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藤井風アジアツアーライブレポ(ソウル)
韓国・ソウルへ
藤井風アジアツアーファイナルとなる韓国ソウル公演に行ってきました。クアラルンプールのaxiata arenaに続き、アジアツアーは2回目の参加で、ソウルの高尺スカイドームへ。マレーシアは南国でめちゃくちゃ暑かったのですが、ソウルは新潟と同じくらいの緯度にもかかわらず、北海道なみの寒さ。日中も2〜3°くらいで凍えるような寒さの中、会場に向かいました。ソウルに昼頃に到着してから公園めぐりをしていて遅くなり、ホテルのある鐘閣(Jonggak)駅から40〜50分かかるようなので、タクシーを呼ぶことにしました。フロントの方も車のがかなり早いとのこと、検索してもたしかに15分と表示される。アプリで呼んでくれるというので、なんの疑いもなくお願いしました。ところが、この選択が失敗で、この日はソウルにしては温かいらしく交通渋滞で激混み。結局1時間以上かかって現地に到着しました。
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この会場は韓国でもトップクラスのアイドルなんかが公演するくらいの場所で、約2万人を収容できるようです。1971年生まれの中年男性のタクシー運転手がそこでコンサートができるのはすごいことだといっていました。ところで、この運転手、話が大好きで、乗るなりこのポテチを食ってみろといってくるわ、お前は何人だ、何歳だ、子供はいるかとかやたら話しかけてくる。チョコがかかったポテチを日本人がくれたからお前も食べろというので、正直あまりほしくなかったのですが一枚もらうと「金払えよ、ハッハッハ」などと冗談をいってくるおじちゃんで大変でした。何度も自分が小さい頃、宮沢りえがいかにすごい存在だったかを力説し、宮沢りえがどれだけナイスバディかを主張しておりました。さらに長渕剛の歌を車内で熱唱し、80年代から90年代のアツかった時代の話で盛り上がりました。というか、その時代で完全にストップしているようなので、風の素晴らしさを伝導しておきました。いまの日本では(少なくとも東京では)なかなか味わえない強烈なキャラクターで楽しかったです。
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2024年12月15日(日)のソウル公演は19時開始、会場には18時過ぎくらいに着きました。スマートフォンなどのQRコードではなく、予約したメールを見せ、チケットを交換するという初めてのパターンで、かなり面倒くさいシステムだなと思いつつ、並んでチケットに交換し、会場に向かいました。その通路の途中に、こんな張り紙があり、皆んな写真を撮っていました。
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Instagramのストーリーズで韓国語わからないと投稿したら、すぐに韓国後ができるゼミ生が翻訳して送ってくれました。この元ネタはインターネット上でかつて注目されたネットミーム、「ディス・マン」(This Man)と思われます。2006年にニューヨークの精神科医が、奇妙な男の夢に悩まされているという女性の証言をもとに男のモンタージュ写真を作成、すると、次々にこの男を夢で見たことがあるという患者が現れる。さらに「EVER DREAM THIS MAN?」(この男を夢で見たことがある?)という言葉と一緒にネットに男の画像をあげると、世界中で約2000人以上の人々が、この男を夢で見たことがあると主張するという都市伝説のような話。このネタをもとにさまざまな映画が作られています。関心がある人はこちらをご覧ください。このビラのオマージュですね。
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入口にも巨大な看板があり、いよいよファイナルか、と高まってきます。マレーシアの時はもっと日本語が聞こえてきたのですが、今回は韓国語もかなり聞こえてきました。もちろん、日本からの参加者も多かったと思いますが、韓国にもこれほどのファンがいると思うと嬉しくなります。
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入って座席を確認。韓国公演は発売開始と同時に何度もアクセスし、すぐにいい席は取れなくなったので、今回はおそらく今までで一番遠かったのではないかと思います。日本でもマレーシアでも肉眼で見えるくらいの距離だったのがいかにありがたいことかと思いました。とはいえ、2階スタンドの一番前の席で全体が見渡せるので、個人的にはとてもよかったです。106の一番前の席でした。
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始まる前に韓国語と英語と日本語で、ライブ中は絶対に撮影するなとアナウンスが繰り返し流れたのですが、始まると普通に皆んな撮っていました。日本の会場では、この曲は撮っていいよという撮影タイムがあり、基本的に皆んなルールを守っていましたが、海外では通用しないようで、スタッフも何もいっていませんでした。19時を少しまわったところで、いよいよライブ開始!
