「世間や世俗、時代を超えた〈役割〉」とはなにか――【用語集】『〈自己完結社会〉の成立』
「世間や世俗、時代を超えた〈役割〉」 【せけんやせぞく、じだいをこえたやくわり】
「〈共同〉のための作法や知恵」としての〈役割〉の原理の一形態で、人々が世間や世俗、時代を超えた何ものかに対して積極的な意味を見いだし、何ものかを引き受ける場面で生じるもののこと。
「〈間柄〉を引き受けるものとしての〈役割〉」が、「共同行為」を実践する目の前の他者や、同時代に一般的な「世界観=人間観」に規定されるのに対して、「世間や世俗、時代を超えた〈役割〉」は、しばしばこうした枠組みとは対立する。
実際そうした人々は、周囲の期待や常識とは相容れない言動をするため、しばしば奇人扱いされるかもしれないが、そうした人々が、この世界で与えられたおのれだけが信ずるものを背負い、そこに「割りあてられた」何ものかに意味を見いだしながら生きているのだとするなら、その人は依然として時代と場所を超えたある種の〈共同〉を実践していると、あるいは〈存在の連なり〉のなかでは依然としてある種の時代を超えた「担い手としての生」を生きていると言うことができる。
こうした〈生〉の形は、〈存在の連なり〉の彼方において、同じように何かを背負い生きようとした何ものかの「生き方としての美」によって勇気づけられるとともに(例えば人が500年前の名もなき詩人の言葉にさえ心が揺り動かされるように)、自らの生き方や生の痕跡もまた、いつかどこかの誰かに届くだろう、それを祝福してくれる誰かがいるはずだ、といった「人間という存在に対する〈信頼〉」によって支えられる。
このページでは、筆者が2021年に刊行した『〈自己完結社会〉の成立――環境哲学と現代人間学のための思想的試み(上巻/下巻)』(農林統計出版)に登場する用語(キーワード)についての概略、および他の用語との関係について説明したウェブ版の用語集のnote版です。
(現在リンク先は、すべてウェブ版を借用していますが、徐々にnote版に切り替えていく予定です。