謝り方のナッジ
謝罪の場面は、誰にとっても気まずいもの。
けれども、ちょっとした工夫でその謝罪がより効果的になるとしたら?
ナッジという心理学的なアプローチを活用することで、謝罪をより相手に寄り添った形に変えることができます。
今回も、心理学が趣味でナッジの研究をしている広告代理店勤務の奈地さんと、占い好きな中学生の姪・理沙さんの会話を通じて、謝り方のナッジについて学んでみましょう。
理沙さんが学校で抱えた悩みをきっかけに、2人の会話は謝罪のコツとその心理的な背景へと展開します。
人との関係をより良くするためのナッジのヒントを、どうぞ楽しんでご覧ください。
奈地さん「理沙ちゃん、元気ないじゃない。どうしたの?今日はモカもそわそわしてたのに」
理沙さん「うん、元気ないっていうか、ちょっとモヤってるんだよね」
奈地さん「モヤってる?どうして?」
理沙さん「昨日、クラスの友達にちょっと言いすぎちゃって…謝ったんだけど、なんか微妙な感じで」
奈地さん「言いすぎちゃった?あら、それは理沙ちゃんらしくないわね。どんなふうに謝ったの?」
理沙さん「うーん、素直に『ごめん』って言ったんだけど、その後はどうしても気まずい空気が消えなくて。友達も『うん』って返してくれたけど、なんか心の距離があるって感じで」
奈地さん「なるほど、謝るのって意外と難しいわよね。言葉だけじゃ伝わらないことも多いから」
理沙さん「え、そうなの?謝るのにコツがあるってこと?」
奈地さん「そうなの。実はね、謝るときにもナッジが使えるのよ。心理的な仕掛けで、相手の気持ちを少しでも和らげる工夫がね」
理沙さん「ナッジって…あの、人を優しく誘導するやつだよね?でも謝罪にナッジってどうやって?」
奈地さん「例えば、謝るときに『負担を軽くする言葉』を使うの。相手に罪悪感を与えるんじゃなくて、逆に気持ちが軽くなるような工夫をするのよ」
理沙さん「えー、例えばどんな言葉?」
奈地さん「例えば『心配かけてごめんね』とか『嫌な気持ちにさせちゃって、本当に申し訳ない』って言うと、相手は自分の感情を大事にされていると感じやすくなるのよ」
理沙さん「なるほど。私、ただ『ごめん』って言っただけだったな…。それだと誠意が伝わらないかもね」
奈地さん「そうそう。謝罪って、ただの言葉じゃなくて、相手がどう受け取るかが大事なの」
理沙さん「じゃあ、それで相手の気持ちが変わるの?」
奈地さん「変わる可能性は高いわ。心理学では『フレーミング効果』っていうんだけど、同じ内容でも伝え方次第で相手の受け取り方が全然違うの」
理沙さん「フレーミング効果か…。じゃあ、他にも何かコツはある?」
奈地さん「あるわよ。例えば、謝るときに小さな行動を提案するといいの。『今度お茶しよう』とか、『一緒に何か楽しいことしない?』って言うと、和解のプロセスがスムーズになるの」
理沙さん「へえ!それって謝罪をただの言葉じゃなくて、具体的なアクションに変えるってこと?」
奈地さん「そう!行動を提案することで、相手の心に『これで仲直りできるかも』という安心感が生まれるのよ。心理学的にも相手との距離を縮める効果があるわ」
理沙さん「でもさ、そういう提案って唐突じゃない?変に思われたりしないかな?」
奈地さん「自然に言うのがポイントね。あくまで相手を思いやって、楽しいことを提案するのが大切よ。謝罪はね、言葉だけじゃなくて、その後の行動で示すことも大事だから」
理沙さん「ふむふむ…。でも、私が謝るときにそんなふうにできるかな。練習が必要そう」
奈地さん「大丈夫、慣れれば自然にできるようになるわよ。最初はぎこちなくても、相手のことを考えながら言葉を選ぶだけでだいぶ違うから」
理沙さん「なーちゃん、やっぱりナッジの研究すごいね。そういえば、前回の『占い師のナッジ』の話も面白かったけど、謝罪も心理学なんて!」
奈地さん「ナッジってね、本当に日常生活で役立つことが多いのよ。謝罪もその一つだし、他にもいろいろ応用できる場面があるわ」
理沙さん「そうなんだ。ところで、なーちゃんはナッジの協会作りたいって言ってたけど、どうなったの?」
奈地さん「ああ、それね…まだ進んでないのよね。でも、理沙ちゃんみたいに興味を持ってくれる人が増えたら、いつか本当に作りたいなあ」
理沙さん「絶対にいいと思う!だってナッジって人の気持ちに寄り添ってる感じがするもん」
奈地さん「ありがとう。そう言ってもらえると勇気が出るわ。そういえばモカもよく、人の気を引くナッジみたいな仕草をするわよね」
理沙さん「たしかに!モカ、いつもお腹を見せて『撫でてー』ってアピールするもんね。犬もナッジの達人なのかな?」
奈地さん「本当にね!あ、そうだ。もし次に友達に会ったら、さっきの謝り方を試してみてくれる?」
理沙さん「うん、やってみる!でもその前に、なーちゃんのアドバイスを覚えるためにノートに書き留めておこうかな」
奈地さん「しっかりしてるわね、理沙ちゃん。それもナッジの一種よ。『覚えるために行動を起こす』ことで、記憶に定着しやすくなるの」
理沙さん「すごい!じゃあ、私もナッジの研究仲間に入れてもらえる?」
奈地さん「もちろんよ!一緒にナッジをもっと楽しく勉強していきましょう」
理沙さん「やった!今日はちょっと元気出たかも。なーちゃん、ありがとう」
奈地さん「こちらこそ、理沙ちゃんがいると私も楽しいわ。さて、モカもそろそろ一緒に遊びたがってるみたいだし、今日はたくさん笑おうね!」
理沙さん「うん、そうしよう!」