*以下、セトリなどネタバレあり
ライブ開始(レポ)
①『優しさ』
口紅を塗りたくるいつもの映像が流れ、メンバーと風が登場、会場いっきに盛り上がる。アカペラで始まるが、めちゃくちゃスローに感じる。ためもいつも以上。皆んな座ったまま聴き入っている。《今何を見ていた あなたの夢を見た 優しさに殺られた あの人の木陰で》会場の外に貼ってあった「This Man」のパロディには、今回のツアーのトップを飾る『優しさ』の歌詞が重ねられていたのだろう。そう考えると今回のアジアツアーの一つのテーマは「優しさ」だったのかもしれない。歌い方も囁くように温もりを感じられる優しい歌唱だった。包み込む風の歌声に震える。今日は赤色のフードつきの衣装、フードで顔は隠れたまま演奏する。ツアーファイナルだが疲れもあまり見せず、声ものびていて、心地よい空気が広い会場に充満する。
②『何なんw』
イントロが始まるとパッとフードをとってファン熱狂。巨大スクリーンに映し出される赤い服の風が素敵。イントロで「立ちたかったら立ってね」といって会場のファン立ち上がって手拍子。クアラルンプールではこの次の『もうええわ』でよかったら立ってといっていたが、この日は『なんなんw』の冒頭でいっていた。風、めちゃくちゃ笑顔で幸せそうに歌ってる。終わりのつなぎがやはりかっこいい。
③『もうええわ』
今回のツアーでは通常のゆっくりとしたアレンジではなく、ハネたビートでテンポも速くなっていてライブ映えする曲になっている。TAIKINGの演奏と風のピアノの絡みが最高にかっこいい。曲間でアドリブっぽい演奏になり、TAIKINGのソロもやはりキマっていていい。風がノリノリで踊り出し、フェイクの自由度も高く気持ちよさそうに歌っていた。
④『キリがないから』
これもかなりハネたリズムになっていて原型とかなり違う。が、こっちのアレンジのほうが僕は好み。最後に「ソウル〜アンニョンハセヨ〜」といって会場盛り上がる。
⑤『へでもねーよ』
激しいロックアレンジ。真っ赤なライティングの演出もあっていた。フードをかぶり直して踊りながら歌うクールな風。歌唱も熱が入っている。だが、終盤、服の襟あたりを謎にパタパタやりつつ歌って会場ドッと笑いだす。最後に服を脱ぐ。あまりにもセクシーなので「きゃー」という声があがる。
映像と演奏の時間(風が口紅をぬぐう)。風の衣装チェンジの時間でもあり、しっとりナンバーで風の映像が続く。塗りたくった口紅を拭く。
⑥『grace』
衣装を変えて登場する風、カラフルなかわいい衣装。こんなかわいい衣装が似合う人ってあまりいないと思う。「You are the grace!」と呼びかけ観客沸く。あの例の踊りをいつになく激しく踊る風。全体的にいつも以上に優しい歌い方だったと感じる。そのまま次の曲。
⑦『青春病』
原曲よりもギターの音大きめ、TAIKINGのカッティングがこの曲のグルーブを支えている。途中で歌うのをやめ、スマホを取り出して会場を撮影。終盤、手を横に大きく振る観客。音楽にのせて英語で「悪にさよならして云々」とかそういう言葉を放ったと記憶(うろ覚え)。
MCの時間(韓国語と英語)
「ポポチュセヨ」(キスして♡)とこれ以上ないくらいのかわいさでいう。そしてほっぺに人差し指で触れる。ファン絶叫。
「カムスハムニダ」(ありがとう)
「ヨロブン、フジイカゼ、イムニダ」(皆さん、藤井風です)
キャーという叫び声が飛び交う。
(突然英語で会場を指差しながら)「I see you. I can see you wherever you are. Because I put in my contact lenses today.」(見えてるよ。あなたがどこにいても、見えるよ。なぜかって今日はコンタクトレンズ入れてるからね)
会場、爆笑。
(英語は省略)「皆んな元気?2階席の皆んな、最上階の皆んな、アリーナの皆んな、元気?」といった声をかけるや、突然「キヨウォ!」(かわいい)といって会場を沸かせる。日本語でもよくいってるやつね。
「Let me ask you a question. Are you feeling good?」(質問させて。気分はいい?)といって次の曲へ。
