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藤田真央さんのヴェルビエ音楽祭 L'intégrale des sonates de Mozart - Mao Fujita, piano/

7月の最終日、ますます悪化するコロナ感染拡大に加えて、暑さやゲリラ豪雨に見舞われる東京2021。現在開催中のオリンピックには全く興味がないので未だ1ゲームも見ることなく、スイスで開かれている夏の音楽祭「ヴェルビエ・フェスティバル」の動画をzapping する日々を過ごしています。

ヴェルビエフェスティバルの創始者が一押しということで、一際注目を集めていた藤田真央さんのモーツァルト・ピアノソナタ全曲演奏会。
ヴェルビエはフランス語圏で、かつてレッスンのために通っていたジュネーヴの近くということもあり、本当なら現地で一回ぐらいは聴きたかったところ。
ですが、この様な情勢では残念ながら叶わず日本でライブ配信を聴くこととなりました。きのう最終回を迎えたリサイタルで見事に全ソナタを弾き遂げ、22歳にしてモーツァルトの全ピアノソナタを5回に渡るリサイタルで演奏するという偉業を達成。連日に渡り現地で素晴らしいパフォーマンスが続いている様子を、感動したり鳥肌が立ったりしながら没頭して聴きました。
真央さんのモーツァルトは、フレーズに呼吸が通い、音には色だけではなく温度があり、その場でモーツァルトの音楽に生命が吹き込まれているかのように、生々しい。空気のように軽やかな、独特のタッチから引き出される多彩なニュアンスは、ヴェルビエ教会のピアノでも際立っているようでした。

 モーツァルトは15, 6歳でオペラを書き始めたといいますから、その年齢にしてすでに、人を見て人物像を捉えたりキャラクターを作り上げることが得意だったと言えますね。そのモーツァルトによって描き出される個性的な人物達が、真央さんの弾くソナタに登場すると美しいメロディーを時に雄弁に、時にお茶目に、時に物悲しく歌い上げ、聴く方はどんどん惹きつけられていきます。
書法にこだわった作品では対位旋律を自由に操り、普通は見逃してしまうようなモチーフや休符に気を留め、意味を持たせ、明確に音楽を運んでいく技に「こういう曲だったのか!」と、発見があるのも新鮮でした。
最終公演で最後のソナタK.576を弾き終わった姿は、5日に渡って一曲一曲全身全霊で弾くうちに、気がついたら「あれ、最後の音に辿り着いちゃったよ」とでもいうような少し戯(おど)けた表情。そして立ち上がると、会場は拍手大喝采に包まれていました。

 今回シリーズ全てを聞いたところでパッと思いつくところで主観的なオススメは、最終回第5回の全曲(個人的には特に311)と、第3回の331、280、533、第2回の332 など。第4回のアンコールで弾いたショパンのノクターンも素晴らしかった!

2023年以降の海外での演奏会のライブ配信情報を中心に下記ページで更新しています↓


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