Arrange #01 六兆年と一夜物語 (kemu ft. IA) / Six trillion years and overnight story
I. 初アレンジ
アレンジ作品はこれが初めて.ネットに投稿していないアレンジ作品もないので,正真正銘これが初アレンジである.原曲をもとにして,自分がこの曲を作ったとして,ピアノに落とし込むならばどういう風にするだろうか?という考えで作ってみた.
正直一番面倒だったのは採譜の過程だった.吹奏楽で植え付けられた精度の低いなんちゃって絶対音感とピアノの音だけを頼りに採譜したのだが,コードと主旋律を最初から最後まで採譜するのに1週間かかった.
アレンジに手を出してみたきっかけだが,アレンジ自体は特に重要ではなくて,むしろ採譜能力を通して音感をつけたいというのが本音だ.たまに頭に浮かんだ旋律を歌って録音しておくのだが,後でその音源をMIDIに起こすのがまあ面倒なのである.ならば場数を踏んで力業でやってみようじゃないか…ということで手を出したのである.
特に六兆年に何か思い入れがあるというわけではなく,プレイリストを適当にスクロールして止めたら六兆年だったからという理由で選んだ.まさかいないとは思うが,原曲を知らない人がいたら聴いてみて欲しい.
II. 大雑把な解説
冒頭のAndante lusingandoは原曲の白玉より左手の動きを多くした.それ以外はほぼ原曲通りである.唯一こだわった点は,最後のGm6/Aのところで唯一のハモりと最後の左手の音をいずれもシ♭にした点.このコードはこのシ♭の響きが特徴的なので,ここを強調したかった.
Vivacissimo energico e brillante以降はギリ弾けないこともない跳躍にしたが,それでもある程度の跳躍の練習が必要となる.本当なら裏拍の下を5度ではなく1度スタートにして,更にオク上の1度を乗せるという凶行に走りたかったのだが,流石に弾けなくなってしまうので断念した.
[A]のアウフタクトは跳躍の関係で左手にし,右手には飾りを入れた.Aメロには通しでゴーストノートを入れた.あってもいいし,なくてもいい,飾りの音である.原曲のギターのカッティングを入れようと思ったのだが,リズム的に難しくて頭がバグるので代わりにこうした.
[C],1番のBメロである.原曲では単に強拍にコードがついているだけの状態なのだが,ピアノでやるならピアノらしいアルペジオにしようとこうした.
[D]以降のサビは普通にロックの定番伴奏.特に変な変更もしていない.唯一挙げるならば,Eの4小節目のコードである.原曲だとBm A D Dなのだが,これをBm A#dim A6 G#m7-5に変更した.
[F]はほぼ原曲に忠実に.68小節目の左手と右手がズレるところのリズムが走りすぎないようにするのが地味に難しい.[G]は[B]のコピーなので言うことなし.
[H]は再度Bメロで,原曲だと1番にはなかったドラムが穴埋めをしているのだが,それを単に真似てリズムを打ってもピアノらしくないため,ここではピアノらしいアルペジオで穴埋めした.面倒なのでL.H./R.H.表記はしていないが,やりやすいように適宜両手を駆使して弾くと良い.
[L]も原曲通りにやったつもりであるが……正直ここのフレーズが早すぎて,私の中途半端な音感では正確にコピー出来ているかが怪しい.トレモロやトリルの類は最初の数音を「タメて」弾くとよりそれっぽくなる.[M]以降は特に言うことがないので割愛.
III. あとがき: ピアノ系YouTuber
おすすめのピアノ系YouTuberを訊かれたら次の3名を答えるようにしている.敬称略.
特にCateen氏は別格で,国内コンクールどころか国際コンクールで賞を取るレベルのガチな人である.
ふぃくしのん氏は技量もさることながらアレンジ力が凄まじい.ピアノ独奏はどうしても音を削らざるを得ないのだが,この人はどうやってるんだと思うような変態ぶり(誉め言葉)で,欲しいところにしっかり原曲のような欲しい音があるのである.ついでに編集技術もすごい.
