見出し画像

マリー・ローランサン 淡い幻想

マリー・ローランサン《キス》1927年


少女の頃の淡い記憶。子供時代に夢見た世界。
マリー・ローランサンの描く作品にはそのような優しい幻想を感じる。

ローランサンは特に日本で人気が高い。
穏やかな表情の人物たち。
柔らかなパステル調。だが少し影もある。
季節の移ろいを表すような儚い色彩は、華やかさと憂いを私たちの心にもたらす。


子供たちを描いた水彩画で有名ないわさきちひろはローランサンに強く影響を受けた画家のひとりである。
その淡く優しい作品はローランサンの世界と深く通じるものがある。
彼女の作品を観るときも穏やかで純粋な子供の心に近づける。
私はそのほのかな幻想に特別な美しさを感じる。


私生児として生まれたマリー・ローランサンは画家を志し、ジョルジュ・ブラックやピカソらに影響を受けながらも、女性画家として独自の作風を目指した。
離婚や戦争など人生の困難を乗り越え、やがて芸術家として認められるようになると、パリの上流婦人の間ではローランサンに肖像画を注文することが流行となった。

芸術家として、女性としての彼女の強い意志は作品にも表れている。
ただ優しく優雅なだけでなく、強い生命力や秘めた情熱もその奥に存在している。
私たちの心を動かすのはそのような作品の深さにもある。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?