Arrange #04 キスのひとつで (佐咲紗花) / Kiss no Hitotsu de (With One Kiss)
I. 前日譚: 孔明の罠?
一時期プロフに酒が好きと書いていたほど私は酒が好きだ.酒カスと呼んでも差し支えない.しかし酒は時に厄介な事態を呼び起こす火種になることがある.
簡明に言えば,酔っているときに依頼されたのをOKしてしまったのである.しかも2曲.そのうちの1つが今回のこの曲(キスのひとつで)を楽譜に起こしてくれというものである.調べてみると10年前に出た工口ゲのOPテーマらしい.素面だったら9割以上の確率で断っていただろうが,何しろ酒が入っているときである.酒が入っているせいで私には臆面なく遠回しなセクハラ(?)をしてくる友人を咎める理性がなかった.というか調べるまで知らなかった.曰く,二つ返事で了承したらしい.
引き受けたものは致し方ないと取り敢えず採譜を始めたのだが,最初のAメロを一通りメロ譜に起こした時点で気付いた.この曲は思っていたよりも手強い.
最初の8小節のコードを書くと,C → F/C → G/B → G#m7(♭5) → Am7 → F#m7(♭5) → Dm7 → G7 → … となる.そう.コードがとんでもなく変態なのである.あまりに変態なのでわざわざ今回の譜面にはコードをつけた.
一体だれが作ったのかと作曲者を調べてみると……まさかの掘江晶太である.ネット民に分かりやすい名でいうとkemuである.六兆年やネジマキ,地球最後を書いたあのkemuである.最初はにわかには信じがたかったが,調べてみると結構な曲数を提供しているらしい.仕事選ばんのかこの人は…….
しかし,いざkemuだとわかると確かに似たような曲はある.「地球最後の告白を」や,アルバム収録曲だが「何でもない朝に」が似ている.
なおいつもなら浄書や編集を同居人に押し付けお願いしているのだが,曲が曲なので流石に断られた.かなしいたけ.
II. 解説
冒頭Vivacissimo con brioは特に飾ることもなく素直に.こういうシンプルな区間は下手にいじりすぎると雑味が出る.この手のコードベタ弾きの部分で,7th以上のコードが出たときに何を落とすかというのは永遠のテーマ(?)だが,私は基本的に5thを抜くことにしている.主旋律との兼ね合いでたまに3rdや7thを抜くこともあるし,分数コードだと√すら抜くこともあるが,基本は5thである.
[A]は特に言うことなし.問題は[B]からである.この曲の変態コードぶりはサビに詰まっている.この手のコードがコロコロ変わる曲はコードを拾いに行くのが楽しいので,かなり無理をして拍の頭に和音をぶち込むことにした.特に調に含まれない音(この曲の場合E7/G#のソ#や,C7のシ♭,D#m7のレ#・ファ#など)は必ず拾った.こういう調外の音を弾く瞬間が一番楽しい.異論は認めぬ.ただそれと引き換えに左手は簡単にした.流石に左手に3rdを入れてたら事故る.
41~43小節目の6/8→3/4区間がこれまたいやらしい.L'istesso tempoなので3/4としてもいいのだが,主旋律の区切り的にもコードの区切り的にもここは6/8なので最初の2小節は6/8とした.
[C]も特になし.[D]はサビほど変態なわけではないがそれでも分数やm7(♭5)が印象的な区間で,これをすべて無視して踏みにじるような√弾きだけは避けたい.その結果がまさかの頭拍でのコードベタ弾きである.[E]のゴーストノートは左手が寂しいので入れたが,面倒であれば入れなくてもまあ何とかなる.
[G]は冒頭と同じ方針.[H]に入るときの転調が綺麗.Cm/E♭をE♭6と解釈して,これが転調先のト長調のVI♭と同じだからという理屈だろうか.同氏のドッペルゲンガーのサビ前の転調もそうだが,センスというのはこういうところに出るのだろうか.
[L]の136小節目,コードを三連符の最後の音に割り振るのどうやればいいの.教えて詳しい人.
III. あとがき……?
あとがきに書くことがないので最近上げた私の歌でも聴いて.
IV. クレジット
作曲: 堀江晶太 (@kemu8888)
編曲・浄書・動画編集・執筆: kyoka (@kyoka20011218)
見出し画像: フリー素材ぱくたそ(www.pakutaso.com)