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異端の奇才 ビアズリー展

三菱一号館美術館で開催中の「異端の奇才 ビアズリー展」を鑑賞。
ビアズリーの初期から晩年までの作品が多く並び、画家の美意識の変遷を深く楽しめました。

両親の影響

ビアズリーの父親は宝石職人の息子でしたが、まともに働かない上に散財し、代わりに母親が富裕層にピアノやフランス語を教え、家計を支えていたそうです。
この両親のバランスが、ビアズリーの芸術性にも影響を与えていたのでしょう。
エレガンスの中に潜む破滅性。
文学的な繊細さと職人気質のこだわりの強さ。
こうした振り幅も、ビアズリー芸術のひとつの魅力に感じます。

画家の息遣い

会場では彼の有名な絵の原画や素描も多く見られました。
ビアズリーの作品はイラストレーションである以上、書物や広告の上での表現がその美しさの完成形ですが、原画ならではの筆致の味わいも楽しめました。
ちょっとした揺れや、こだわりを感じさせる線の強弱。
そこでは、画家ビアズリーの息遣いがそっと聞こえてきます。

線から点へ

ビアズリーといえば、白黒の妖しい世界に執拗的に描かれるエロティックな曲線。
『サロメ』に代表される独特の耽美に私も長く魅了されてきましたが、彼の画風をたどると、晩年の点描を駆使して描かれた作品に今回強く惹かれました。
余白を残しながらも対象物は徹底的に描き込み、洗練された甘美がそこに生まれています。
それはビアズリー風のロココスタイルとでも呼べる典雅な世界。
病による死をどこかで感じながらも、作品の中ではケラケラと笑いながら美を遊び、自分だけの芸術を追い求めてたどり着いた画家の境地にも思えます。



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