「意のままにならない身体」とはなにか――【用語集】『〈自己完結社会〉の成立』
「意のままにならない身体」 【いのままにならないしんたい】
〈有限の生〉の「世界観=人間観」の中心に位置づく「人間的〈生〉」の根本原理となる「意のままにならない生」のうち、「意のままにならない他者」と並んで双璧となるもの(それゆえ「意のままにならない身体」もまた、〈有限の生〉を「肯定」する〈世界了解〉の出発点となるものであると同時に、人間存在が〈思想〉を創出する契機(存在理由)となるものでもある)。
われわれが持って生まれた性質や属性、親族などによって根源的な不平等を被るのも(〈有限の生〉の第二原則=「生受の条件の原則」)、生きていく限り、臭い、汚い、きつい、痛いといった苦痛や、怪我、病、障碍、老い、衰弱といったわざわいを味わうのも(〈有限の生〉の第一原則=「生物存在の原則」)、根底にはこの「意のままにならない身体」がある。
〈自己完結社会〉の成立に伴って、「意のままにならない身体」は、科学技術の力を梃子にますます意のままになるものへと移行していくが(〈生の脱身体化〉)、それによって人々はこれまで自らの〈生〉を規定してきたさまざまな観念、価値、枠組みを喪失し、〈生〉のリアリティや生きる意味をめぐって混乱を抱えるとともに、目の前に残された「意のままにならない身体」の現実にかえって苦しめられることになる(〈生の混乱〉)。
このページでは、筆者が2021年に刊行した『〈自己完結社会〉の成立――環境哲学と現代人間学のための思想的試み(上巻/下巻)』(農林統計出版)に登場する用語(キーワード)についての概略、および他の用語との関係について説明したウェブ版の用語集のnote版です。
(現在リンク先は、すべてウェブ版を借用していますが、徐々にnote版に切り替えていく予定です。