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京島鉢日記|19. 薬湯に溶ける身体
11:00 起床、22度、曇り。
夜遅くまでラボでの作業を見届けたり、新しい取材先に単身飛び込んだりしていつもより心身の疲労が多い。できるだけ健やかでいたいのだが、気分がささくれ立って、知り合いと元気に会えるような気分でもなくチェーンの喫茶店で個人仕事を進めていた。最低限の言葉しか交わさない、そういう日であり、つまりは疲れが溜まっていたわけだ。
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余裕がないと風呂もシャワーで済ませがちだが、こういう時こそ銭湯である。知り合いに出会う場所ではあるが、程よい距離感で、ぼーっとできるのがとてもいい。元気がないといけない場所にならないようなことが大事、とどこかの誰か(適当で申し訳ない)が言っていたが、本当にその通りだなと。毎週水曜日は薬湯の日で、「くすりゆ」なのか「やくゆ」なのかいつも迷うしハッキリさせなくてもいいやと思いながら、風呂上がりもしばらくぼんやりしていた。
今日の鉢「アヒルの見守る農園」
銭湯とアヒルの組み合わせはいつからなのだろう。詳しく知らないが、そういうものと皆が共通で認識しているのが面白い。以前僕もアヒルをペットボトルの蓋につけられるボトルキャップを試作したことがあり、そのデータを改変して鉢らしくすることにした。
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形のモチーフはケロリンの風呂桶。独特なカーブや段々形状は、量産の都合なのか、水捌けの良さや勢いの調整なども考えられているのだろうか。アヒルが見守る台と、プランターの底に敷く足場をセットにしてみたところ、こういう石鹸おきが欲しいです!と電気湯スタッフからの声。なるほど、水捌けの良さにはそういう情もあるのか。形にして人に見せることの面白さを何度も感じる1ヶ月間だ。
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このnoteは「すみだ向島EXPO2024」内の企画、京島鉢日記 / Kyojima Pot Diary として 淺野義弘(京島共同凸工所)によって書かれているものです。