大学や研究機関に属さないで研究を続けるために#1―科研費応募資格の確保―
はじめに
研究者として研究を続けていくには、研究費の確保は必須です。国は、研究費を研究者に提供する事業である科学研究費助成事業(以下、科研費)をしていますが、その科研費に応募するには、研究者個人に付与される研究者番号を持つことに加え、研究機関に所属しなければなりません。研究者が所属し、科研費の事務手続き等をしてくれる研究機関を受入研究機関といいますが、それがなければ科研費に応募する資格がないことを意味します。
大学の専任教員、企業の研究職の方などは、研究者番号が付与され受入研究機関がある状態の場合がほとんどでしょう。大学の専任教員の場合、その立場になることで研究者番号の付与と受入研究機関がある状態になるので、科研費に応募する資格が得られます。ですが、そうではない場合、研究者番号を付与され、受入研究機関がある状態にするのは、かなり大きなハードルがあります。たとえば、大学の非常勤講師や事務職員は、研究者番号が付与されている人でも、勤務先の大学に受入研究機関になってもらえない場合が非常に多いです。
大学専任教員を辞め、独立系研究者になるにあたり、最も懸念したのがこの点です。実は、大学を退職する前から受入研究機関を探していましたが、うまくみつからず、結果的に2024年春に独立系研究者になるタイミング、かつ非常にギリギリのタイミングで運よく受入研究機関を確保することができました。どのように受入研究機関を見つけ、受け入れてもらえたか、私の実体験を中心にお伝えしたいと思います。
1.科研費に応募できる資格(条件)とは
そもそも、科研費に応募できるのはどんな条件をクリアした人なのかを確認しましょう。「はじめに」でも書きましたが、以下の二つの条件を満たした人です。
先に述べたように、大学等研究機関の専任教員(任期あり、なし問わず)として就職する際、➀と➁が同時に満たされるので、就職する大学からの指示に従って手続きをすれば問題ありません。
私の場合、大学の専任教員ではない立場で➀と➁を付与してもらいました。博士課程を修了してすぐの場合はこのケースが多いと思うので、ご紹介したいと思います。
在学していた大学院では、博士課程を修了すると、有給の研究員か、無給の研究員になれる制度がありました。有給の研究員は試験があり、合格した人が採用されます。無給の方は所定の手続きをすれば、博士課程修了後すぐ(厳密には3月末に修了の場合、4月から)に与えられます。私の場合運よく有給のほうで採用され、「○○大学△△研究所□□研究員」というポスト(肩書?)が与えられました。このような制度は多くの大学院にあるかと思うので、博士課程修了時に大学等に就職しない(できない)場合は、このような制度を活用することをおススメします。
有給、無給とも任期は1年で、更新することができました。上限年数が決まっている場合が多いと思うので、その間に就職活動をして大学等の専任教員になるのがスタンダードな方法だと思います。
➀と➁が満たされる状況に1回でもなれば、研究者番号が付与された状態になります。研究者番号の扱いについては、こちらをご参照ください。
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