アパレルMDが発注し過ぎる理由とは?
昨今話題になっている、アパレル業界が売れない在庫を大量廃棄している社会問題について、MDがなぜ過剰に発注してしまうか、という問いかけをしました。
理由は、簡単です。
「自分で企画した洋服が、大好きだから」
え?!って思うかもしれませんよね。
でも、大概、こんな理由や根拠だったりします。
もちろん、本音でそんなことは言ったりはしませんが。
アパレル業界は「好き」で動いている。
自分で企画した商品なわけですから、そもそもが「好き」なはずです。
いやいや、仕事として公私混同するのは良くないでしょう、と。お客様のニーズやトレンドを把握して、それに見あった商品を企画していくのが担当者としての使命でしょう、と思うはずです。実際その通りですし、社内研修でもそうやって教えています。
とはいえ、やはり根本の部分、心の根っこにある部分というのは、やっぱり「洋服が好き」「ファッションが大好き」というのがあって、それがあるからこの仕事を皆さんやっていけてるんだと思います。
アパレル業界、とりわけ接客なども含めた店舗業務というのは、今のご時世、相当避けられている業種、業界だと思います。アパレルのみならず、小売業全体がそういった雰囲気に包まれているような印象があります。
それでもこの仕事に従事したい、と思うのは、やっぱり根っこに「好き」がなかったらやっていけないと思うんです。もちろん、人と触れ合うこと、お客様の何かの役に立つことにとてもやりがいを感じる方も多いですから、見方を変えればまだまだ魅力的な、可能性のある業界だと思います。
そうした業界に好きで入ってきて、その好きを突き詰めていって手に入れた商品企画担当のポジションです。もう舞い上がりますよね。同時にプレッシャーも感じていい企画ができない人も中にはいますが、大体2〜3ヶ月もやれば慣れてきてしまい、一丁前の企画担当者になっていたりします。
そんな人たちが、OJTもそこそこに企画の現場に出されて仕事を進めていくわけですから、そりゃもう発注数量の数決めなど、それなりに個人の想いとかが入ってきてしまいます。根本的な部分で言うと、これに尽きると思います。
もちろん、そうした仕事にならないように、1ランク上のMDがいてリミットをかけたり、全体の調整をしたりするわけですが、細かい部分まではなかなか手が回せないので、ある程度権限委譲ではないのですが、個々のアイテムの数量設計や任せてしまったりします。
ビジネスとしてのアパレル・ファッションを捉えることが大切
極端なことを言えば、そうした「好き」の積み重ねが、お客様のニーズなどを把握せずに、勝手に自分がいいと思ったものを世に出してしまうことで、売れない商品や在庫が増えてしまい、やがてそれらを「廃棄」せざるを得ない状況を作ってしまうのです。
中には、タチの悪い人もいて、そうやって在庫が残ってしまうのは、店舗がしっかり売らないからいけないんだ!みたいなことを平気で言ってのける奴がまだまだ残っていたりもします。そんなこと言われても、お客様に見向きもされないような、企画担当の自己満足のような商品を売れ、と言われても売れるわけないでしょう、と店舗は当たり前に思うわけです。そして、そんな積み重ねや周囲に噂で流れてしまうことで、アパレル業界がさらに敬遠されたりしてしまうわけです。
これは、この仕事を「ビジネス」として捉えてないことの表れでもあります。
「好き」という原動力で進むことはとても大事なことですが、一方で仕事やビジネスという捉え方で物事を進め、生産性や効率性、収益性など様々な指標を元に進めていくことができれば、大きなロスを削減することができ、ひいてはSDGsで掲げているような世界的な環境問題への負荷軽減にも貢献できるのでは、と思ったりします。
この業界は、慢性的に「知識不足」だったりします。
その知識、というのは、新卒研修などでもやったりするロジカルシンキングや問題解決、またはフレームワークを活用したビジネススキームの構築や改善アプローチ、もしくは新規事業を生み出すためにチームをファシリテーションするリーダーシップなど、きちんと学ぶべきことは学んでいかないといけないのに、アパレル業界はなかなかそういう機会もなく、他の業種・業界よりも遅れを取ったりしてしまいます。
そのため、様々な業種と比較しても1人あたりの人時生産性(労働分配率)が低く、昨今叫ばれている賃金上昇など、夢のまた夢・・・ということになってしまいます。
次回は、この業界の生産性について、書き記していこうと思います。
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