恋がうまくいかない人のナッジ
「ナッジ」という言葉をご存知でしょうか？
行動経済学の分野で注目されている「そっと後押しする」技術のこと。
私たちの行動や選択に、気づかないうちに影響を与えているこの「ナッジ」。
じつは恋愛にも応用できるかもしれません。
今回は、ナッジ研究を趣味に持つ広告代理店勤務の奈地さんと、婚活を始めようとしている会社員の森本さんの会話を通じて、ナッジと恋愛の意外な関係性をのぞいてみましょう。
奈地さん「森本さん、今日は新規案件の話、楽しみにしてきました」
森本さん「あ、はい…その前に、相談があって…」
奈地さん「ええ、なんでしょう？」
森本さん「私、婚活を始めようと思うんです」
奈地さん「えっ！森本さんが？珍しいですね。いつも『仕事優先だから』っておっしゃってたけど？」
森本さん「はい…でも最近、同期が続々と結婚していって。このままでいいのかなって」
奈地さん「ああ、それ、わかります。私も結婚する前はそんな感じでした。周りがみんな結婚していって、焦りますよね」
森本さん「奈地さんは、どうやって今の方と…？」
奈地さん「あ、それが面白いんですよ。今から思えば、私、無意識のうちにナッジを使ってたんです」
森本さん「ナッジ？この前も少しお話されてましたよね。行動経済学の…」
奈地さん「そうそう！人々の選択を、強制ではなく、そっと後押しする仕組みのことです。恋愛にもナッジの考え方が使えるんです。私、将来はナッジの協会を作りたいと思ってるくらい、この考え方に惚れ込んでるんです」
森本さん「へえ、協会ですか。面白そうですね。具体的にはどんなナッジがあるんですか？」
奈地さん「例えば、ザイアンス効果というのがあります。単純接触効果とも言いますが、要するに、何度も会う相手に好意を持ちやすくなる、という心理効果です。だから婚活するなら、同じ人と何度も自然に会える環境を作るのがいいんです。例えば習い事とか。私の場合は、たまたま通ってたヨガ教室で夫と…あ、すみません、また長くなっちゃいました」
森本さん「いえいえ、続けてください」
奈地さん「それから、認知不協和の解消という現象も使えます。好きな人のことを誰かに話すと、自分の気持ちがより確かなものになっていくんです。私も、友達に『いい人に出会った』って話すたびに、どんどん好きになっていって…あ、また長話になりそう」
森本さん「御馳走さま。でも面白いです。マーケティングでも似たような考え方ありますよね」
奈地さん「そうなんです！それから錯覚理論というのもあって、これは自分の見え方と他人からの見え方の違いを利用するものなんです。『自分には魅力がない』って思い込んでる人も、実は周りからは全然違う風に見えてたりする。これ、森本さんにも当てはまるかもしれません」
森本さん「え？」
奈地さん「だって、森本さんって仕事ができて、頭の回転も速くて、見た目も素敵なのに、なんだか自信なさそうにしてることありますよね。きっと自己評価が低すぎるんです。私からはそう見えます。もったいない。自分では気づいていない自分の良さってあるんですよ。…ごめんなさい、また話が長くなっちゃいました」
森本さん「いえ、すごく参考になります。自己評価かぁ…。奈地さんの協会、実現したら私も入会したいな」
奈地さん「本当ですか！嬉しい。まだ漠然としたアイデアで、どう進めていいかわからないんですけどね」
森本さん「私の職場でも最近ナッジの話が出たりします。熱心にナッジの本をたくさん読んでいる人もいて…もし良ければ、その人、紹介しましょうか？」
奈地さん「えっ、いいんですか？でもその前に今日の本題の新規案件の話を…」
森本さん「あ、そうでした！でも、その前にもう少しナッジの話を聞かせてもらえませんか？」
奈地さん「もちろん！ナッジには他にも面白い例がたくさんあって…あ、でも長話は控えめにしないと」
森本さん「いえ、今日は時間ありますから。全部聞かせてください」
奈地さん「じゃあ、遠慮なく（笑）。ナッジには他にもトム・ソーヤー効果というのがあって…」
森本さん「あ、それ知ってます！塀のペンキ塗りの話ですよね？」
奈地さん「そうです！さすが森本さん。こういう話わかる人、なかなかいないんですよ。私、この話大好きで…」
（奈地さんの話は終わらないので、本稿はここで止めておきます）
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