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Q & A

 今回はコメントでのご質問にお答えし解説します。

Q:
「空気穴無しで生きられるものなんですか? 我が家の幼虫は、1頭フタには穴を開けたのですが、フタの下の緩衝材? を取り忘れてマットの上に上がって☆になってしまいました………これは酸欠ではないのでしょうか?」

A:

 先ず、大前提として、オオクワガタの幼虫は好気生物なので空気呼吸します。従って、無酸素状態では生命維持は不可能です。
 がしかし、その要求量は我々、人の肺呼吸のそれとは大きく異なり、非常に僅かな空気の導通があれば問題ありません。例としては、地面深くに潜って生育する種であるミヤマクワガタの幼虫などは地中約4m深くのところで採集できるのだそうです。同様にセミの幼虫もまた地中深くで数年間育ちます。そのような環境では我々、人は到底窒息死してしまいますが、彼ら幼虫にとっては何ら問題ありません。
 多くのインセクト業界専門家やブリーダー諸氏は根本的に上記の認識が薄弱なのと低脳な思考によって飼育幼虫個体に何か問題があれば「酸欠」と宣いますが、原因は全く別のところにあります。
 飼育容器についてですが、菌糸瓶に多く使用されている蓋つきボトル容器にはフィルター付き空気穴が空けられていますが、これらの容器で「酸欠」になるなどということはあり得ません。空気の導通量が必要にして十分だからです。想像してみてください。地中約4mとどれほどの差があるだろうかと。地中の方が更に厳しい環境であろうことは言うまでもないでしょう。
 また、わたしは現在、市販の蓋つきP.E.T.ボトル容器を空気穴を開けずに使用していますが、これでさえまったく問題ありません。それは何故かと言いますと、そもそも、これらの容器の蓋と容器とのねじ切り勘合部の密着度が相当に低いからです。つまり、これらは完全密封容器ではないのです。これらの非完全、或いは、半密封容器の場合、前述の密着度の甘い勘合部から僅かながら一定量の空気の導通が確保されています。わたしはそれを逆手に取って使用しているわけです。
 その証拠に、幼虫は菌糸培地食餌し続けることで培地は減量してゆきますが、それによって生じた容積分はもしも完全密封容器ならば空気が減少する筈ですよね。その表れとして、薄いP.E.T.素材でできている容器はその容積分萎む筈なのです——布団圧縮袋の中の空気を掃除機で吸い出しているところを想像してください——しかし、例え幼虫が培地をすべて食べきってしまったとしても、容器は萎縮すること無く、外観はそのままで中に何も無い空間が在るだけです。さて、その分の空気は一体どこから入ってきたのでしょうね?
 以上、正直に申しまして、本来ならば説明無用の小学校低学年の理科実験レベルの話なのですが、人というのは洗脳や思い込みによって思考停止してしまうと、普通ならばちょっと考えてみれば誤りが解る程度の単純なことでもそのまま受け入れてしまうのですよ。
 ということで、わたしは「酸欠ヒステリー」と大いに揶揄しているわけです。

 さて、ご質問の具体例では、
1. 幼虫が上面に出てきて蓋を齧り開けた
2. 蓋の下の緩衝材? を取り忘れてマットの上に上がって☆になってしまった

——とのことでした。
 先ず、元々、空気穴のある蓋付き容器で飼育されていたと仮定しますが、それでも幼虫は上面まで出てきていたわけですよね。わたしのように空気穴無しで飼育しているにならばともかく、つまり、そもそも酸欠ではないわけです。そして、マット飼育であったようです。「緩衝材?」についてはちょっとよくわからないので、ここではスルーとしますが、上記のような条件を考察しますと、培地のC/N比の問題ではないかとわたしは思います。オオクワガタはC/N比に敏感で、培地のC/N比バランスが崩れると明らかに嫌がって培地から出てきて、幾ら人為的に潜らせてもまた出てきます。これは培地が窒素過多に偏ってしまったものと考察します。要するに、培地の分解が進行し過ぎて餌の原資となる炭素量が減少してしまった状態です。こうなると、拒食症になり、直ぐには死にませんが次第に弱ってゆき死んでしまいます。
 この場合の対策は、高C/N比培地に移すと何もなかったかのように培地に潜って食餌を再開します。その後、消化器官の内容物を観察し、以前の内容物と入れ替わったと見られれば、もう大丈夫です。
 このように、状態として培地の上面に出てきてしまっていると、一見すると、「酸欠だ!」と早合点してしまうのだと想像するのですが、それは、先に申しましたように低脳な皆様方によりますところの「酸欠ヒステリー」言説によるバイアスが掛かってのことだと思われます。害悪ですので、お祓いが必要です(笑)。

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