三日月の残像
三日月が水面に映って
私に刺さるナイフになる
肌をなぞる刃物の切っ先
ナイフは氷で冷やされたように冷たい
湖の側には建物が建っている
白亜の城その壁に
フェルメールの絵が映写機を通して
チラチラと光を受けている
嘘と本当の間で人々はもはや何も分からなくなって
感情が全てを支配しているから
答えなんて人それぞれ
それが分かるから私は沈黙する
三日月よ
教えておくれ
漆黒に濡れたまつ毛さえ
罪なのだということを
はじめましての挨拶
さようならの涙
こんにちはと言っても
答えはずっと出ないまま
混沌こそが私の名前
三日月に照らされた
ひとつの生ける屍