中途採用、新卒採用の面接官をやってて思うこと。(その1)
本日のニュースで有効求人倍率の「下げ幅」が46年ぶりに大きかった、というのがありました。このコロナ禍でなかなか売上が上がらず、採用にかけるコストや時間を割くことができなかったり、そもそも人件費を抑制しなくてはいけない、など理由は多岐に渡ると思います。企業や経営者も最悪の事態だけは避けなくてはいけないわけですから、なかなか難しいところですね。
そんな中でも、中途採用をやっているところはたくさんありますし、また新卒採用もきちんと継続して実施しているところもあります。私は、今勤めている会社で多くの中途採用の面接に関わらせて頂き、また新卒に関しても多くの学生と面接をさせて頂きました。つい最近も中途採用の面接をオンラインで行ったばかりです。
今回は、私の経験から中途採用や新卒採用について、綴っておきたいと思います。
そして、この話の流れの中で、今のアパレル業界や雑貨業界のMDやバイヤー、DBやコントローラーに求められるものとは何か、を考えていきたいと思います。
もちろんですが、今回の話も私の会社が属するアパレル業界、生活雑貨業界、ブランドビジネスを中心に行っている会社がベースにある話になります。その中で、他の業界や、今転職活動、就活に頑張っている皆さんに何かのお役に立てられれば嬉しい限りです。
中途採用する背景
中途採用を行う理由は、チームの業務拡大に伴い、1人あたりの業務量や責任、負荷の分散を狙って行うことや、退職に伴う欠損を補充するものなどが考えられます。いずれにしても、OJT等を行っている時間はなく、すぐにチームの中に溶け込んで業務に当たってもらう必要があるため、中途採用を行うわけです。
本来であれば、我々のような小売業には店舗にたくさんの、未来を担う若手社員がいます。その中で優秀な社員を本部勤務にシフトして、MD業務等について貰えば良いのですが、そう簡単にはいかない場合もあったりします。1つは、単純に店舗運営に必要な社員数が不足している、という点です。特にアパレルなど接客が伴う仕事は、今の若い人達には敬遠されがちです。また、社員だけに限らず、アルバイトやパートさんもなかなか集まりにくいのが現状です。そんな中で優秀な社員を本部へ異動させてしまうと、短期的に現場が大変になってしまいます。すぐに補充できれば良いのですが、人件費予算もあり、なかなかうまく都合がつかないのが現状です。
2つ目は、成長ステージにあるブランドのMDやバイヤーの補充の場合、仮に店舗から異動させたとしてもOJTなど時間を割いて行うことが難しいためです。人材育成の観点からもしっかりと教育、フォローを行う必要があるのですが、売上が伸びているブランドの業務拡大に向けて補充する場合、他のメンバーも業務に奔走している中、時間を割いて新人のフォローアップを行うことが難しいことがあります。決して教育フォローから逃げているわけではありません。
3つ目の理由が、経験不足からくる判断ミスを防ぐためです。MDやバイヤーは簡単なようで、経験値がものすごく大切な職種です。なぜか。それは、自分の好みでものを選ぶのではなく、ブランドのディレクションを守り、ブランドを好きでお買い物していただけるお客様が欲しいものを商品として企画しなくてはいけないからです。この判断が実はかなり難しい。最初は大体自分の好みの良し悪しでセレクトしてしまいます。これは店舗経験が長くても一緒です。企画やバイイングという曲面になると、途端に「自我」が出てきてしまいます。これを押さえ込んで、きちんとブランドのディレクションに合わせた企画に仕上げることができるかどうか、ここに経験値が必要になってくるわけです。
そして、この3つ目の理由は、中途採用をやらない理由にもなります。他社のブランドで多くの経験を積んでいたとしても、その目線や考え方を新しい会社のブランドにアジャストすることはとても難しいのです。同じ寿司職人であっても、回転寿司でキャリアを積んだ職人さんが、銀座の一等地でカウンターを構えたお店で、高単価なお寿司を提供することができるでしょうか?多分、寿司は握って提供はできるでしょう。でも、接客や所作、銀座のお客様の特徴やお料理の提供するタイミングなど最初からできるでしょうか?ちょっと変な例えかもしれませんが、そのくらいの違いがあるのが現状です。そのため、多くの企業がブランドのテイストやディレクション、お客様のニーズを店頭でしっかりと汲み取ってきた店舗の社員を本部へ吸い上げて、企画担当に仕立てるわけです。
中途採用のメリット、デメリット
上記の背景の中でも少し織り交ぜてお伝えしていますが、メリット、デメリットにもう少しフォーカスしてお伝えしたいと思います。
中途採用のメリットですが、まずあげられるのが、「新しい風が吹くこと」です。
自社で全てを賄うと、考え方や好み、志向が同じ傾向になりがちで、ある意味鮮度が出にくい環境になってしまいます。いわゆる「マンネリ」というサイクルに陥ってしまいます。このマンネリのサイクルで最悪な状況が「前年踏襲企画」というものです。前年踏襲は企画の考え方の中で、もっともリスクの高い手法です。もちろんこれで稼げる売上もありますが、大方在庫が残ってしまい、処分に大きなロスを発生させてしまいます。こうしたマンネリを打破してくれるのが、中途入社の社員です。同じMDスキルを持ちながら、目線や考え方は他の社員にはない新しい発想を持ち出してくれます。中途入社の社員本人はそんな自覚はないかもしれませんが、こちらはそうした「新しい風」が吹いてくれることを期待しているわけです。
次にデメリットですが、「前職にこだわり過ぎる」などがあげられます。これは意外に多いですね。もちろん、そういった他社のノウハウを自社に吸収することを狙っての中途採用でもあるわけですが、その本人が執拗に「前職では・・・」みたいなことを切り出してくると、なぜあなたは転職してきたのか?みたいなことになってしまいます。もちろん、そのくらいこちら側の体制や仕組みが脆弱な場合もありますが、ことさら前職自慢をされてしまうと、チームの士気もちょっと下がってしまいます。散々かき回した挙句にさっと辞めていってしまう人もいます。
このようにある意味メリットとデメリットは二律背反のところがあり、中途採用する側としては、どのリスクを取るのか、どのメリットを活かしていくのか、をきちんと考えて採用活動を進めていく必要があります。
ということで、ちょっと長くなってきたので、一旦ここで切りたいと思います。
中途採用の話が続いたので、次は新卒採用の話も少ししたいと思います。インターン研修もここ数年、何回か担当させていただいたりしましたので、そんなことも折り込んでお伝えしていきます。その他、面接官としてどう見ているか、採用・不採用の判断をどう考えているのか、なども・・・(いいのかな?こんなこと書いても・・・ま、いっか)お伝えしたいと思います。
それでは、また次回。
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