Animenz氏もアレンジセンスが凄まじい.ふぃくしのん氏は原曲通りに弾く傾向にあるのに対して,Animenz氏は何を食ったらそんな音を入れようと思うんだというようなハイセンスな飾りが特徴的な独特のアレンジを施す.普通人間に出来るとは思えないような譜面でも圧倒的技術でゴリ押して出来るようにしてしまうのだから恐ろしいものである.
反対にストピ系のYouTuberは苦手.ジャズでもないのに必要以上に鍵盤をがちゃがちゃやるのがあまり好きではない.
ピアノを弾いたことのない人に良く訊かれるのがまらしぃ,Pan Piano,ゆゆうた,ハラミちゃん,よみぃ,CANACANA(敬称略)辺りの技量がどうなのかという質問.私も上手いわけではないので,高校野球にケチをつけるニートおっさんのヤジのような,実力の伴わない僻み交じりで,個人的嗜好が入った評価にはなるが,概略以下の通りである.
まらしぃ氏は跳躍や速いパッセージなどの技術は素晴らしいが表現という点では若干劣る感じがする.彼の演奏を聴いていつも思うのは,やたらアタックが強いという点だ.アタックの強い音を均等な音量・音圧で弾けるというのはそれはそれで凄い技術ではあるのだが,鑑賞するにはちょっと疲れる演奏だと思う.
Pan Piano氏は音が丁寧なのが良い点だが,アレンジの単調さと,細かいフレーズの安定感がない点が気になるところである.また,物理的な力不足が否めず,フォルティッシモ(?)の部分迫力に欠ける.女性だから仕方ない部分ではあるが.それこそ今回アレンジした六兆年の動画を見てみるとこれらの問題点が分かりやすいかと思う.Aメロに入る直前のテレレレレン テレレレレン テレレレレン テレレレレンの部分がそもそも難しいっていう問題はあるのだが…….
ゆゆうた氏はピアノ演奏を楽しむというよりピアノを使ったエンタメを楽しむタイプのコンテンツを出しているのでここに並べるのもどうかと思うのだが(数種類の国語辞典の中に漢和辞典を混入させるようなもの).技量としてはここで紹介した他の人には遠く及ばないが,彼の優れている点はその秀でた耳と豊富な和声知識による即興演奏である.単体演奏ではないのだが,この蛍の光の動画から垣間見える能力は凄まじいものである.
ハラミちゃん(ちゃんに氏をつけるの違和感あるから敬称略.申し訳ない)は良くも悪くも普通という印象.早いフレーズは滑ったり潰れるし,パーカッシブな印象を受ける.アレンジ力もそこまで高くはない.とはいえゆゆうた氏同様即興は優れており,その場で聞いた曲を弾く芸は凄いと思う.
よみぃ氏もストリート系故にアタックが強めな印象だ.(そもそもストリートピアノ自体音がキラキラしているものが多いのも原因な気はするが.) しかし早いパッセージが潰れているということはなく,即興も出来,アレンジ力も素晴らしい.良くも悪くもストリート向きな演奏だ.寸劇じみたシチュエーション設定が苦手でなければ普通に楽しめる部類だと思われる.
CANACANA氏も細かいフレーズが滑ったり潰れやすいのと,やはりアタックが強すぎるのが苦手だ.あとアレンジ力についても単調なものが多い.驚いたのがこのTOMORROWの演奏で,Low Interval Limitという原則をフル無視している.基本的に長三和音はB♭2をルートとするB♭,短三和音はC3をルートとするCmまでが限度で,それより低い場合は響きが濁って汚くなるというものである.速い曲だったり煌びやかな音色のピアノであれば多少低くても良い場合があるのだが,この演奏の場合は明らかに濁っている.アレンジの当たり外れが多い印象だ.
まあいろいろケチをつけたが結局素人の戯言に過ぎないので話半分に聞いてほしい.
IV. クレジット
作曲: kemu (@kemu8888)
編曲・執筆: kyoka (@kyoka20011218)
浄書・動画編集: Noah
見出し画像: H.Tsugai 様(「みんなのフォトギャラリー」より)
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