⑧『Feelin' Go(o)d』
やはりこの曲、簡単に聞こえるようで難しく、音程がやや取りにくいらしい。前もそうだったが、少しぶれていた。でも、この広い会場でこれだけ歌えるのはすごい。サビあたりでダンサーたち登場。虹色のカラフルな映像と衣装、幸福な舞台。最後キメる。
⑨『花』
イントロが始まったらやはり韓国でも大歓声。出だし、脱力して歌いすぎてややピッチがあわなかったように感じた。カラフルなステージ。終わったら両手を頬にあてて花を作る。「かわいいー!!」と会場から掛け声。ずっと花のポーズしてる風。英語で「このポーズできる?」と聞くと風民ら、やる。すると「イェッポヨ!」(かわいい)と風。「We are cute. We are all cute. We are naturally cute. Don't be embarrassed to be cute. We look like garden」(わしたち皆んなかわいいわ。生まれつきかわいいんじゃ。かわいいんを恥ずかしがらんで。わしたち庭みたいじゃなあ)。岡山弁風に日本語にしてみたけど、広島弁と岡山弁の区別もあまりつかないので、勘弁してください(笑)クアラルンプールのときは、「You are cute. You look like garden」だったけど、「We」になった。風も含まれた。
⑩ 『ガーデン』
「ん〜ん〜ん〜」とみんなに歌ってもらう。ステージを左右に歩きながら歌い上げる。声が伸びていて心地よく響いた。後半に入って、これまで渋めに弾いてたYaffleさんが激しく体を動かしていてめちゃくちゃノリノリだった。
4人のダンサーが踊るかっこいい時間。続いて背後に家が映し出され、黒いハットをかぶってジャケットをはおり、サックスを吹きながら登場する風。感情豊かに吹く。なんて才能豊かなのか、風。
⑪『Workin' Hard』
めちゃくちゃセクシーに歌う。スクリーンに映し出される風に釘付け。さっきまでのカラフルかわいい風から一転、黒のイメージをまとい、めちゃくちゃクールでセクシーな風を堪能する風民。皆んなじっと見つめていた。最後はお馴染み、帽子を投げるパフォーマンス。
⑫『燃えよ』
この曲、ライブでやるとかなり違うサウンドに聞こえる。飛び跳ねながらノリノリで歌う風。曲間で激しいダンスを披露し、終盤に向けてアゲアゲ。終盤ショルダーキーボードを奏で、更に盛り上がる。
⑬『きらり』
ここのつなぎもかっこいい。Aメロ、ピアノに頬杖ついて歌う風。サビに向かうにつれ、前に歩いてくる。サビではスクリーンに流星のような映像が流れ、疾走感が高まる。会場もとても盛り上がっていった。
⑭『damn』
イントロでダンスしながらジャケットを脱いで観客の歓声があがる。かなり長いイントロ、歌に入る前にTAIKINGのキレのあるカッティングがサウンドをグルーヴィにする。このアレンジのほうがCDよりいいんじゃないかとも思う。あとちょいちょい映像が接触わるいのが気になる。あれ、演出?真っ白なシャツで歌う風が神々しく輝いている。これ以上ないセクシーさを放ったと思いきや、最後の瞬間で、ものすごい変顔キメる。
⑮『旅路』
これもCDとかなりアレンジが違って、ドラム、ヴォーカル、ギターがかなりハネて、16ビート感が前に出ている。結構テンポも早く心地いい感じの曲になっていた。間奏でメンバー紹介。これはマレーシアと同じなので省略。
⑯『満ちてゆく』
ピアノ独奏、素敵な音が鳴り響き、風が言葉を囁く。一瞬、間があってピアノのイントロが始まる。このピアノのメロディ、本当に素敵。一気に会場の雰囲気を変え、心を掴む。皆んながスマホのライトを照らして揺らす。この景色、やはり壮観、鳥肌。これまで積み上げてきたものをすべて表現するかのようなフェイクが凄まじかった。ここからのピアノ独奏がやばい。心を突き刺すような表現力。なぜ彼の奏でる音色はこれほど心の奥の方まで届くのだろうか。
⑰『死ぬのがいいわ』
ピアノ独奏からの『死ぬのがいいわ』への流れがにくい。ちょっとドラムが大きすぎてバランスが悪い感じがしたが、狙っているのだろうか。赤色の演出でステージの雰囲気がガラリと変わる。最後は当然、倒れる。ちょっと勢いよく倒れすぎて、マイクがすごい音を立てて飛ぶ(笑)軽快な音楽が鳴り、次第に『まつり』のイントロになっていく。
