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「〈社会〉と〈自然〉の切断」とはなにか――【用語集】『〈自己完結社会〉の成立』


「〈社会〉と〈自然〉の切断」 【しゃかいとしぜんのせつだん】

 「したがって本書では、「〈自然〉と〈人間〉の間接化」に続く第二の特異点のことを、ここで象徴的に「〈社会〉と〈自然〉の切断」と呼ぶことにしたい。そこにあるのは、〈自然〉との「整合性」を無視したまま、純粋に〈社会〉の論理のみによって恒久的に自己拡張していく〈社会〉の姿なのである。」 

上巻 121-122

 人類史を〈人間〉、〈社会〉、〈自然〉の三項関係として捉えたときに見えてくる、人間の存在様式の質的変容に関わる第二の特異点のこと。

 この特異点以前の〈社会〉が、どれほど膨張したとしても基盤となる自然生態系の制約から逃れられなかったのに対して、「国民国家」、「市場経済」、「化石燃料」という三つの要素を伴った「近代的社会様式の成立」は、一見、科学技術によって自然生態系の制約をコントロールし、「化石燃料」を掘れば掘った分だけ無制限に「人為的生態系」の〈社会〉を肥大化させることが可能であるかのように見えた。

 しかし「近代的社会様式の成立」さえも、結局は地球生態系の制約の中にある。そのことを気づかせたものこそが、今日“環境問題”と呼ばれているものである。

上柿崇英『〈自己完結社会〉の成立――環境哲学と現代人間学のための思想的試み(上巻/下巻)』(農林統計出版、2021年)

 このページでは、筆者が2021年に刊行した『〈自己完結社会〉の成立――環境哲学と現代人間学のための思想的試み(上巻/下巻)』(農林統計出版)に登場する用語(キーワード)についての概略、および他の用語との関係について説明したウェブ版の用語集のnote版です。

 (現在リンク先は、すべてウェブ版を借用していますが、徐々にnote版に切り替えていく予定です。

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