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京島鉢日記|3. 丸い手桶、尖るサボテン

10:00起床、室温24度、晴れている。

鉢日記を見てくれたり、気にかけたりしてくれる人がいて嬉しい。去年も「日記が楽しみです」と伝えてくれた人たちが心の支えになった。今年は植物や鉢がテーマなので、栽培テクニックやおすすめの品種など、実用的な情報も集まるようになった。発信することで情報が集まるとはよく聞くが、まさに効果てきめんだ。

今日はどんな鉢にしようかな、と考えながら家を出ると、室外機の上に置かれたサボテンと目が合った。近所の花屋、NOT FLOWERで迎えたSB(エスビー)くんだ。サボさん以外の名前をつけようとした結果、どこかのエージェントのような通り名で呼ばれている。

買ったままの姿では寂しいかなと思い、解体される空き家を見学した際にもらった手桶に潜ませていた。たまに郵便配達の目印にもなる道具だが、サイズが合っていないので調整してあげよう。


本日の鉢『サボテンと背比べ』

モデリングもだいたいコツが掴めてきた。丸い鉢はRevole、四角い部分はSweepなどのコマンドと相性が良い。30日間作り続けるのは絶対大変なのだけど、かつて学んだCADの技術を呼び起こすようにモデリングを進めていく。

手桶は流石に年季が入っていて、あらゆる角から丸みが取れている。お風呂で水を浴び、人の手や壁床で削られ、味という表現ではカバーできない汚れやカビやもあるだろう。パキパキした直線だけでなく、自由曲面やアシンメトリーも取り入れ、サボテンサイズの器に持ち手が合体した鉢が完成した。

鉢のサイズは時間をかけすぎずに作れるものにしているが、そのおかげもあってか、持ち手に追いつかんとサボテンが頑張っているようにも見える。京島の歴史に追いつけ、追い越せ、いやそれは無理だけど。背伸びして眺めてみるくらいはできるかもしれない。


EXPOは3日目、週末に比べてだいぶ落ち着いた人通りだが、会期は長いのでこういう日もあるだろう。凸工所は営業していないが、午前からずっと仕事場として使っていると、やはりふらりと友人たちもやってくる。ZINEのテスト印刷だったり、シルクスクリーンの版を作ったり。買ったはいいが試したことのなかった機械や機能は、みんなの要請によって動き出す。え、リソグラフ印刷機を購入したいって?僕もですけど…!?

そういえば、10月から凸工所の営業時間を夜8時までから夜7時までへと変更した。あまり遅い時間の利用者が多くないことと、何より京島は夜のイベントがたくさんあるからだ。ラボで一人ぼーっと過ごしているよりも、みんなのところでワイワイした方が楽しいし、そこで生まれるものもたくさんあるのだから。今日はこの後、ついに3年目を迎えた芋煮会。3Dプリンタが働く間、僕もお腹と心を満たしに行こう。

このnoteは「すみだ向島EXPO2024」内の企画、京島鉢日記 / Kyojima Pot Diary として 淺野義弘(京島共同凸工所)によって書かれているものです。

編集後記

何はともあれ芋煮である。2年前、取材で訪れたEXPOで不意に発生した芋煮会。偶然に偶然が重なり実現し、夜の交差点に人が集ったあの光景を忘れることはないだろう。詳しくは僕の本「京島の十月」記載があるので凸工所やカンカンバコヤで要チェックです。

鉢日記を書き終え3Dプリントのジョブをかけ、Big-Aの半額おにぎりとたぬき寿司の卵焼きを手にルンルンでたどり着いた電気湯横。きれいさっぱり、完飲御礼となった芋煮の名残がそこにはあった。シンプルにびっくりした後、受け入れられつつあるのかなと思いつつ、少しだけ残ったつゆと振る舞いのつけもの、裏のお婆ちゃんが差し入れてくれたナシなどで口寂しさが癒えていった。

凸工所に戻り作業を再開すると、インターネットには分館餃子パーティの情報が。満ちてはおらぬ食欲が自転車を走らせ、ワイワイ賑わう分館で餃子をたらふくいただいた。振る舞いやカンパの晩御飯を梯子する、しかも芋煮と餃子である。また一つ、夢まぼろしのような記憶が重なった。

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