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京島鉢日記|2. 普通になりゆくプランター

9:30起床、室温26度、小雨の気配。

月末に資格試験を控えているので朝晩にテキストと動画で学習を進めている。何もこの忙しい10月に重ならなくてもと思うのだが、前期を諦めて後回しにした僕が悪いので黙々とやるしかない。

少し雨が降りそうな京島の街、家からラボまで歩く間に改めて周囲に目をやると、なんと植木鉢や植栽の多いことだろう。数で言えば余裕で100を超えるであろう、形も素材もさまざまな路上園芸たち。コンクリートを突き破る雑草達にも負けぬ生命力とバリエーションで、それらが街の風景を形作ることを改めて実感した。


本日の鉢『いつかのプランター』

僕が植木鉢を作ることを知った友人から、プランターについての情報が送られてきた。当たり前に使ってきた言葉だが、ステープラーに対するホッチキス、ガーゼパッドに対するバンドエイドのように企業の製品名らしい。1955年に発売された、セロン工業の由緒正しきアイテムなのだ。

「水と空気を循環させる仕組みが、きちんと備わっています」とのことで、画像を見ると確かに水捌けの良さそうな穴や、筒を通じて循環しそうな仕組みが伺える。あいにく実物が手元にはないので、小学校以来の記憶と検索を頼りに概念としてのプランターをモデリングした。ポイントは上端部の丸みと、取り外し可能な台座部分だ。

緑は生け花体験に参加した、踏切長屋の友人からのおすそわけ

インタビューによれば、数十年にわたって使われ続けるプランターもあるようだ。街中にある鉢たちも、それぞれどこかで買われ、大切にされ、時には割れてしまったりと歴史がある。一日一個つくるラピッドな繰り返しの先で、ずっと付き合い続けるものが生み出せたらいいなと思う。


EXPO 2日目、天気もなんとなく持ち堪えた日曜日、街を歩く人の数が確実に増えている。イベントに合わせて作りたいものが増えるようで、隣人達も「これできる?」「今日やってますか?」と勢いすさまじい。のんびりモデリングを進める暇もなく、来場者案内と機材操作、世間話とおやつタイムで目まぐるしく時間が過ぎていった。

コーラムは山下なおさんに描いていただいたもの

作ったものを紹介したいし、街についても話したい。リクエストにも応えたいし、自分の制作も進めたいけれど、時間と人手が足りなかった。たまたま重なっただけかもしれないが、凸工所始まって以来の大わらわだったかもしれない。京島が、怒涛のように押し寄せてくる。

このnoteは「すみだ向島EXPO2024」内の企画、京島鉢日記 / Kyojima Pot Diary として 淺野義弘(京島共同凸工所)によって書かれているものです。

編集後記

凸工所にコーラムを描いてもらうのは今日で2回目。数ヶ月前に初めてお会いしラボの内容を伝えると、ロゴの雰囲気も汲み取って火や電気を幾何学的なモチーフを描いてくれた。今日は相談を受ける僕の姿をEXPOのテーマと照らし、しなやかな枝葉らしい模様が加わった。嬉しいやら恥ずかしいやらで幸せだ。

コーラムはEXPO期間中、街の店や展示場所などに描かれるらしい。フラッグや看板には気づかなくても、建物の入り口にある紋様は目を引くので気になる人も増えそうだ。異国から来たコーラムの文化が、京島の日常を彩る風景になるのかもしれない。

凸工所の入り口には赤い大きなスツールがあり、3Dプリントした大仏が置かれている。なんとなくで始めたが、通行人に馴染み、イラストに描いてもらい、ついにはコーラムまで添えられた。かつて身分不相応に3脚セット購入し、うち2脚は質種にした恥ずかしな思い出もあるのだが、この一脚はいよいよ手放せないものになった。

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