活で使える、実用的な言葉を学びたい。
そんな今週のお題目は、「(だ)から・・」
教科書:「毎朝、新聞を読みますか?」「いいえ、時間がありませんから、読みません」
つまらない・・・つまらな過ぎる!!!
こんなので、生徒は絶対にこの構文が頭に入らないだろう。語学習得の鍵は、赤っ恥をかくか、追い詰められるか、パンチの効いたインパクトを持つか、この3つに一つしかない。
そこで私は生徒に言った。
「あのね、日本のコンペティションにapply(応募)します。一番の人は10万円もらえます。10万円は2万ペソです!」「おぉぉぉーーー!」
湧きに湧く生徒たち。
「面白い人が10万円もらえます。がんばって書いてください!」
真剣に取り組む生徒たち。そして5分後に出来たのが、下記の例文。皆、意気揚々と読み上げた。
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生徒A:「となりの犬がうるさいから、月におくりました。」
生徒B:「かのじょはかわいいから、花をあげたいです。」
生徒C:「セルヒオはカッコいいから、うらやましいです。」
生徒D:「わたしはおたくだから、シャワーをあびません。」
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どうですか?
手前味噌かもしれないけれど、なかなかセンスがあるように思えるのですが、如何でしょう?!
ちなみに生徒Aは、学校では浮き気味らしいのだけど、日本語のセンスは秀逸。そして、隣の犬が、心の底から嫌いらしい。(ちなみに私は、犬と一緒にうちの隣人も送ってくれと懇願した)
日本でブームが来る以前に、鬼滅の刃の素晴らしさを、教えてくれたアニメ好きの女生徒Bは、別の女の子が好きらしく、ゲームマニアの生徒Cは、美男子のセルヒオを密かに(公に?)好きらしい。
生徒Dは、読んで字のごとく、シュールで味があり、要は皆、それぞれに個性的で、私は彼らの将来を、今から、とても楽しみにしているのだ。
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と言う訳で、10万円懸賞付きの、日本語構文コンテストの情報をお持ちの方がいらっしゃいましたら、どなたか、是非にお願い致します。今更、架空のコンテストであるなどと、とても恐ろしくて、言い出せません。
さ、クリスマスも近いし、来月はサンタの格好でもして、クラスに臨むとするか!
実は、一番クラスを楽しんでいるのは、他ならぬ、自分だったりして。
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「今週は、頑張りましたから、自分にビールをプレゼントします。」(生徒風)