⑱『まつり』
イントロで韓国の伝統的な民族音楽が組み込まれ、『まつり』へ。『満ちてゆく』から『死ぬのがいいわ』を経由して、『まつり』でブチあげる流れ、静から動へともっていく完璧な構成ではないか。祝祭のモードで会場は最高潮。そのまま終演。今回もサクッと1時間半で終わったが、メンバーが退場し、風も挨拶しながら行こうとすると、即座にアンコールの大合唱。会場を右から左へと走って挨拶、最後にステージ前におどけた走り方で出てきて挨拶。投げキッスの連続。去ろうとするがアンコールの大合唱が大きく響き渡り、なかなか去れない。ちょっと困り顔を見せ、ピアノに座って弾き始める。
さよならがあんたに捧ぐ愛の言葉
わしかてずっと一緒におりたかったわ
別れはみんないつか通る道じゃんか
だから涙は見せずに さよならべいべ
サビを歌って「さよならべいべ〜」とアカペラで熱唱。他はジャカルタとマニラだけらしいが、オーディエンスの情熱に圧倒された感じで、応答した風であった。そして最後に、英語で語る。
「これが最後のショーです。わしはよりよい自分に毎日なろうとしてきました。ぜひ一緒にやってみましょう。わしたちはいつか最高の自分になれる。そこでまた会いましょう。このアジアツアーに来てくれて、ありがとう。カムスハムニダ!」
再び、投げキッスをしながら去っていく風。今回は肉眼で見えなかったのでスクリーンを眺めていたのだが、全体的に風、白目剥きすぎだった気がする(笑)それにしても、ツアーファイナル、圧倒的なパフォーマンスで、さすがワールドクラスのスーパースター、でかい会場が似合うなあと思った。
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行きはタクシーで帰りは電車を選択したのだが、逆の方がよかった。クイル駅に辿り着くまでにかなりの時間がかかり、さらに電車に乗るのも人数制限があり、とても大変だった。
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ホテルのある駅に着いたのは10時をこえていて、周辺に美味しそうなレストランがたくさんあったのだが、ほとんど閉まっている。仕方なく営業中の大衆食堂・大衆居酒屋に入ってプルコギを食べた。安くてわりとうまかった。帰りにコンビニでお酒とつまみを買って夜はホテルで映画。日中歩き回って疲れていたので途中でいつの間にか寝ていた。
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小学生の頃、一度韓国に行ったことがある。だから今回はおよそ30年ぶりに訪れたことになる。当時はまだ今ほど栄えてなくて、文化的交流もほとんどなかったから、日本と韓国の問題はいまより複雑だった。たまたま独立記念日にソウルのレストランで楽しくご飯を食べていると、韓国人男性からすごい剣幕で罵倒され、「ファック、ジャパン!」といわれたのがショックで、いまでも脳裏に焼き付いている。子供にはわかりえない歴史的な問題が日本と韓国の関係には横たわっていることだけは痛感した。
あれから30年経ち、タクシー運転手が宮沢りえ、長渕剛が好きなんだとアツく語ってくれ、SMAPの草彅剛が韓国ではとても人気があるんだぞと教えてくれた。僕は、娘がK-POPの影響でダンスにのめり込んで韓国が大好きなことや、TWICEが憧れのアイドルでファンクラブに入っていること、毎回ライブに娘と行ってることなどを伝えた。彼はTWICEはもう韓国ではあまり人気がなくて、いまはNewJeansやIVEが人気だといった。僕はNewJeansもすごい人気だけど、TWICEもいまだに日本では熱狂的な人気でチケットがなかなか取れないと教えた。彼は何度も宮沢りえがナイスバディだと繰り返した。僕は藤井風のファンで韓国までライブを観に来たんだと伝えた。よくそこまでするなと笑われた。30年ぶりの韓国、少し怖かったけれど、藤井風とおかしなタクシー運転手のおかげで、2度目の韓国では、とても優しい気持ちになれた。