Tr.1「サテライト」曲のこと - e.p.「サテライト」セルフライナーノーツ (2)
明るいけど悲しい曲
きっかけの話が長くなったので曲の話に。
サテライトは前から自分のツイキャスで弾き語りしていて、その時もテンポを落としたアレンジにしていました。前から思っていたのですが、オリジナルのサテライトはかなりテンション高いアゲ曲にもかかわらず、その芯のところではどこか悲しさをたたえた曲だと感じていました。そしてその悲しさを表に出したカバーにしたいな、と。
公開した音源も、静かに深夜ひとりで都市の灯りのなかに浮かぶ少女のイメージで作りました。演奏も、つたない部分はそのままにして、スタジオライブをそのまま録音したような感じにして。
余談ですが、「悲しい歌を明るい曲にのせる」という言葉は自分の中で昔からずっと意識のすみにあって、元はたしかピチカート・ファイヴの小西康陽氏がどこかで書いていたのですが(でも見つけられない)、悲しさの向こう側の明るさのようなものが好きなんですよね。
CYONさんボーカルのこと
CYONさんの声がよいのはインスタライブですでに知っていて、歌声も一度だけ聴いてはいたのですが、ちゃんと一曲歌ってもらうのははじめてのことでした、、、でも期待以上にすばらしいボーカルでした。
ちょうどこのとき新しいDAWソフト(Studio one)を使いだしたので音程の調整なども試してみようかと思っていたのですが、結局今回「サテライト」も「1998-」も、音程についてはまったく手を入れませんでした。受け取ったボーカルそのままで聴いていても心地よく、安定感があって。
しかも音程だけでなく、微妙な音の装飾とか、ブレスの使い方とか、ボーカルのキャラクターとしてもものすごくよくて。サビ前の「僕はだれだ~」の伸びもすばらしいです。
編集的な部分でしいて言うと、歌だけ別録りで送っていただいたので、伴奏との微妙な前後のタイミング調整だけむつかしかったです。そこはDAW上で微妙に前後にずらしながら調整して、とくに「サテライト」はスローテンポかつスタジオライブのようなリアルな演奏感が欲しかったので、あえて少し歌をもたれ(=正確な拍子より少し遅れ)させたり。
一方で、今回の曲作りで遠隔でのボーカル入れも問題なくできるな、と実感できました。録音状況も自分のようなローファイな作りであればまったく問題ないレベルでしたし、DAW側もいろんな機能がそろっていて切り貼りしたり編集は十分できるし。
コロナ禍でも、あるいは遠方の方とのコラボレーションでも十分いけそう。
ジャケットデザイン
CYONさんには歌とあわせて曲のアートワークもお願いしました。
はじめからCDジャケットにするつもりで依頼しましたが、具体的なことはあまりお伝えせず、やり取りしていた際に「一日一絵のようなドローイング」「アナザーno.1のときのような」といった会話が出た程度で。
CDといっても自主製作だし、ラフなドローイングでよいかなと思っていたら、、、いろいろな色彩がちりばめられたすばらしい作品が送られてきて。
受け取った画像を見て本気で驚きました。
ちょうどこのときCYONさんが挑戦していた、コピックのインクを散らす技法を使われたそうなのですが、これがまるで夜の街を流れるサーチライトのようで、「サテライト」の曲にぴったり。。。
それと対比するように輪郭のみで描かれた少女の後ろ姿が、この曲を歌う歌詞の中の少女に重なってとても印象的でした。
アレンジ
正直、アレンジでなにか偉そうに言える部分はないのですが。。。
この曲のキモというか、「発見」みたいなのはほぼBパートの
DM7 → Em7(2弦開放)
DM7 → Em7(2弦3フレット)
のところくらいで。
オリジナルだと印象的なギターのフレーズが入るところをこのコード感に替えられたことで、弾き語り風のアレンジができたようなものでした。
(Aパートのアルペジオもこの派生ですし)
じつはCYONさんのピアノも参考にさせていただきました。。。
とくにAパートのコードやアレンジをどうしようか悩んでいたので。(そのままコードだけ弾くと延々DM7だけ弾くことになる)
やっぱり他のひとがどういうコードにしているか見ると参考になりますね。
(つづく)