疲労困憊のナッジ
「疲れた」とため息をつく現代人に、そっと寄り添うナッジ。
今回は、心理学やナッジ研究を趣味に持つ広告代理店勤務の奈地さんと、大手IT企業のマーケティング部門で働く森本さんの会話を通じて、疲労困憊な人々を優しく導く方法を探ってみましょう。
仕事上の付き合いから親しくなった2人。
今日も仕事帰りのカフェで、興味深い会話が始まります。
奈地さん「あれ、森本さん。今日も遅いですね」
森本さん「あら、奈地さん…はい、今やっと終わりました」
奈地さん「元気ないみたい。この前の新規案件のプレゼン、上手くいったって聞いたのに」
森本さん「プレゼンは成功したんですけど…その後がまた…」
奈地さん「よかったら、少しお話しません?いつものカフェ、まだ空いてるはずです」
森本さん「あ、でも奈地さん、奈地さんもお疲れ気味ですよ」
奈地さん「いろいろあったので…でもカフェ行きましょうよ」
森本さん「そうですか…実は、少し相談したいこともあって」
奈地さん「なら、なおさら」
(カフェにて)
森本さん「プレゼン成功後に新しいプロジェクトをもらったんです。でも、メンバーみんな疲れてて…」
奈地さん「ああ、それ、ナッジで面白いアプローチができるかもしれません。疲労時の意思決定プロセスって、とても興味深くて…あ、また長話になりそう」
森本さん「この前の婚活の話も、人事部の施策の話も、奈地さんのナッジの視点、すごく参考になりました」
奈地さん「ありがとうございます。疲れている時って、人は『感情的な意思決定』に流れやすいんです。帰り道でつい甘いものを買ったり…」
森本さん「わかります。最近、帰宅後の冷凍食品の消費が増えてて…」
奈地さん「そこでナッジの出番なんです。冷蔵庫の中の配置を変えるだけで選択が変わるって知ってました?ヘルシーな食材を手前に置くだけで…」
森本さん「私たちの会社でも使えそう。オフィスの環境を少し変えるだけで…」
奈地さん「他にも、観葉植物を置いたり、アロマを使ったり、音環境を整えたり…それにね、このあいだね、うちの会社でも、夕方5時になると照明が自動的に暖色に変わるようにしたら、みんな早く帰るようになったんです」
森本さん「自然と『帰ろうかな』って気持ちに?」
奈地さん「そうなんです。それから、エレベーターホールの床に『お疲れ様です』って文字を置いてみたら、なんとなく階段を使う人が増えて…」
森本さん「奈地さん、それ全部試してるんですか?」
奈地さん「ええ、広告代理店って意外と実験しやすいんです。ほかにも仮眠室の入り口に『15分で元気な自分に戻れます』って表示を出したら、使用率が3倍になったんです。休憩室のソファも窓際に向けたら、SNSチェックが減って…あ、また話が止まらなくなった」
森本さん「私たちのプロジェクトでも、メンバーの疲労対策に使えそう」
奈地さん「他にも面白い例があって、夕方5時に照明が自動的に暖色に変わるようにしたら…」
森本さん「奈地さん、そろそろご自身も休憩が必要ですね」
奈地さん「え?」
森本さん「だって、それさっき言いましたよ」