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コーヒーとワインのナッジ

今回もナッジについて。
前回のナッジはこれでした:

今回はコーヒーとワインにまつわる協会ナッジを紹介する。

コーヒー編

一般的な傾向として、人はお金のことを考えているときは倫理観が薄まりやすい。
ちょっとダメになるというか。

たとえば…。

筆者が最初に勤めた職場では、偶数月の給料日にコーヒー代が「自発的に」徴収されていた。
封筒が回ってきて、そこに千円札を1枚入れることになっていた。
その代わり、職場のコーヒーは飲み放題だった。
このような職場は多いだろう。

2社目の職場では、コーヒー代をまとめて徴収されるシステムはなかった。
その代わり、飲みたいときはその都度、毎回コーヒー代を払っていた。
このような職場も多いと思われる。

この違いに、何か意味はあるだろうか?

研究によれば、毎回コーヒー代を払う職場のほうが、不祥事が起きやすい。
文房具が私物化されたり、ハラスメントが発生する確率が上がる。

これは、

  • 前者のケースでは、従業員がコーヒー代金について意識するのが隔月に1回だけである。

  • 後者のケースでは、従業員は何度もしばしばコーヒー代金のことを考え、財布を開かなくてはならない。

つまり後者ではお金のことを考えている頻度が高く、合計時間も長い。
このような状況下では、無意識のうちに従業員の倫理意識が薄まるという。

悪に染まるといえば言い過ぎだろうけど、
「このくらい、いいだろう」
自制しなくなる。
実際、筆者の場合も、2社目の職場では無視できない不祥事を何度か目撃した。

なので、職場のコーヒーは都度都度お金を払わなくても気軽に飲めるようにしたほうがよいとされる。

隔月で回ってくる、コーヒー代の徴収封筒。
こういうのを「ナッジ」という。

「ナッジ」とは、おおざっぱにいうと、
「人間の心理を利用して行動を促すさりげない仕掛け・穏やかなテクニック」
を指す。

これを協会に活用できるだろうか。

協会を運営する際、資格講座の受講料は当然課金するとしても、月会費や年会費を取るべきかどうか、悩む人は多い。
協会総研では、月会費や年会費についてはあまり推奨していない。
むしろ資格講座の受講料を高く設定し、月会費や年会費を取らない分をカバーすることを推奨している。

理由は、会員に何度もお金のことを意識させるのは良くないからだ。
もらうべきお金は、何度もちびちび課金するのではなく、一度にもらう。

そもそも協会は会員にお金を意識させずに運営するのがセオリーだ。
だから協会の内部では経済用語を使わないようにする。
たとえば、「仕事」とは言わず「活動」と表現する。

念のため付記しておくが、お金が介在することがダメなのではない。
お金は介在してもよい。
「お金を意識させること」が良くない。
この違いは、ぜひ留意していただきたい。

ワイン編

もう1つ「ナッジ」を紹介する。

協会総研のオフィスの近くにすき焼きをワインで楽しむ店がある。
決して高くない。
その証拠に、毎日ワイガヤで賑わっている。

ただ、その店のワインリストには、80万円のワインが載っている。
ダントツに異常な価格だ。

こっそり聞いたところ、店側もこのバカ高いワインが選ばれるとは、ぜんぜん期待していなかった。
ではなぜ、そんなことをするかというと、そのおかげで2番目に高いワインに注文が入りやすくなるからだという。

これを行動経済学では
「アンカリング効果」「相対的価格評価」
と呼んでいる。

  • アンカリング効果:人々が最初に提示された情報(この場合はバカ高いワインの価格)に強く影響される傾向のこと。

  • 相対的価格評価:人々が価格を絶対的な価値ではなく、他の選択肢と比較して評価する傾向があること。

「80万円のワイン」という情報に触れたあとは、どのワインも割安に見える。

これを協会に都合よく活用できるだろうか。

考えやすいのは、資格講座を3段階(初級、中級、上級)くらいに設定し、上級講座をバカ高くする方法。
これにより初級と中級の受講料が手ごろに見える。

ただし、

  • 上級にほとんど誰も来ないだろうという「割り切り」はしておかねばならない。

  • 安っぽいものに高値をつけてはいけない。上級講座をバカ高くするからには、それに見合う分量やクオリティを上級講座に設定するのは不可欠。

  • もし万一、本当に受講者が現れた場合はきちんと開講できるよう、正しく準備をしておく必要もある。先ほどの「すき焼きをワインで楽しむ店」の例でいうと、80万円のワインをリストに載せるからには、本当にそのワインをストックしておかなければならない。





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